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第1章 魔法学院(前期)

第5話 嫌な担任

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 やっと、私だけの部屋を手に入れた。ここには、あの悪魔のようなエイコはいない。ほっとした為か、ベッドに入るとすぐに寝てしまった。

 ドアが開いたのに気が付かなかった。真っ暗な部屋で、身体の上に誰かが、覆いかぶさっているのに、気が付いた。

 思わず、押しのけようとしたが、その両方の手を掴まれて、上に押し付けられた。私は、万歳のような体制になった。

 「じっと、していてね。ユイカ」

 「あっ、エイコ」

 「そうよ。よく分かったわね。身体が私を覚えているようね」

 「部屋の鍵をかけ忘れたようね。一人の部屋に慣れていないから」

 「もう、嫌よ。誰か、呼ぶわ」

 「いいのよ。誰でも、呼んでちょうだい」

 「困るのは、エイコでしょ」

 「どうして、私が困るの?」

 「だって、この魔法学院に勝手に入って来ているから、警備の人に追い出して貰うわ」

 「あら、忘れたの?私が、この魔法学院の上級教師だってこと」

 「えっ、あれって、嘘だと思っていた。こんな人が上級教師だなんて、ありえない」

 「この世の中には、何でもありなの。力をもっていればね」

 「そんなあ、もう、いやよ」

 「貴方も、もう、すべてを受け入れなさい。ほら、身体は、正直よ」

 私の生活が、一瞬の内に崩れ落ちていく。あの、残酷な感覚がよみがえった来た。自分の力のなさ、無力感が私の身体を満たしていく。それと同時に、私は、反抗する気力をなくしていった。またしても、私は、エイコのマリオネットになってしまった。

 エイコの私の身体への浸食は、朝まで続いた。まだ、この魔法学院の入学式も終えていない。あと、1週間ほどは、エイコは暇らしい。また、来ると言い残して、消えて行った。

 「そうそう、ユイカ、鍵を掛けても無駄よ。私、この寮のマスターキーを持っているのよ。当然よね。私がこの寮の責任者だからね」

 もともと無駄だったのだ。鍵をかけ忘れた自分を責めていたが、それすらも、エイコのいたぶりだった。私を後悔させるために、ワザと言ったのだ。

 「どうしよう」

 自分が描いていた学園生活が消えていく。最悪の色に染まっていく。

 「どうして、私だけ、こんなことになるの。あのエイコが教師だって、信じられない。そのうえ、私の担任で、しかも、寮のマスターキーを持っている」

 「こんな私を救ってくれる王子さまは、現れないのかな」

 そんな、儚い希望を抱いた。死にたい気分だけど、ユイカは、自分が強く成れば、この環境を変えれると、信じていた。

 「死ぬのはいやよ。あんな女の為に、私の人生を投げ出すなんて、できない」
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