落ちこぼれ同盟

kouta

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四章 ミートパイ事件

聞けなかった答え

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 翌朝。トシキは鳥の鳴き声で目を覚ました。

(あれ……もう朝? 確かあのハゲと一緒に谷でアーサーを探してて……そんで……あっ!)

「そうだ! マンイータに襲われて! て、えぇっ!?」

頭が覚醒すると同時に、近距離にあったアーサーの超絶美形な寝顔にトシキは大声をあげた。

「な、なっ……!?」

(そういや俺、昨日ものすっごく恥ずかしい事ばっか言った気が……)

だんだんと甦って来る昨日の記憶に、トシキは顔を真っ青にしたり真っ赤にしたりと忙しい。

「ん……トシキ?」
「っ!?」

トシキが大声をあげたせいで、アーサーが起きてしまったらしい。目を擦りながら話しかけてくる。
 トシキは羞恥のあまり布団の中に潜り込んだ。

「どうしたんだ?」
「うっ……あ、その……っ」

頭まですっぽりと布団の中に潜り込んだトシキの耳に、アーサーの笑い声が聞こえる。

「トシキ、ちゃんと顔を見せてくれ。じゃないと悪戯するぞ?」
「いたずら?」

トシキが聞き返すとアーサーは布団の上からトシキの腹部を擽り始めた。

「ひゃっ、あはは! ……く、くすぐったい! わかった! 出るから……」

すぐに降参したトシキは、もそもそと顔の半分だけを出してアーサーを見た。

「顔色はもう良いみたいだな。おはよう、トシキ」
「お……おはよう」

絵本から飛び出してきた王子様のようなイケメンに至近距離から微笑まれて、男ながらドキドキしながらトシキは挨拶をした。

「朝ごはん食べに行かないか?」
「お、俺は、まだいい……」

トシキが断った瞬間、お腹が鳴った。あまりのタイミングの良さにますますトシキの顔が赤くなる。

「昨日は結局夕飯食べ損ねたからな。俺も腹ペコだ。意地張ってないで、出ておいで」
「……っ、別に、意地張ってるわけじゃ……」

トシキがそういうと、アーサーは未だ布団に隠れているトシキの頬を撫でて言った。

「この顔のどこが不貞腐れて無いって?」
「っ、今日のアーサーは意地悪だ!」
「ごめん。トシキがあんまりにも可愛くって」
「なっ!? か、可愛い!? お前頭おかしくなったんじゃね?? 俺は男だぞ?」
「だから?」
「だからって……だ、だから!」
「だから?」
「だから、その……って、顔が近い!!」

「……トシキ」

トシキの瞳を覗き込むように近づいたアーサーは。囁くような声でトシキの名前を呼んだ。

「な、何?」
「お前……」

「おっはよー! トーシーキー!!」

アーサーが何かを言いかけた時、扉が開いてイオがやって来た。

「イオ!」
「……おはよう、イオ」
「あれ? なんでアーサーもいるの? もしかして昨日、二人で寝たの!? ずるーい! お泊まり会なら僕も参加したかったのにっ!」

ぷぅーっと頬を膨らませてむくれるイオに駆け寄り、トシキは頭を撫でる。

「悪い悪い。次は絶対にイオも参加な! 絶対にぜーったいに、三人で寝ような!!」
「わーい! 約束だよ!!」
『みゃぁっ!』
「ミュウ! お前、昨夜はイオの所に行ってたのか? よしよーし! 今日も可愛いなぁ」

イオの胸元から飛び出して抱き付いてきたミュウを、トシキは撫でまわす。

『みゃぁ~』

ミュウは嬉しそうに鳴いている。

「全員揃ったし、朝食食べに行こうか?」
「いいね! 行こう行こうっ!」
『みゃっ!』

アーサーの提案に、イオとミュウはすぐに賛成の声をあげた。

「お前も良いよな? トシキ」
「おう……じゃあ着替えてくる」

トシキはそう言ってクローゼットの方に向かったが、ふと何かを思い出したように振り返った。


「なぁ、アーサー」
「なんだ?」
「さっき、何を言いかけたんだ?」

「……いや。大した事じゃないから、気にしないでくれ」

アーサーはそう言ってトシキに背を向けた。その様子だともう一度聞き返しても答えてはくれないだろう。
 トシキは諦めて着替えを始めた。



「元の世界に戻りたいか……なんてそんな事聞いても、俺にはどうしようもないのに……」

アーサーの小さな呟きは、トシキの耳まで届かなかった。
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