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第三章 王子改造計画

25、計画変更……なの?

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「コーデリア、入りますわよ」
わたくしはコーデリアの部屋に入ると人払いをしてから寝室のドアをノック致しました。
「……」
「コーデリア?」
コーデリアはベッドに突っ伏して枕に顔を埋めておりました。
「コーデリア、大丈夫よ。先程は色々言ってしまってごめんなさいね。貴女も色々頑張っているのは知っているつもりなの。でも、中々今の状況が厳しく感じてしまったの」
「わ、わかっているの。ごめんなさい、お母様」
そう言って顔を上げたコーデリアは少し涙目でした。
コーデリアに前世の記憶があると知ってからすでに七年が経ちました。
三歳の頃は小さなコーデリアが真理子さんの口調で話す事に違和感を感じていましたが、大きくなるにつれてその違和感は無くなりました。
真理子さん曰く、コーデリアの体に心が引っ張られるそうです。
なので、今では少し大人びた少女という感じで真理子さん自体もあまり意識しなくなりましたの。
そんなコーデリアですが、やはりこれからの事は気になるらしく、何とかシモン王子のハートをゲットすべくとても頑張っていたんですの。
でも、それは中々身を結ばす、コーデリアも気にしていたのに、わたくしったらその事を指摘してしまったんですもの。
母親失格ですわ。
「わたくしの方こそ、ごめんなさいね。ついつい残された時間が気になってしまったの」
「そうよね……。ミアはあと……三年位で登場するのかしら?」
「そうね、物語通りであれはそうなるわね」
わたくしが少し考えて物語の時間軸を考えているとコーデリアが不安そうな顔をしました。
「でも、私は舞台になる学校に行けるのかしら? もう十五歳のお兄様は未だに学校に通われていないのでしょう」
「学校?」
「そうよ。お母様も知っているでしょう? あの物語の舞台は、学校よ!」
わたくしはコーデリアの言葉に血の気が引きました。
そうなのです。学校に行かなければならないのですわ!!
わたくしはレオポルト様や国王夫妻からの話でアーノルドはずっとシモン王子と一緒に、家庭教師の元で勉強すると思い込んでおりましたわ!
「でも、シモン王子も学校には行かずに我が公爵家で勉強するはずですわ!」
「え? そうなの? でも、確かに学校に行かなければミアに会うこともないから物語通りにならないかもしれないわね。もう! お母様、そう言う事はちゃんと教えて!!」
「ごめんなさい! そうよね。コーデリアは学校に行くつもりだったのね」
「物語通りだから……行くと思っていたわ。でも、行かなくても良いのならこれで、シモン王子とミアは出会わなくなるわね!!」
コーデリアはベッドから飛び降りて悩みがなくなったかのように伸びをしました。
「なーんだ。やっぱり物語は変わっているのよ! シモン王子も私も学校に行かないなら物語も始まらないもの! それなら、これからじっくりとシモン王子と仲良くなるわ!!」
わたくしは安心したようなコーデリアに不安を感じながらも、確かに舞台となる学校に行かなければ大丈夫だと思い始めていました。
この世界での学校は然程重要視されていない。
貴族であれば、高位貴族である程学校には行かずに家庭教師で済ます事も多い。
実際わたくしも学校には行かなかったわ。
もちろん、行った方がいろいろな人々と繋がりを持てるし、階級に拘らない友人だってできる。
だから、男の子は家庭教師よりも学校を選ぶ事も多いのは事実だわ。
その方が出世するとも言われているの。
でも、シモン王子にもアーノルドにも出世の必要はないもの。
わたくしはそこまで考えるとうんと頷いて笑顔になった。
「そうね! あの二人は学校に行かないわ。 普通なら十二歳からですもの。国王様も学校を考えているのならお話ししてくださるはずだもの」
わたくしは安心していたのです。
この時までは……。
これから一週間で全ての状況が変わる事件がおきますの……。
これこそが、物語の強制力の恐ろしさを感じましたわ。
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