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三章 テスト
ドマイナー魔法
しおりを挟む「っ! そこをどけぇ!!」
逃げている方は、切羽詰まった様子でナイフを振り上げてこちらに向かってくる。
「あ! あいつシアーノ様の側近だ!!」
「ナイフ持ってんぞ!?」
「逃げろ逃げろ!」
慌てふためく三人組。その三人を庇うように前に出たレイ。
「おい不細工! お前も危ないから、俺様の後ろに……」
「闇に煌めく星の力によって汝を拘束する。偉大なる力の前に跪け! 『グラビティ・ハント』」
「なっ!?」
トシキの唱えた呪文により、少年はその場に崩れるように倒れた。
「なんだぁ? 勝手に転んだようにみえたけど……あいつが何かしたのか?」
「聞いた事ねぇ呪文だったぞ」
「一体何をしたんだ?」
「……あれは重力魔法だ」
首を傾げる三人組に答えたのはレイだった。
「重力魔法? お前、知ってるか?」
「いや。聞いた事も無い」
「会長様、どんな魔法なんですか?」
「ドがつくほどマイナーな魔法だから、知らないのも無理はない。無属性魔法の一種で、一部の範囲の重力を自由に変える事が出来る呪文だ」
「そんな魔法があるんですか!?」
「聞いてると凄く感じるけど、やっぱり上位魔法なのかな?」
「難しそう……」
「いや、少々計算が面倒だが、呪文そのものは単純で覚えやすい。本人の魔力次第で弱くも強くもなる。今のは範囲が狭いし、そんなに重力もかかっていなかったから、Dクラスってところか」
『でも』と、レイは続けた。
「とても綺麗な詠唱だったな……」
「ん? 何か言った?」
「あ、い、いや! なんでもないっ!」
「んー?」
挙動不審なレイに、首を傾げるトシキ。その間に追いついたイオが、少年の手からナイフを取り上げてその上に跨った。
「捕まえた! さぁ、君がやったこと、全部話してもらううよ!!」
「誰が貴様に話すか! 退け!!」
上に乗っかっているイオを振り落とそうと、少年が暴れる。
「こいつはお前らの共犯か?」
「シアーノ様の腰巾着ですよ!」
「シアーノ様の命令ならなんでもやる奴です!」
「どんなあくどい事を平気でやっていたとんでもねー悪党ですぜ!」
「お前ら……あの方を裏切ってどうなるか解っているだろうな!!」
イオに取り抑えられたまま、三人組を睨みつける少年に対し、レイは鋭い眼差しを向ける。
「それは俺の台詞だ」
「なっ、なぜ会長様がここに!?」
ここでようやくレイの存在に気づいた少年が、暴れるのを止めて目を瞠る。
「あのリリアをあそこまで追い詰めたのは、お前らが初めてだ……たっぷり礼をしてやる。光栄に思えよ」
「っ……!」
レイに睨まれた少年は、力が抜けたようにその場に伏した。
「会長様、かっこいいー!」
それを見ていたイオが、目をキラキラさせてレイを見つめた。
「イオ、目を覚ませ。あいつはただのハゲだ」
「ハゲじゃねーって言ってんだろ!! ってか、お前!俺を知らないなんて本当にこの学校の生徒か? 学年とクラスは?」
「一年E組」
「はぁ!? Eだと?」
まさか最下位クラスだとは思っていなかったレイは、顔を顰める。
「Eの落ちこぼれの癖に、俺様に喧嘩売りやがったのか!?」
「先に勘違いだの、不細工だの、失礼な事を言ってきたのは、どちら様ですかぁ!?」
バチバチと火花を散らす二人をみてイオが慌てて仲裁に入る。
「け、喧嘩しないで二人とも! そんな場合じゃないでしょう!?」
「いけねっ! そうだった」
「時間が無いな。俺はこいつらをガーネットの所まで連れて行く。お前らは……そういえば、本当にお前ら何者なんだ?」
「だから言っただろ? 王子様だって」
「蛙みたい顔して何言ってんだか」
「あぁ!?」
「トシキ! 抑えて抑えて!」
またもや喧嘩しそうになる二人の間に入って、イオが必死に宥める。
「……まぁいい。お前らの事まで詮索している時間はねぇしな。けど、テストが終わったら事情を聴きに行くから……逃げるなよ」
レイはそう言うと、実行犯達を連れてイオとトシキの前から去って行った。
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