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第六話
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「……ナーヴェ、さっきあなたの声が聞こえた気がするけど」
またナーヴェは沈黙してしまう。さっきまでの殺気はどこかに行ってしまって、私には大きな犬にしか見えない。
五人の野盗――じゃなくて、兵士たちにはまだ息がある。凍傷と火傷で重症だし、このまま放っておいたら長くは保ちそうにない。
「ナーヴェ、この人たちと契約して従ってもらう代わりに、治してあげられる?」
ナーヴェは目を閉じる――そういうことだろうと思った、とため息をついているみたい。
でもナーヴェは私の言うことを聞いてくれて、銀色の毛並みの輝きが集まって光の球のようになって、倒れている兵士たちのところに飛んでいく。
ナーヴェの三つ目の力、それが『再生』。彼が魔界でもかなり高位の実力者なのは、彼の能力が万能だからというところにある。
そして、ナーヴェが人間を癒やすという行為には『代償』を求めることができる。この代償による支配から逃れるには、それこそ召喚士になれるくらいの精神力と魔力が必要になる――この兵士たちは魔法はからきしみたいなので、全く抵抗できていなかった。
「……これからあなたたちは、目覚めたら帝都に帰って、前聖女アリアンナに逃げられたと報告してもらいます。逃げた方向は帝都の方向で、私は帝都に潜伏していることにでもしておいてください。ナーヴェ、こうやって伝えてあげて」
ナーヴェは私を見てこくりと頷く。頑張ってくれたナーヴェの首元を撫でてよしよしとしても、いつも恥ずかしがって逃げてしまうのに、じっとしていてくれた。
「あはは、くすぐったい……あっ、ナーヴェ?」
そして、ナーヴェが私の頬の傷を舐めてくれる。『再生』の力で、傷が綺麗に治ってしまった。
こんなことをされると召喚士と従魔の力関係が崩れてしまう――でも、ナーヴェが心配してしてくれたことで、それはとても嬉しくて。
「……そういえばナーヴェ、大丈夫? 私の血を飲んだりしたら……」
ナーヴェは何も言わない――と思ったら、急に小さくなって、子犬の姿になってしまった。
できれば背中に乗せてもらって人里を目指そうと思ったんだけど、もしかしてそれを察して小さくなっちゃったとか? 私に楽をさせないつもりね。
――そういうわけでもないというのは、ナーヴェが尻尾を振りながら見ている方向を見て、ようやくわかった。
商人の親子のうち、娘さんの姿が見える。彼女は私の姿を見つけると、泣きそうな顔になって、こちらに駆けてくる――私のことを心配してくれたんだ。
「っ……ごめんなさい、私たちのために……あら、その子は……?」
彼女は私に言いたいことが沢山あるみたいだけど、私が抱えているナーヴェを見て、どこから出てきたのかと驚いていた。
「とりあえず、この場を離れましょう。あの人たちはしばらく起きないし、追ってもこないと思うわ」
「は、はい。私たちの馬車がこちらにあります、どうかお礼をさせてくださいますか」
ナーヴェったら、ここまで分かってて小さくなったの? そんなことを思って抱えているナーヴェと睨めっこをするけど、ナーヴェは舌を出して子犬のように振る舞うばかりだった。
またナーヴェは沈黙してしまう。さっきまでの殺気はどこかに行ってしまって、私には大きな犬にしか見えない。
五人の野盗――じゃなくて、兵士たちにはまだ息がある。凍傷と火傷で重症だし、このまま放っておいたら長くは保ちそうにない。
「ナーヴェ、この人たちと契約して従ってもらう代わりに、治してあげられる?」
ナーヴェは目を閉じる――そういうことだろうと思った、とため息をついているみたい。
でもナーヴェは私の言うことを聞いてくれて、銀色の毛並みの輝きが集まって光の球のようになって、倒れている兵士たちのところに飛んでいく。
ナーヴェの三つ目の力、それが『再生』。彼が魔界でもかなり高位の実力者なのは、彼の能力が万能だからというところにある。
そして、ナーヴェが人間を癒やすという行為には『代償』を求めることができる。この代償による支配から逃れるには、それこそ召喚士になれるくらいの精神力と魔力が必要になる――この兵士たちは魔法はからきしみたいなので、全く抵抗できていなかった。
「……これからあなたたちは、目覚めたら帝都に帰って、前聖女アリアンナに逃げられたと報告してもらいます。逃げた方向は帝都の方向で、私は帝都に潜伏していることにでもしておいてください。ナーヴェ、こうやって伝えてあげて」
ナーヴェは私を見てこくりと頷く。頑張ってくれたナーヴェの首元を撫でてよしよしとしても、いつも恥ずかしがって逃げてしまうのに、じっとしていてくれた。
「あはは、くすぐったい……あっ、ナーヴェ?」
そして、ナーヴェが私の頬の傷を舐めてくれる。『再生』の力で、傷が綺麗に治ってしまった。
こんなことをされると召喚士と従魔の力関係が崩れてしまう――でも、ナーヴェが心配してしてくれたことで、それはとても嬉しくて。
「……そういえばナーヴェ、大丈夫? 私の血を飲んだりしたら……」
ナーヴェは何も言わない――と思ったら、急に小さくなって、子犬の姿になってしまった。
できれば背中に乗せてもらって人里を目指そうと思ったんだけど、もしかしてそれを察して小さくなっちゃったとか? 私に楽をさせないつもりね。
――そういうわけでもないというのは、ナーヴェが尻尾を振りながら見ている方向を見て、ようやくわかった。
商人の親子のうち、娘さんの姿が見える。彼女は私の姿を見つけると、泣きそうな顔になって、こちらに駆けてくる――私のことを心配してくれたんだ。
「っ……ごめんなさい、私たちのために……あら、その子は……?」
彼女は私に言いたいことが沢山あるみたいだけど、私が抱えているナーヴェを見て、どこから出てきたのかと驚いていた。
「とりあえず、この場を離れましょう。あの人たちはしばらく起きないし、追ってもこないと思うわ」
「は、はい。私たちの馬車がこちらにあります、どうかお礼をさせてくださいますか」
ナーヴェったら、ここまで分かってて小さくなったの? そんなことを思って抱えているナーヴェと睨めっこをするけど、ナーヴェは舌を出して子犬のように振る舞うばかりだった。
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