異世界でひっそりと暮らしたいのに次々と巻き込まれるのですが?

WING

文字の大きさ
32 / 65
第1章

第31話:出発と思いきや

しおりを挟む
 宿に戻って考える。

 「王都を出ても何処に行くのじゃ?」
 「私はどこでもいいよ!」

 んー。どこでも良いと言われても困るのだ。だがどうしたものか。

 部屋の外からドンドンドンと階段を上がる音がして扉が開かれるとメリルが現れる。

 「秋人入るよ!」
 「それは入る前に言えよな」
 「そんな事はいいわよ!」

 おいおい。宿の従業員がそんな事言ってはいけません。

 だが、

 「どうした?」

 メリルは少しモジモジしながらも来た理由を喋る。

 来た理由、それは、

 「やったわ!私の勝ち!」
 「来た理由ってトランプかよ……」

 俺は項垂れるも、ゼノアとフィアは楽しそうなので何よりと俺は苦笑いをする。

 「それで……もう出て行くの?」

 メリルは寂しげな表情をして不安げにこちらを見上げる。

 そうか。それを聞きに来たのか。短い間だったけど結構お世話になったからな。

 「んー。目的のない旅でも仲間がいれば楽しいからな」
 「……私もっ───」
 「行くとはいいなよ?メリルが俺達と一緒に行ったら宿はどうする?リズベルさんは?」
 「………」

 メリルは何とも言えない表情となる。それでも何かを言おうと口を開くが、それよりも早くに俺が喋る。

 「また来るから」
 「っ………」

 メリルは目に涙を貯め、

 「ほんとに、ほんとにまた、また来てくれるの?」
 「もちろんだ。王都に来た際は寄らせて貰うよ」

 俺はそう言って微笑みメリルの頭を撫で目に溜まった涙を指ですくい取る様に拭き取る。そしてメリルは小さく「うん」と言って微笑む。

 気づけばもう夜となっていた。

 出発の準備明日で出発が明後日になりそうだ。

 体の汗を湿らせたタオル拭いた俺達は、そろそろ寝ようと布団に入ろうとしたその時、外から爆発音が複数聞こえた。近くでも爆発したようだ。

 急いでマップを確認してみると、

 「魔族、か?」

 ゼノアが説明をしてくれる。

 「詳しくは話した事はなかったのじゃ」

 それからゼノアから軽く魔族の説明を受ける。

 魔族。それは、人間よりも身体能力は高く獣人よりも高いと言われている。魔族1人を倒すのに冒険者ランクAが3人以上と言われている。

 ならば一般人ではまともに相手にする事は不可能だ。

 「それ程に強いのか……」

 そんなと事を呟いていると階段を上がってくるのが聞こえる。メリルだ。

 「秋人さん、大丈夫ですか!?」
 「ああ。大丈夫だ」

 メリルは不安な表情になり、若干だご怖がって居るようだ。

 「何が、何が起こったの……」
 「魔族だ。魔族が王都で暴れてる」
 「魔族!?なんで魔族が王都なんかに?!」

 そう言えば街の人が何やら気になる事を言っていたのを思い出す。

 たしか、魔族を滅ぼしかねないマジックアイテムがあるとか言っていた気が…。

 俺は取り敢えず一般人を守るために外に出て行こうとする。

 「って、何処に行くきなの!?」

 メリルは俺が窓を開けて外に出て行こうとすると驚いたのか、聞いてくる。

 行く理由は1つ。

 「今にも襲われている人が居るはずだ。助けに行くのは当たり前だろ?」
 「Fランク冒険者で魔族の相手が出来るわけないじゃん!死んじゃうよ?!」

 Fランクだからそう思われてもしかないよな。

 「俺の実力は確かだ。魔族だって十分に相手できる。それに…」

 少し間を開けてから喋る。

 「終焉の森に住んでた俺をあまり舐めるなよ?」
 「終焉の、森?え、何言って……」

 俺が窓から出て行こうとすると、向かいの建物の上に魔族が現れた。

 「ひぃ、ま、魔族!」

 そして、闇魔法を放ってくる。上級の魔法だ。

 俺は窓からその魔法へと突っ込み、

 「話してる所を邪魔するんじゃねぇ!親に教わらなかったのか?!」

 光魔法を込めた拳でその魔法を殴る。

 すると、魔法は消えた。

 「…え?は?」

 魔族の男は自らの魔法が消滅した事に対して困惑しているがお構い無し。

 空中に魔法で足場を作りそれを踏み台に魔族の男へと接近し、

 「早く空にお帰り!」

 顔面を殴り飛ばした。勿論殴り飛ばした魔族の男は無事死亡。

 メリルは呆然と立ち尽くす。そこに俺は飛んで部屋へと戻る。

 「いや、ご主人よ。あれはほんとの意味で空に帰ってるのじゃ」
 「凄いよ!」
 「ありがとなフィア」

 「え?魔族が、一撃……どういう、ことなの?」

 メリルは魔族が一撃で死んだ事に困惑を隠せずにいる。

 「え?魔族って光属性の魔法に弱いんじゃないのか?」
 「そうだけど。いや、だからなんでFランクの秋人が魔族を一撃で倒せるの?!」
 「おいおい。さっき言っただろ?俺は強いって。終焉の森の頂点に立っただけの実力はあるんだよ」
 「だって終焉の森って……あそこは入ったら生きて帰ることは無いって……」

 終焉の森。世界では死の森とも言われている。一度入った者は勇者だろうと英雄だろうと生きて帰って来ることは無いと言われている。

 「ははは。まあ何度も死にかけたさ。死にものぐるいで生きた。ただそれだけなんだよ」
 「……分かった。信じるよ。それで、行くの?」
 「ああ」
 「分かった。気をつけてね」

 メリルは不安気な表情のまま見送る。そんな彼女の頭を俺は撫でてからゼノアと共に向かうことにする。

 フィアはまだ魔族と戦えるほど強くは無いので宿でお留守番なのであった。

 行きたそうにしていたが、
しおりを挟む
感想 148

あなたにおすすめの小説

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

転生したら王族だった

みみっく
ファンタジー
異世界に転生した若い男の子レイニーは、王族として生まれ変わり、強力なスキルや魔法を持つ。彼の最大の願望は、人間界で種族を問わずに平和に暮らすこと。前世では得られなかった魔法やスキル、さらに不思議な力が宿るアイテムに強い興味を抱き大喜びの日々を送っていた。 レイニーは異種族の友人たちと出会い、共に育つことで異種族との絆を深めていく。しかし……

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

インターネットで異世界無双!?

kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。  その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。  これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。

【死に役転生】悪役貴族の冤罪処刑エンドは嫌なので、ストーリーが始まる前に鍛えまくったら、やりすぎたようです。

いな@
ファンタジー
【第一章完結】映画の撮影中に死んだのか、開始五分で処刑されるキャラに転生してしまったけど死にたくなんてないし、原作主人公のメインヒロインになる幼馴染みも可愛いから渡したくないと冤罪を着せられる前に死亡フラグをへし折ることにします。 そこで転生特典スキルの『超越者』のお陰で色んなトラブルと悪名の原因となっていた問題を解決していくことになります。 【第二章】 原作の開始である学園への入学式当日、原作主人公との出会いから始まります。 原作とは違う流れに戸惑いながらも、大切な仲間たち(増えます)と共に沢山の困難に立ち向かい、解決していきます。

魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します

burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。 その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。

知識スキルで異世界らいふ

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

処理中です...