銀色の誓い ~再誕の王女と忘れられた王子~

小世 真矢

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第五章

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第五章:東への道程

ルーンベルクを後にしたレオンとハルトは、東へと続く険しい街道を歩き続けた。西の地域と比べて、東は自然に恵まれた地であり、背後には雄大な山々が連なり、前方には深い緑の森が広がっている。道はしばしば未舗装の場所が多く、土ぼこりが舞い上がり、草や苔に覆われた石畳が続いていた。そのため、旅は容易ではなかったが、それが逆に二人にとっては心地よい冒険となっていた。

ハルトは、最初は都会の喧騒を離れて静かな道を歩くことに少し寂しさを感じていたが、次第にその広大な自然の美しさに魅了され、歩みの速さが増していった。移り変わる景色の中で、彼は新しい発見を楽しみ、様々な動植物に興味を持ち始めた。レオンはそんなハルトに、旅の途中で見つけた珍しい花や動物の名前を教え、また剣術の基礎を教えたりもした。道の上での訓練は厳しくもあり、楽しくもあり、二人の間にはかつてないほど強い絆が生まれていった。

それでも、目的地に向かって歩き続ける中で、レオンは短剣の持ち主についての手がかりを一つも見つけられずにいた。道端の村や街で、誰かがその特徴的な短剣を持っていないか聞き込みをしても、情報はどこにもなかった。しかし、ある日、彼らは山間の小さな村にたどり着いた。ここで休息を取るために宿に入った二人は、食事をしていると隣の席の旅人が突然、話を始めた。

「この辺りで一番の剣士と言えば、カイルって男を知っているか?」

その一言でレオンの耳がピンと立った。カイル、その名に反応したのだ。旅人は、カイルが東の出身で、独特な装飾が施された短剣を使っていると言う。まさに、レオンが求めていた人物だ。

「カイル、確かに見かけたな。少し前、この村を通り過ぎたが、東に向かうと言っていた。」

シエルという街へ向かうカイルの話に、レオンはすぐに心を決めた。シエルは、東の大きな街で、ここからさらに先に進んだ場所だった。すぐに二人はその足をシエルへと向け、歩き続けた。

数日後、シエルの街に到着した。ルーンベルクとは全く異なり、シエルの街は荒々しい雰囲気が漂い、武具や薬草を売る店が立ち並んでいた。どこか硬派な街で、流れる空気は少し重く、住民たちの顔にも疲れや警戒心が見て取れた。レオンはすぐに、街の情報屋を探し、その男にカイルの情報を尋ねた。情報屋は一見すると、信じられないほど胡散臭い男だったが、金貨を差し出すと一変し、急に親切になった。

「カイル、ねぇ。最近見かけたよ。腕利きの傭兵で、ちょっと厄介な依頼を引き受けているらしい。」

そして、情報屋はカイルがよく訪れる酒場の場所を教えてくれた。レオンはその情報をもとに、ハルトと一緒に酒場へ向かう。

昼間から酔っ払いがひしめく酒場に到着した二人は、すぐにカウンターに座り、酒を注文した。少し時間が経つと、店の奥の席で一人酒を飲んでいる男に目が留まった。その男は鋭い眼光を持ち、腰に特徴的な装飾が施された短剣を差していた。間違いなく、彼がカイルだ。

レオンは心を決めて男に近づき、声をかけた。「カイル、あなたですか?」

男は訝しげに顔を上げ、「俺がカイルだが、あんたは?」と返す。

「俺はレオンという。少し、あなたに聞きたいことがある。」

カイルは警戒しながらも、レオンの言葉をじっと聞いていた。

「その短剣についてだ。」レオンが話すと、カイルの表情が一瞬で険しくなり、彼は鋭い視線をレオンに向けた。

「なぜ、そのことを?」

レオンは、あの馬車の襲撃事件のことを説明し、あの短剣が馬車に残されていたことを伝えた。カイルは、その話を聞いた後、驚いた表情を浮かべた。

「まさか、あの時の生き残りか……」カイルは、レオンに自分の過去を語り始めた。彼はかつてヴェルンスト王国の騎士であり、襲撃された馬車に乗っていた人物だと言う。そして、あの「積み荷」が実はヴェルンスト王国の王女、リアであることを明かした。

「王女様は生きている。俺は、王女様を安全な場所へ送り届けるために、今もこうして旅を続けているんだ。」カイルはそう告げ、レオンはその言葉を聞いて衝撃を受けた。あの「積み荷」が生きている人間であったことは、予想もしていなかった事実だった。

そして、さらに衝撃的な事実が続いた。カイルは、王女リアがレオンと同じ銀色の髪を持っていることを明かす。

「リア様の髪は、お前と同じ色だ。まさか、偶然じゃないだろう?」カイルの言葉に、レオンは自分の髪の色に触れ、ただ驚くばかりだった。

カイルは、レオンに王女を護衛してほしいと頼んだ。王女を追ってくる者たちから守るため、レオンの助力が必要だという。カイル一人ではその使命を果たすことはできないと告げると、レオンはしばらく逡巡した。

だが、ハルトのことを考えると、もう無関係ではいられないと感じていた。自分の過去に関わり、ヴェルンスト王国との繋がりを知ることができるかもしれない。そして、何よりも、王女リアを助けることが自分にとっても重要だと感じた。

「分かった。力を貸そう。」レオンはカイルの申し出を受け入れ、彼の旅に加わる決意を固めた。

こうして、レオンとハルトの旅は新たな局面を迎えることとなった。滅びた王国の王女を護衛するという危険な使命が加わり、彼らの行く手にはさらに多くの困難が待ち受けているだろう。だが、レオンはまだ知らない。この出会いが、彼の運命を大きく変えることになると。
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