38 / 65
番外編SS
書籍化お礼SS アラミックの理想
自国に戻ってしばらく経ったある日、アラミックは父と兄と三人でこの国の将来について話していた。
「……という感じで、我が国はもう少し教育に軸足を置くべきです。サーナイン王国では子供は、きちんと守られて勉強できる環境の中にいます」
アラミックはこぶしを握って力説した。
「わかった。わかったから落ち着くのだ。おい、またアラミックのサーナイン贔屓が始まったぞ?」
少し呆れ、少し楽しそうにアラミックの父であるバビリニア王国の国王は笑った。
隣国で事件を起こしたアラミックが帰国したのは少し前で、その時は監獄さえ用意していたのだ。
但し、食えない隣国の使者より、格別の配慮を強く要請された為社会貢献を条件に第二王子の地位はそのままにしていた。
それからアラミックは王国内を飛び回り、終わらない隣国との小競り合いで疲弊した国の復興に力を注いでいた。
そんなアラミックは少しずつ父である国王や王太子である兄の信頼を取り戻しつつある。
ただ困ったことにかなり隣国サーナイン王国にかぶれてしまったのだった。
「本当にアラミックはサーナインに惹かれたのだな。一体何がそんなに素晴らしいのだ?」
王太子である兄も楽しそうに話し出す。
今までは会えば嫌味を言い、お互いに批判ばかりを繰り返した兄弟とは思えなかった。
「そうですね。やはり、盲目であっても明るく楽しそうに生活できる国であること……ですかね」
「ん?」
「我が国はハンディをおった子供など捨て置いておいたではありませんか? それでは多様性は、生まれないのです。目が見えなくとも大切に育ててその感性から生まれる理想にもきちんと耳を傾けるべきなのです」
「あ、ああ」
「目が見えなくとも、美しく、優しく、聡明で、度胸もある。そんな女性も存在するのです!!」
「……」
父と兄はアラミックを見て、微妙な顔を見合わせた。
「それに! そんな女性は誰からも大切に尊重されなければならないのです!」
アラミックは天を仰いで拳を握る。
「そ、そうか……。それより、アラミックの婚約についてなんだか……」
父が気を取り直して、最近の懸案事項についてを語り出す。
アラミックが数年振りに帰国したことで、有力な貴族から婚約の打診が後を立たないのだ。
しかも、反目しあっていた父や兄と仲直りしたと聞いて、その数は数倍に膨れ上がっていた。
「婚約ですか?」
「ああ、そなたもいい年だ。そろそろ婚約者くらい作ってもよかろう?」
「はぁ」
気乗りしなそうなアラミックに兄である王太子が付け加える。
「アラミックの理想の女性像はあるのか?」
「理想の……女性」
アラミックの脳裏には隣国で出会った盲目の美しい少女の顔が想い浮かぶ。
「そ、そうですね。優しく、聡明で、人を思いやれる。楽しそうに笑える。更に美しくて……髪はプラチナブロンドで、目が見えない……」
始めはフンフンと聞いていた父と兄は途中から首を捻り、最後にはお互いに顔を見合わせた。
アラミックは隣国で考え方だけではなく、心まで奪われてきてしまったらしい。
これでは婚約など暫くは無理そうに見える。
父はため息を吐いてから、アラミックに告げた。
「アラミック、今すぐとは言わないが、もう少し落ち着いたら……そうだな。小競り合いをしていたウオレイク王国との和平が決まったら、また、サーナイン王国に行ってみるといい」
「え? 良いんですか?」
「ああ、今度こそ身分を偽らずバビリニア第二王子として、しっかり学んできなさい」
「はい! ありがとうございます!」
明るく返事をしたアラミックに父は心で付け加える。
(そして、噂の公爵令嬢にきちんとけじめをつけるのだ)
それをしなければ、婚約など出来ないし、相手にも失礼だと考えていた。
戦争と王位争い、そして、他国でのスパイ活動。それがアラミックがいた世界だった。この偏った世界では恋だの愛だのは存在しなかった。
そのことが自分の初恋さえ気づかない男にしてしまったと父や兄はアラミックを不憫に思う。
しかし、もう一度きちんと向き合うことで初恋に気づき、恋を終わらせてくる事を心の底から祈ったのだった。
「……という感じで、我が国はもう少し教育に軸足を置くべきです。サーナイン王国では子供は、きちんと守られて勉強できる環境の中にいます」
アラミックはこぶしを握って力説した。
「わかった。わかったから落ち着くのだ。おい、またアラミックのサーナイン贔屓が始まったぞ?」
少し呆れ、少し楽しそうにアラミックの父であるバビリニア王国の国王は笑った。
隣国で事件を起こしたアラミックが帰国したのは少し前で、その時は監獄さえ用意していたのだ。
但し、食えない隣国の使者より、格別の配慮を強く要請された為社会貢献を条件に第二王子の地位はそのままにしていた。
それからアラミックは王国内を飛び回り、終わらない隣国との小競り合いで疲弊した国の復興に力を注いでいた。
そんなアラミックは少しずつ父である国王や王太子である兄の信頼を取り戻しつつある。
ただ困ったことにかなり隣国サーナイン王国にかぶれてしまったのだった。
「本当にアラミックはサーナインに惹かれたのだな。一体何がそんなに素晴らしいのだ?」
王太子である兄も楽しそうに話し出す。
今までは会えば嫌味を言い、お互いに批判ばかりを繰り返した兄弟とは思えなかった。
「そうですね。やはり、盲目であっても明るく楽しそうに生活できる国であること……ですかね」
「ん?」
「我が国はハンディをおった子供など捨て置いておいたではありませんか? それでは多様性は、生まれないのです。目が見えなくとも大切に育ててその感性から生まれる理想にもきちんと耳を傾けるべきなのです」
「あ、ああ」
「目が見えなくとも、美しく、優しく、聡明で、度胸もある。そんな女性も存在するのです!!」
「……」
父と兄はアラミックを見て、微妙な顔を見合わせた。
「それに! そんな女性は誰からも大切に尊重されなければならないのです!」
アラミックは天を仰いで拳を握る。
「そ、そうか……。それより、アラミックの婚約についてなんだか……」
父が気を取り直して、最近の懸案事項についてを語り出す。
アラミックが数年振りに帰国したことで、有力な貴族から婚約の打診が後を立たないのだ。
しかも、反目しあっていた父や兄と仲直りしたと聞いて、その数は数倍に膨れ上がっていた。
「婚約ですか?」
「ああ、そなたもいい年だ。そろそろ婚約者くらい作ってもよかろう?」
「はぁ」
気乗りしなそうなアラミックに兄である王太子が付け加える。
「アラミックの理想の女性像はあるのか?」
「理想の……女性」
アラミックの脳裏には隣国で出会った盲目の美しい少女の顔が想い浮かぶ。
「そ、そうですね。優しく、聡明で、人を思いやれる。楽しそうに笑える。更に美しくて……髪はプラチナブロンドで、目が見えない……」
始めはフンフンと聞いていた父と兄は途中から首を捻り、最後にはお互いに顔を見合わせた。
アラミックは隣国で考え方だけではなく、心まで奪われてきてしまったらしい。
これでは婚約など暫くは無理そうに見える。
父はため息を吐いてから、アラミックに告げた。
「アラミック、今すぐとは言わないが、もう少し落ち着いたら……そうだな。小競り合いをしていたウオレイク王国との和平が決まったら、また、サーナイン王国に行ってみるといい」
「え? 良いんですか?」
「ああ、今度こそ身分を偽らずバビリニア第二王子として、しっかり学んできなさい」
「はい! ありがとうございます!」
明るく返事をしたアラミックに父は心で付け加える。
(そして、噂の公爵令嬢にきちんとけじめをつけるのだ)
それをしなければ、婚約など出来ないし、相手にも失礼だと考えていた。
戦争と王位争い、そして、他国でのスパイ活動。それがアラミックがいた世界だった。この偏った世界では恋だの愛だのは存在しなかった。
そのことが自分の初恋さえ気づかない男にしてしまったと父や兄はアラミックを不憫に思う。
しかし、もう一度きちんと向き合うことで初恋に気づき、恋を終わらせてくる事を心の底から祈ったのだった。
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。
もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。