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第八章 不穏な繋がり
72、ここはどこ?(コーデリア視点)
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「コーデリア」
「……ん?」
私は名前を呼ばれてゆっくりと目を開けた。
「お……にい……さま?」
「静かに。ゆっくりと深呼吸するんだ」
私は思い頭を振って周りを見た。確かミアに呼ばれて街に出て……
「痛!」
私はスーハーと深呼吸を繰り返して脳に酸素を送る。やっと頭がスッキリしてきた。
「お兄様、ここは?」
「拉致られた」
「え?」
「コーデリア、お前が不用意に私から離れたからだぞ」
そういえば、ミアが待ち合わせ場所に来なかったからお兄様を待たせて私は周りを少し探していたんだった。そうしたら突然後ろから何かで口と鼻を押さえられた。
「……すみません」
「ふぅ、まぁいい。体はどうだ? 怪我は?」
私は体を動かそうとして腕と足を縛られていることに気がついた。
「け、怪我はありません。でも、一体どういうことですか?」
「私にもわからん。お前が捕まったからまぁ、着いてきた」
「お兄様、まさかわざと捕まったんですか?!」
「そうだ。お前一人が拉致されるより私と共にいた方が絶対にいいからな」
平然と余裕があるように見えるがお兄様も縛られている。
「あの……ここは?」
「馬車の中だな。何処かはわからないが、王都は出たはずだ。一応暴れてみたのだが降りることは出来なかった」
「え? 大丈夫でしたか?」
「ああ、捕まったのだ。多少抵抗しておかないと犯人どもも安心しないだろう?」
「……はぁ」
お兄様はやはり少し変わっている。いやどちらかと言うと我が家が変わっているのかもしれない。バルターク公爵家の常識は世間の非常時となる場合が多々あるのは学校で学んだ。
「あの、お兄様。これから一体どうすればよろしいのでしょうか?」
「一応母上には連絡をとった。私達の場所が特定できたら知らせる予定だ。もちろん私だけでも対処は可能だが、命の危険がない限り手は出さないつもりだ」
「わかりました。それでは私も大人しくしておりますわ」
お兄様は後ろ手に縛られていたはずの手をスルッと上げると私の頭をよしよしと撫ぜる。
「いい子だ。我らが暴れると後が大変だ。シモン王子にも、連絡が入っているはずだから騎士団が来るのを大人しく待とう」
「はい、あのミアは?」
「いないようだ。彼女ももしかしたら捕まっているかもしれないぞ」
私はミアの強かな性格を思い浮かべて、どちらかというと自ら進んで手伝っている気がした。しかしお兄様はミアに好意を寄せているようだから黙っていないと!
「……そうですねー」
「……」
お兄様から不審の目を向けられた。それでも、気を取り直したのかスルスルと縄を解くと私の手足の拘束も解いてくれた。
「お兄様、一体どうやって?」
「ん? ああ、そうか。お前は母上から魔法を教わらなかったか?」
「魔法? え? お母様?」
「兎に角今は私の言う通りに行動するのだ。いいな?」
なんだか私の知らないことが色々あるのかも知れない。お兄様って優秀だけどそれは特別ではなかったはず。それなのに拉致されてこの余裕。何かがおかしい。更にはお母様? 疑問は尽きないが確かに今は大人しくしておくべきだろう。
私は黙って頷いた。
「お母様はだからあんなにお兄様と一緒に行きなさいと言ったのね」
「そうだね。お前は甘やかされているからね」
言い返そうとした次の瞬間馬車がガクンと揺れて止まる。
「おっと、また縛るよ。緩くしておくから抜けないように気をつけるんだ」
そう言ってお兄様はたった今解いた縄を再び縛ると横になった。
「おい! 起きろ!」
乱暴に肩を揺すられる。
「や、やめてくれ。い、妹に手を出すんじゃない」
か弱く怯えながら震える声を出したお兄様を私は思わず凝視してしまった。
「おいおい。にいちゃん。言葉には気をつけろよ」
男は馬車の中に乗り込んでお兄様をガゴンと蹴る。
「うわぁぁ。やめてくれ。ぼ、暴力は振るわないって言ったじゃないかー」
涙目で体を丸めるお兄様。一体誰? この人?
「情けねえ兄貴で可哀想にな。全く役にたたねえよな」
男は私の方に向き直るとヒョイと荷物のように担いだ。
「きゃーーー。やめて!!」
「うるせぇな。まだ何もしねぇよ。あのお方がまだだからな」
「あのお方?」
「まあいいだろ? おい、お前も着いてこねぇと置いてくぞ」
お兄様が涙を浮かべて痛そうに立ち上がる。手は縛られている。どうやって戻したのだろう?
「お、置いていかないでください」
弱々しいお兄様の姿に男はため息を吐いた。
「全く。陛下の孫がこれじゃあよ。俺は情けないぜ」
私はその言葉を聞いてやっとお爺様のことが頭に浮かぶ。
この人達…‥前王原理主義者だ!
俯いたお兄様の瞳がギラリと光ったのは見なかったことにしよう。
私達は、そうして廃墟のような場所に連れていかれたのだった。
「……ん?」
私は名前を呼ばれてゆっくりと目を開けた。
「お……にい……さま?」
「静かに。ゆっくりと深呼吸するんだ」
私は思い頭を振って周りを見た。確かミアに呼ばれて街に出て……
「痛!」
私はスーハーと深呼吸を繰り返して脳に酸素を送る。やっと頭がスッキリしてきた。
「お兄様、ここは?」
「拉致られた」
「え?」
「コーデリア、お前が不用意に私から離れたからだぞ」
そういえば、ミアが待ち合わせ場所に来なかったからお兄様を待たせて私は周りを少し探していたんだった。そうしたら突然後ろから何かで口と鼻を押さえられた。
「……すみません」
「ふぅ、まぁいい。体はどうだ? 怪我は?」
私は体を動かそうとして腕と足を縛られていることに気がついた。
「け、怪我はありません。でも、一体どういうことですか?」
「私にもわからん。お前が捕まったからまぁ、着いてきた」
「お兄様、まさかわざと捕まったんですか?!」
「そうだ。お前一人が拉致されるより私と共にいた方が絶対にいいからな」
平然と余裕があるように見えるがお兄様も縛られている。
「あの……ここは?」
「馬車の中だな。何処かはわからないが、王都は出たはずだ。一応暴れてみたのだが降りることは出来なかった」
「え? 大丈夫でしたか?」
「ああ、捕まったのだ。多少抵抗しておかないと犯人どもも安心しないだろう?」
「……はぁ」
お兄様はやはり少し変わっている。いやどちらかと言うと我が家が変わっているのかもしれない。バルターク公爵家の常識は世間の非常時となる場合が多々あるのは学校で学んだ。
「あの、お兄様。これから一体どうすればよろしいのでしょうか?」
「一応母上には連絡をとった。私達の場所が特定できたら知らせる予定だ。もちろん私だけでも対処は可能だが、命の危険がない限り手は出さないつもりだ」
「わかりました。それでは私も大人しくしておりますわ」
お兄様は後ろ手に縛られていたはずの手をスルッと上げると私の頭をよしよしと撫ぜる。
「いい子だ。我らが暴れると後が大変だ。シモン王子にも、連絡が入っているはずだから騎士団が来るのを大人しく待とう」
「はい、あのミアは?」
「いないようだ。彼女ももしかしたら捕まっているかもしれないぞ」
私はミアの強かな性格を思い浮かべて、どちらかというと自ら進んで手伝っている気がした。しかしお兄様はミアに好意を寄せているようだから黙っていないと!
「……そうですねー」
「……」
お兄様から不審の目を向けられた。それでも、気を取り直したのかスルスルと縄を解くと私の手足の拘束も解いてくれた。
「お兄様、一体どうやって?」
「ん? ああ、そうか。お前は母上から魔法を教わらなかったか?」
「魔法? え? お母様?」
「兎に角今は私の言う通りに行動するのだ。いいな?」
なんだか私の知らないことが色々あるのかも知れない。お兄様って優秀だけどそれは特別ではなかったはず。それなのに拉致されてこの余裕。何かがおかしい。更にはお母様? 疑問は尽きないが確かに今は大人しくしておくべきだろう。
私は黙って頷いた。
「お母様はだからあんなにお兄様と一緒に行きなさいと言ったのね」
「そうだね。お前は甘やかされているからね」
言い返そうとした次の瞬間馬車がガクンと揺れて止まる。
「おっと、また縛るよ。緩くしておくから抜けないように気をつけるんだ」
そう言ってお兄様はたった今解いた縄を再び縛ると横になった。
「おい! 起きろ!」
乱暴に肩を揺すられる。
「や、やめてくれ。い、妹に手を出すんじゃない」
か弱く怯えながら震える声を出したお兄様を私は思わず凝視してしまった。
「おいおい。にいちゃん。言葉には気をつけろよ」
男は馬車の中に乗り込んでお兄様をガゴンと蹴る。
「うわぁぁ。やめてくれ。ぼ、暴力は振るわないって言ったじゃないかー」
涙目で体を丸めるお兄様。一体誰? この人?
「情けねえ兄貴で可哀想にな。全く役にたたねえよな」
男は私の方に向き直るとヒョイと荷物のように担いだ。
「きゃーーー。やめて!!」
「うるせぇな。まだ何もしねぇよ。あのお方がまだだからな」
「あのお方?」
「まあいいだろ? おい、お前も着いてこねぇと置いてくぞ」
お兄様が涙を浮かべて痛そうに立ち上がる。手は縛られている。どうやって戻したのだろう?
「お、置いていかないでください」
弱々しいお兄様の姿に男はため息を吐いた。
「全く。陛下の孫がこれじゃあよ。俺は情けないぜ」
私はその言葉を聞いてやっとお爺様のことが頭に浮かぶ。
この人達…‥前王原理主義者だ!
俯いたお兄様の瞳がギラリと光ったのは見なかったことにしよう。
私達は、そうして廃墟のような場所に連れていかれたのだった。
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