異世界でひっそりと暮らしたいのに次々と巻き込まれるのですが?

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第2章

第55話:フィアの入学式とお友達

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 ──翌日。

 今日はフィアの入学式だ。
 学院は次の日から授業となっている。そのため俺はフィアの保護者として参加するのだ。
 ゼノアもいるけど。

「お兄ちゃんにゼノアお姉ちゃん見て見て!」

 トテトテトテッと俺とゼノアの元に走ってきたフィアが、着替えてきた学校指定の制服を見せてきた。

「おお、似合ってるじゃないか!」
「じゃのう。可愛いらしい服じゃ」
「えへへ~」

 俺は嬉しそうに頬を緩めるフィアの頭を撫でてやる。

「ほんとアンタはその子を大事にしてるわね?」
「当たり前だろ」

 そんなアルハの言葉に俺は真顔で返した。

「はぁ……まあいいわ。ほんとに可愛いし」
「変なことするなよ? 今度こそ浄化するからな」
「分かってるわよ!」

 浄化という言葉に過剰に反応するアルハ。
 どうやら、そうとう堪えたらしいことが分かる。
 それから朝食を済ませ学校に行くことに。

「早く行こうよお兄ちゃんとゼノアお姉ちゃん!」
「おう」
「じゃな」
「アルハ留守番は任せた」
「このアルハ様に任せなさい!」
「はいはい。そんじゃ」

 家を出て学校に向かうことに。
 俺とゼノアの間にはフィアがおり手を繋いでいる。
 周りからは暖かい視線が向けられていた。

 そう。これこそが俺が求めていたスローライフなのだ。

「お兄ちゃん」
「どうした?」
「お友達出来ないかな?」
「フィアならできるさ。なっ、ゼノア?」
「うむ。フィアならきっとできるのじゃ」
「楽しみ!」

 早くお友達できないかな、と楽しげなフィア。
 そうこうしているうちに俺たちは学校へと到着した。

「ここが、学校?」
「そうだ。今日からここでみんなと勉強するんだ」
「わぁぁ!」

 目をキラキラと輝かせているフィアに、俺は声をかける。

「行こうか」
「うん!」

 それから会場に着いて、フィアは新入生の列に並び、俺とゼノアは保護者席に座ることに。
 少ししてフィアの入学式が始まるのだった。


 ◇ ◇ ◇


 フィアは職員の言われた通りに新入生の列に並び待機していた。
 列は二列となっており、隣の女の子がフィアを見ていた。その視線に気づいたのか、フィアが隣を見て口を開いた。

「……どうしたの?」

 その女の子は、フィアと同じくらいの身長で、赤色のショートヘアをした子であった。

「え、あ、その……エミリーと言います」
「フィアなの。これからよろしくなの!」

 そんなフィアにオドオドしながらも、よろしく、と返事を返すエミリー。

「エミリーって呼んでもいい?」
「うん。なら私もフィアって呼んでも、その、いいかな?」
「うん。私とエミリーは友達なの!」
「友達……うん! 友達!」

 にぱぁーっと笑顔になる二人。
 
 フィアに初めて友達が出来た瞬間であった。
 もしこの場に秋人とゼノアがいたのなら、「可愛い過ぎる!」と言ってフィアの頭を撫で撫でしていただろうことは間違いない。

 その光景を見ていた職員の先生ですら、微笑ましそうに頬を緩ましていたのだから。


 ◇ ◇ ◇


 それからは滞りなく入学式が終わり帰りの時、フィアが俺とゼノアの元に戻ってきた。

「お兄ちゃん今終わったの!」
「しっかり見ていたぞ」
「妾もじゃ」
「ありがとうなの!」
「それでその子は?」

 俺は先程からフィアの手を握っている女の子を見る。

「この子はエミリーちゃん。お友達!」
「良かったなフィア! 入学式でお友達を作れるなんて!」
「えへへ~」

 フィアの頭を撫で撫でする。
 俺はフィアのお友達であるエミリーに自己紹介をする。

「俺は秋人でこっちはゼノアだ」
「ゼノアじゃ」

 俺の自己紹介に、エミリーちゃんも自己紹介をする。

「え、エミリーです。その……」

 俺とゼノアがフィアの何なのか分からないようだった。

「俺とゼノアはフィアの保護者だよ」
「ではお兄さんとお姉さんですか?」
「だな」
「うむ」

 俺とゼノアは頷いた。

「学校ではフィアと仲良くしてくれ」
「はい!」

 するとどこからかエミリーを呼ぶ声が聞こえた。

「エミリー! どこなのー?!」
「ママー、こっちだよ~!」

 すると、「エミリー!」と言って駆け寄ってきた。
 赤毛の髪が特徴の綺麗な女性だった。
 一緒にいる俺とゼノア、フィアに気づいた。

「フィアちゃんって言うんだよ!」
「フィアです。エミリーちゃんのお友達です。よろしくお願いしますなの」

 頭を下げてお辞儀をするフィアに、「よろしくね」と言って挨拶をする。そして俺を見た。

「事情があってフィアの保護者をしている秋人です。こっちはゼノア。とても可愛らしいお子さんですね」
「これはどうも。エミリーの母のエリーシャと言います。娘がお世話になりました」
「いえいえ。気にしないで下さい。これからフィアがお世話になると思いますが」
「こちらこそです」

 少しエリーシャさんと話をした俺たちは、家に帰る。
 もちろん夕食は豪華なディナーとなるのであった。





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