銀色の誓い ~再誕の王女と忘れられた王子~

小世 真矢

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第四章

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第四章:追跡の行方
レオンは、ハルトと共に黒曜の森を後にした。夜明け前の冷たい空気に包まれ、二人の足元には湿った落ち葉が音を立てて踏みしめられていく。あの騎士たちが去っていった方向を頼りに、彼らは無言で歩みを進めた。ふとレオンが振り返ると、森の奥深くに潜む影が彼らの後を追っている気配を感じたが、それは確証を得ることはできなかった。二人は静かに街道へと向かう。

開けた街道に出ると、風は多少収まり、道の両脇に広がる木々がかすかに揺れる音を立てた。レオンは慎重に周囲を見渡し、街道を北へ向かう馬車の轍を発見した。それは、あの黒塗りの馬車が走った跡だろう。
「見てみろ、あの騎士たちは北の方に向かっている。」
レオンは低い声で言った。ハルトは顔を上げ、目を不安げに輝かせながらレオンを見た。
「あの人たちは、一体何者なの?あの『積み荷』って、何だったの?」
レオンは、ハルトの問いにすぐには答えられなかった。自分自身もまだ何も分かっていないのだ。
「分からない。しかし、間違いなく何か重要なものだ。お前に関わりがあるような気がするんだ。」
その言葉に、ハルトは驚き、目を大きく見開いた。
「私に?でも……」
「分からない。でも、何かがある。」
レオンは短く答えると、再び街道を北へと進んだ。道中、小さな村を通り過ぎ、そこで食料を買い、村人たちからの情報を求めた。しかし、あの紋章に関して何か知っている者はいなかった。

数日後、二人は大きな城壁都市、ルーンベルクに到着した。ルーンベルクは北方の交易拠点として栄え、多くの商人や旅人が行き交う活気に満ちた都市だった。冷たい風が石造りの街並みを吹き抜け、レオンは少し肩をすくめた。都会の雰囲気に気圧されつつも、目的を忘れることはなかった。
「ハルト、ここで少し休んでおけ。」
レオンはハルトに向かって言い、宿に彼を残して街の情報屋を訪ねた。

情報屋の店は薄暗い路地の奥にひっそりと佇んでいた。煙管の煙が立ち込める中、店主は目を細めてレオンを見た。
「何かご用かな?」
レオンは黙って、あの羽根のような紋章が刻まれた短剣を見せた。
「これを見たことはないか?」
店主は一瞥すると、ニヤリと笑って煙管をくわえ直した。
「ほう、その紋章を知りたいとは、珍しい客だ。あれは北方にある、古王国ヴェルンストの紋章だ。」
ヴェルンスト王国。レオンはその名前を初めて耳にした。
「ヴェルンスト王国とは、どんな国なのだ?」
レオンが尋ねると、店主は煙を一吹きし、ゆっくりと語り始めた。
「ヴェルンスト王国は、かつて強大な力を持っていた。しかし、数十年前に内乱によって滅びたと言われている。王族は皆殺しにされ、国は貴族たちに分割されて支配されているが、真実は闇の中だ。」
レオンはその話に深く驚き、思わず息を呑んだ。もし、あの「積み荷」がヴェルンスト王国に関係しているのだとしたら、ハルトの身に何か関わりがあるのだろうか?
「その騎士たちも、ヴェルンスト王国の関係者だろうか?」
レオンはさらに問い詰めた。
店主は肩をすくめ、無関心そうに答える。
「さあな。だが、あの紋章を使う連中が、ろくな者じゃないのは確かだ。何かを探しているらしいという噂は聞くが。」
その言葉にレオンはさらに不安を感じたが、これ以上の情報を得るためにはさらに調査を続けるしかない。

宿に戻ると、ハルトが心配そうにレオンを迎えた。
「レオン、何か分かった?」
レオンは、ヴェルンスト王国のことを話した。ハルトはそれを聞いても、特に驚きもせず、ただ静かにうなずいた。自分の出自については、まったく知らないのだろう。しかし、レオンは確信していた。ハルトには何かが隠されている。
その夜、レオンは今後の行動を考えた。あの騎士たちが探しているもの、それが何か。そして、それがハルトにどれほど深く関わっているのか。すべてを明らかにするためには、ヴェルンスト王国についてもっと詳しく調べる必要がある。
しかし、ヴェルンスト王国はすでに滅びた国だ。手がかりなど、どこにあるのだろうか?
その時、レオンは突然、あの短剣を思い出した。あの短剣に刻まれていた羽根のような紋章。それが、いったい何を意味するのか。そして、あの短剣の持ち主が知っていることがあるかもしれない。

翌日、レオンは再び街を歩き、あの短剣についての情報を集めた。誰かが見たことがあるかもしれない。数日後、彼は街の古道具屋で、意外な情報を得た。
「ああ、その短剣なら、少し前に若い男が買い取っていったよ。確か、東の方へ旅立つと言っていたな。」
東へ。レオンはその情報を聞いた瞬間、心が決まった。これはハルトのためでもあり、彼自身のためでもあった。自分たちの運命に関わる重要な手がかりが、東にあるのかもしれない。
「ハルト、少し遠くまで旅をすることになるかもしれない。」
レオンは静かに告げた。ハルトは、少し寂しげに、そして不安げに顔を曇らせた。
「どこへ行くの?」
「東だ。お前にとって、大切な何かが見つかるかもしれない場所へ。」
レオンは、ハルトの目をしっかりと見つめ、確信を込めて言った。

二人は、ルーンベルクを後にし、再び東へと向かった。道中、風は冷たく、旅の始まりが彼らにいくつもの試練を予感させる。未知の危険が待ち受けていることを、レオンもハルトもまだ知らなかった。そして、二人の旅が、やがてレオン自身の過去と深く絡んでいくことを、彼はまだ理解していなかった。
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