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第25話 妖刀ひとがしら
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レベル8になりさっきよりも少しだけだが確実にゴブリンを倒すのに時間がかからなくなった。
だがまだそれは単体のゴブリンであって複数体のゴブリンと戦うのは厳しいだろう。
なので俺はここでも魔眼の透視能力をいかんなく発揮し、複数体いるゴブリンからは避けるようにダンジョン内を移動していた。
そしてそのかたわら宝箱をみつけてこれを開ける。
「ん? これは……」
「なんですか、何が入っていたんですか?」
ククリが俺の肩に手を置いて宝箱の中を覗き込んだ。
「剣だ!」
俺は嬉しさのあまり声を張り上げた。初めて武器らしい武器をみつけたのだ。
しかも剣。元剣道部の経験がやっと役に立つ。
「マツイさん、それは正確には刀です。妖刀ひとがしらといいます」
「妖刀? ……まさかまた呪われているんじゃないだろうな」
象の像に続いて呪いのアイテムなんてごめんだぞ。
「大丈夫、呪われてはいません。むしろラッキーですよ」
そう前置きしてククリは続ける。
「その妖刀ひとがしらは攻撃力+10でさらにモンスターの頭部に当たりさえすれば確実に息の根を止めることの出来る一撃必殺の刀なんです」
「おお」
まあ刀で頭部に一撃当てた時点でほぼ決まりのような気もするけど。
俺は妖刀ひとがしらを手に取った。
重くもなく軽くもない、振るにはちょうどいいくらいの重量感だ。
今度は鞘から抜いて構えてみる。
刀身が鈍い輝きを放っている。
「かっこいいです、マツイさんっ」
「そ、そうか?」
俺はすっかり気を抜いていた。
そのため透視を怠っていたのだ。
『ギギッ!』
ククリの後ろの曲がり角から急にゴブリンが姿を見せた。
「!?」
しかも、
『ギギッ!』
『ギギッ!』
その後ろにさらに二体いる。
「ククリどけっ!」
俺は叫びながら前に一歩踏み込むとククリの背後に迫っていた一体目のゴブリンめがけ刀を下から上に振り抜いた。
『ギギッ……!』
「浅いかっ」
踏み込みが足りなかったせいか致命傷は与えられなかった。ゴブリンの頭部にかすっただけだ。
しかしそれだけで十分だった。
『ギギッ!?』
頭部にかすり傷を負ったゴブリンは突如として苦しみ出しその場に倒れた。
そしてそのまま息絶えたらしく泡状になって消滅する。
「今のが妖刀ひとがしらの能力ですっ。たとえかすっただけでも絶命させられますっ」
俺の後頭部辺りからククリの声が聞こえてくる。
「ああ、そうみたいだな」
俺は残る二体のゴブリンを注視しながら返した。
『ギギッ……!??』
『ギギッ……!?』
致命傷ではなかったのに死んだ仲間を見てひるんでいる様子のゴブリンたち。
俺はその隙を見逃さず、
「面っ!」
学生時代さながらのあざやかな面を繰り出した。
頭部にクリーンヒットしどさっと仰向けに倒れるゴブリン。
それを見た残る一体が、
『ギギッ!』
瞬時に向きを変え逃げていく。
「待てっ!」
俺はすぐさま刀を一振りしたが逃げるゴブリンの右腕を斬り落とすのが精一杯だった。
ゴブリンはよほど必死だったのだろう、悲鳴も上げず逃げ去った。
「逃げちゃいましたね……」
石畳の上に転がったゴブリンの腕を見下ろしながらククリが言う。
「ああ……」
手負いのモンスターは何をしてくるかわからない。
出来ることなら逃がさず仕留めておくべきだった。
俺は泡状になって霧散していくゴブリンを見ながら一抹の不安を感じていた。
だがまだそれは単体のゴブリンであって複数体のゴブリンと戦うのは厳しいだろう。
なので俺はここでも魔眼の透視能力をいかんなく発揮し、複数体いるゴブリンからは避けるようにダンジョン内を移動していた。
そしてそのかたわら宝箱をみつけてこれを開ける。
「ん? これは……」
「なんですか、何が入っていたんですか?」
ククリが俺の肩に手を置いて宝箱の中を覗き込んだ。
「剣だ!」
俺は嬉しさのあまり声を張り上げた。初めて武器らしい武器をみつけたのだ。
しかも剣。元剣道部の経験がやっと役に立つ。
「マツイさん、それは正確には刀です。妖刀ひとがしらといいます」
「妖刀? ……まさかまた呪われているんじゃないだろうな」
象の像に続いて呪いのアイテムなんてごめんだぞ。
「大丈夫、呪われてはいません。むしろラッキーですよ」
そう前置きしてククリは続ける。
「その妖刀ひとがしらは攻撃力+10でさらにモンスターの頭部に当たりさえすれば確実に息の根を止めることの出来る一撃必殺の刀なんです」
「おお」
まあ刀で頭部に一撃当てた時点でほぼ決まりのような気もするけど。
俺は妖刀ひとがしらを手に取った。
重くもなく軽くもない、振るにはちょうどいいくらいの重量感だ。
今度は鞘から抜いて構えてみる。
刀身が鈍い輝きを放っている。
「かっこいいです、マツイさんっ」
「そ、そうか?」
俺はすっかり気を抜いていた。
そのため透視を怠っていたのだ。
『ギギッ!』
ククリの後ろの曲がり角から急にゴブリンが姿を見せた。
「!?」
しかも、
『ギギッ!』
『ギギッ!』
その後ろにさらに二体いる。
「ククリどけっ!」
俺は叫びながら前に一歩踏み込むとククリの背後に迫っていた一体目のゴブリンめがけ刀を下から上に振り抜いた。
『ギギッ……!』
「浅いかっ」
踏み込みが足りなかったせいか致命傷は与えられなかった。ゴブリンの頭部にかすっただけだ。
しかしそれだけで十分だった。
『ギギッ!?』
頭部にかすり傷を負ったゴブリンは突如として苦しみ出しその場に倒れた。
そしてそのまま息絶えたらしく泡状になって消滅する。
「今のが妖刀ひとがしらの能力ですっ。たとえかすっただけでも絶命させられますっ」
俺の後頭部辺りからククリの声が聞こえてくる。
「ああ、そうみたいだな」
俺は残る二体のゴブリンを注視しながら返した。
『ギギッ……!??』
『ギギッ……!?』
致命傷ではなかったのに死んだ仲間を見てひるんでいる様子のゴブリンたち。
俺はその隙を見逃さず、
「面っ!」
学生時代さながらのあざやかな面を繰り出した。
頭部にクリーンヒットしどさっと仰向けに倒れるゴブリン。
それを見た残る一体が、
『ギギッ!』
瞬時に向きを変え逃げていく。
「待てっ!」
俺はすぐさま刀を一振りしたが逃げるゴブリンの右腕を斬り落とすのが精一杯だった。
ゴブリンはよほど必死だったのだろう、悲鳴も上げず逃げ去った。
「逃げちゃいましたね……」
石畳の上に転がったゴブリンの腕を見下ろしながらククリが言う。
「ああ……」
手負いのモンスターは何をしてくるかわからない。
出来ることなら逃がさず仕留めておくべきだった。
俺は泡状になって霧散していくゴブリンを見ながら一抹の不安を感じていた。
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