異世界でひっそりと暮らしたいのに次々と巻き込まれるのですが?

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第2章

第60話:筆頭宮廷魔法師は驚く

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 どんな魔法にするかを考える。
 シンプルな魔法で、尚且つ強力な魔法と言えば……あれか!
 俺は手の平を向けて魔法名を紡ぐ。

「――獄炎球ごくえんきゅう

 正面に突き出す俺の平から、赤黒い炎の球が形成されていく。
 それは徐々に大きくなっていく。
 その光景を見たファナティオは、信じられないといった表情をしながら口を開いた。

「あ、ありえない……その魔法は現在使える者はいないはず! 何故君が使えるのだ!」

 え、そうなの? まあいいか。

 ファナティオの言葉を聞き流した俺は、最終的には直径2メートル程になった火球を的目掛けて放った。
 勢い良く飛んで行った火球が着弾したのと同時、それは大爆発を引き起こした。
 だが爆風はこちらにくることは無かった。理由は簡単。俺が魔法で的を囲むように障壁を作ったからである。

 しばらくして的があった場所を確認すると、そこには何もなかった。
 地面をごっそり抉り取る形で消失していた。残るのはドロドロに赤熱した地面のみ。
 誰もがその魔法の威力に言葉を失っていた。

「ご主人様よ。込める魔力減らしたかのう?」
「ん? ああ、別に本気でやらなくてもこんなもんでいいだろ?」
「確かにのう~」

 いや、ゼノアだけは平常運転であった。
 だが障壁が無かったら、爆風とかで訓練場が吹き飛んでいた可能性は高いが……

 少しするとザイン先生やクラスメイト、ファナティオが意識を取りも戻したようだ。
 ファナティオが俺に詰め寄り言葉を放ってくる。

「どうして君がその魔法を使えるのだ! この私ですら使うのに何年も修行をしてきたというのに……!」
「そうなんですか?」
「当たり前だ! それにそこの君も使えるようなことを言っていたような?」

 そう言って視線はゼノアへと向けられる。

「む? そうじゃが? この程度の魔法は簡単じゃろ?」

 ゼノアがそう言うと、この場にいたみんなから「なわけあるか!!」と突っ込みが入った。
 突っ込みを受けたゼノアは不思議そうな顔をしていた。

「ファナティオ」
「なんでしょうかクレア様?」
「少しお耳に入れたいことが」

 ファナティオへと耳打ちをするクレア。

「え?」と言った声が聞こえ、「それは本当ですか?」と何やら話していた。
 しばらくするとファナティオは。

「クレア様、それは事実で?」
「はい。二人がそう言っていましたので、事実かと」
「……そう、ですか。信じがたいですがクレア様が信じるのならそうなのでしょう」

 よくわからないがファナティオは納得したようだ。
 俺は訓練場を直し、ファナティオの授業が再開したのだった。

 何故か俺とゼノアにはあれから何も言わなくなった。
 何故だろう……?

 その日の授業が終わり俺とゼノアはフィアを迎えに行った。
 今日の夕食はクレアに、「一緒に王城で夕食でもいかがですか?」と誘われていたのでフィアを連れ手向かっている最中だ。

「お兄ちゃん。今日お兄ちゃんの学校から火柱が上がらなかった?」
「そっちから見えたのか?」

 俺の問いにフィアはうんと頷いた。

「お兄ちゃんじゃなかったの? もしかしてゼノアお姉ちゃん?」
「違うぞ!? こいつじゃ!」

 ゼノアは即座に否定して俺を指差した。
 フィアは「そうなの?」と言いたげな視線で俺の方を見る。

「……はい」
「…………さっすが、私のお兄ちゃん~!」

 フィアは俺に抱き着いた。

「あっ、ずるいのじゃ!」

 俺に抱き着いたフィアを見て、ゼノアも抱き着いてきた。

「ちょっ、歩き辛いって」

 結局俺はそのまま王城へと到着してまう。門番からは「ははっ、アキト殿は楽しそうだな」と言いながら俺達を通していた。
 いや、止めろよ……

 抱き着かれたまま王城へと入るが、視線が多く突き刺さる。
 結局そのまま案内人のメイドに食堂へと通された。
 入って早々フィリップさんが俺に。

「愉快な恰好だな?」
「それはどうも。ってそろそろ離れてくれ。ご飯食べるんだろ?」
「む? そうじゃったな」
「うん、食べる!」

 今日の食事にはフィリップさん、妻のレイナさん、第一王子のアスト、第一王女のルナさん、騎士団長のグリファスさん、そして――ファナティオがいた。
 席に着いたのはいいのだが、俺の正面にはクレアが座っており、その隣にはファナティオが座っていた。

「あの、陛下」
「どうしたファナティオ?」
「どうしてこの人が?」
「話していなかったか?」
「え?」

 そう言ってフィリップさんは自分達が襲われているところを、俺に助けてくれたことを話した。

「そう、だったのですか……これは陛下とクレア様を助けて下さりありがとうございます」

 ファナティオは立ち上がって俺に向かって頭を下げた。

「気にしないでくれ。こうして歓迎してくれたんだ。それだけでも嬉しいんだから」
「そうだ、アキト殿」
「グリファスさん?」
「今度はいつ来れる? また鍛えて欲しくてな」
「ああ、今度の休みにでも行くよ」
「そうか。それは助かる。部下たちも喜ぶ」

 いや、前回悲鳴を上げていたよね? どう見ても喜んでいないような……

「そういえばアキト殿。学院でまた派手にやらかしたようだな? クレアとファナティオから聞いているぞ?」
「あ、アレくらいはやらかしたの範囲に入らないのでは……」
「いや、十分過ぎるだろ!!」

 ファナティオに突っ込まれてしまった。

「いや、はい。自重します。多分……」
「多分ってなんだ!」

 まあいいじゃないか。

 それから俺達は、食事を楽しむのだった。

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