落ちこぼれ同盟

kouta

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五章 花葬―あの日の誓いをもう一度―

補習初日

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 トシキは夏休みの間、毎日7時間に及ぶ補習が行われる事になった。全ての教科において圧倒的に出席日数が足りないためである。

「教師になってもう随分経つがな……こんなに不真面目な生徒は初めてだ」

と、学年主任で魔法哲学の教師であるレントは、ネチネチと言っていたがトシキは彼の説教なんて初めから聞いていなかった。
 早く終わらないかなぁと思いながら、レントの悪趣味で無駄に派手な服装をぼんやりと眺めていた。

「……というわけで、俺はお前みたいな落ちこぼれの役立たずなんて即刻退学になっちまえばいいと思っているが、心優しいシスル先生が一年の一学期で退学は可哀想だとおっしゃるので今回は夏休みの補習だけで許してやる。ありがたく思えよ。二度目は無いからな!!」

2時間におよぶとても長い説教であったが、要は夏休みは全て補習で潰れるという事。大目にみるのは今回までだから、これからは真面目に勉強に励むようにと伝えたかったようだ。

「簡単に要点だけ言ってくれればいいのに……これだから文系は嫌なんだよなぁ」
「なにか言ったか? 俺の言った事に文句でもあるのか能無し」

小声で呟いたはずだったのだが、レントの耳に聞こえてしまったらしい。それにしても生徒に対して能無しっていうのは教師としてどうなんだろうかと思いつつも、顔には出さずに首を振った。

「なんでもないでーす」
「ならさっさと行け!! 補習に遅れるだろ!」
「はーい。失礼しまーす!」

補習に遅れたとしたら長々と説教していたレントにも責任があるとトシキは思ったが、そんな事を言ってしまえば追加のお説教は確実である。
 トシキは急いでレントの研究室から飛び出し、精霊術の補習をしてくれるシスル先生の元へ向かった。



 精霊術を行う時は屋外で授業をする事が多いが、今回は座学の授業らしく、指定されたのはシスル先生の教室だった。

「おはようございます。トシキ」
「おはようございまーす。シスル先生」

精霊術学の教師シスルは個性豊かなリサイア学園の教師陣の中で唯一の常識人だという。
 レントの『本当に教師か?』と疑いたくなるような派手な服は好まず、シンプルでキチンとした服装をしている。
 E組のトシキに対して能無しだの役立たずだの言うレントとは違って、生徒を馬鹿にしないし、丁寧に教えてくれる……らしい。
 殆どの座学を寝て過ごしているトシキは知らなかったのだが、イオの話によると、どのクラスにも優しく平等に接してくれるシスル先生は、E組の生徒に絶大な人気があるのだとか。

「それじゃあ早速授業を始めましょう。まずは自分のパートナーを召喚してください」
「え? 今日って座学ですよね」
「そうだよ。でも、君の精霊はまだ小さいから一緒に授業を受けることが出来るだろう? 精霊術において最も重要な事は精霊と術者の信頼関係だ。共に行動する事で両者の絆は深まる。その時間は長ければ長いほどいい」

『なるほど』とトシキは手を叩いて納得しながらミュウを呼び出した。小さなケットシーは、長机の上に行儀正しく座った。トシキもその机に筆記用具を置いて席に着いた。

「さて。トシキ、君は他の教科も実技はほぼ受けておらず、座学も寝てばっかりいるみたいだね」
「いやぁ……あはは」
「笑い事じゃないんだけどね。まぁそういう事ならこの際、基礎からしっかりと覚えよう。夏休みみっちり勉強すれば皆に追いつけるよ」

(うげぇ……みっちりってマジかよ)

『みゅう?』

笑顔を引き攣らせたトシキとそんな主人の顔を不思議そうに覗きこむミュウ。

 こうしてトシキの補習初日が始まった。



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