音の魔術師 ――唯一無二のユニーク魔術で、異世界成り上がり無双――

ふぁいぶ

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第二百二十話 ログナイト VS レイ 終結

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 おいおい、あいつらガチで殺し合ってるじゃねぇか……。
 お互いの攻撃に手加減なんて一切感じない。暴風のように吹き荒れる殺気とプレッシャーは、武の心得がある人間にとってはとてつもなく居心地が悪い空間になっていた。
 俺だって息苦しくて、正直さっさと終わってほしい位だ。
 
 さて、俺視点で現状を見てみようか。
 はっきり言ってしまえば、現状互角だ。
 剣の純粋な腕は、数段ログナイトのじいさんが上にいる。実力差はあるが、レイは《ゴッドスピード》の連続使用による奇襲の連発で、その差を埋めている。
 しかし問題は《ゴッドスピード》の魔力消費が激しい点にある。
 恐らくレイは全身気だるくなってきているんじゃないかな、魔力が不足してきているから。
 それでもポーカーフェイスで隠して、相手に悟られないようにしているんだと思う。
 となると、そろそろトドメを決めにいく筈。
 今レイは《ミラージュ》で幻影を三体出し、じいさんは《ウインドバースト》を詠唱短縮で発動してレイの幻影を打ち消した。
 なるほど、よくレイが俺との試合でやってくるパターンだ。ならば、レイはまだ実体化していない。

(じいさんの頭上で実体化して、そのまま斬りかかるつもりだ!)

 あれを避けられる奴は、早々いない。
 万が一があるな。
 俺も動けるようにしておこう。

「ライジェル、俺に《ブースト》を掛けてくれ」

「うん? まさかお前、あの二人の間に入るのか!?」

「そろそろ止めないと、冗談じゃ済まなくなるからな」

「待つんだハル! 二人の間に入る事自体がお前自身が冗談じゃ済まなくなるぞ!」

「大丈夫、成せばなるさ」

「……」

 何か思うところはあるみたいだが、渋々俺に《ブースト》を掛けてくれた。
 魔法の効果で、俺の体が軽くなったような感覚がある。
 よし、これなら大丈夫。

「リリル、アーリア。ちょっくらあいつら止めてくる。もし俺が怪我したらすぐ回復出来るようにしておいてくれ」

「うん、わかった。気を付けてね?」

「畏まりましたわ。いってらっしゃいませ」

「ああ、いってくる!」

 俺は《赤の名剣レヴィーア》と《青の名剣リフィーア》を鞘から抜いて、席から飛び出した。
《ブースト》のおかげで席から弾丸のように飛び出せたから、殺し合いをしている二人に後五十メートル程まで距離を詰められた。
 だが一足遅く、すでにレイはログナイトのじいさんの頭上で実体化して、斬りかかっていた。

 やべぇ!

 そう思ったが、じいさんは気付いていたらしく、ギリギリ回避に成功しレイの腹に拳をぶつける。

「がふっ!?」

 レイはそのまま吹き飛ばされたが、空中で体勢を整えて何とか着地する。
 そして剣を構えてまたログナイトのじいさんに迫る。

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 じいさんも大剣を頭上に掲げ、レイを迎え撃とうとしていた。
 恐らく振り下ろし!

「きえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

 ちっ、二人共あれでトドメを刺そうとしていやがる。
 仕方無い、ここしか止められるタイミングはなさそうだし、やってやるか!
 俺は地面を全力で蹴って、二人の間に割って入った。

「ハル!?」

「坊主!?」

 レイの刺突を右手の《赤の名剣レヴィーア》の剣の腹で受け止め、じいさんの振り下ろしは左手の《青の名剣リフィーア》で一瞬受け止め、しかし剣を斜め下に構えて剣の軌道を地面にずらした。所謂受け流しだ。
 俺は何とか、二人の攻撃を同時に防ぐ事に成功したんだ。

「おい、お前ら。ガチでやりすぎだっての!」

 二本の剣を鞘に仕舞った後、レイとじいさんの頭に拳骨を落とした。
 あっ、レイは軽めに、じいさんには全力の拳骨を見舞ったけどな!









 ――ライジェル・グローリィの手記――

 俺はあの瞬間、震えた。
 武を極めんと鍛練をする者にとって、あの光景は驚愕の一言では済まないからだ。
 そもそもハルは、片手剣をそれぞれの手に持ち、左右代わりなく二本を同時に扱える二刀流の使い手。
 真似事なら誰でも出来るが、二本を同時に扱う難しさと敷居の高さは剣を持った人間は誰でも知っている。
 まずその時点でも驚愕すべきなのだが、まさか二人の攻撃を同時に捌くとは……。
 レイ嬢の剣は速さや鋭さを重視した剣。対してログナイト卿は力で全てをねじ伏せる剛剣。
 レイ嬢の剣はそこまで重い一撃ではないので受け止めるのは分かる。だがログナイト卿の剛剣は、片手で捌くのは無茶に等しいのだ。だがハルは手首を柔らかくし、勢いを殺さずに受け流してしまったのだ。
 両手でやるのであれば、辛うじて出来るだろう。だがハルは片手でそれぞれの攻撃を防いだのだ。
 こんな事、そう簡単に出来る技ではない。

 俺は驚愕のあまり、その場に立ち上がって放心してしまった。
 それほどまでに衝撃が大きかった。
 そして同時に思った。ハルは、剣の極地に近い位置にいるのではないか、と。
 現状の俺だと、間違いなくハルには勝てない。悔しいがそれが現実だ。
 
 そういえば以前、俺の妻が言っていた。

「ハル・ウィードは傑物なんて枠に収まる才能ではないわ。国という単位で縛れる存在ではないと私は思うわ」

 妻は相当な自信家だが、奴には敵わないと言っていた。
 そして妻がここまで他人を褒めるのは非常に珍しいのだ。
 だが、俺も同意する。
 何れ奴は、レミアリアを飛び出して、世界でその名を知らしめる存在になるだろう。
 本当、俺は凄い奴と縁を作れたと思う。

 妻は「ライジェル、絶対ハル卿とは末永く仲良くして頂戴」と言っていたが、当然俺はそのつもりだ。
 何故なら、越えるべき目標が出来たのだから。
 ハルは友達だが、それ以上に俺のライバルだ。
 まぁそう思っているのは俺だけだろうが。
 それでもいい。ハルが世界に飛び出る前に、俺はあいつに対して何かしらの楔を入れてやりたいと思う。
 
 俺には剣しか取り柄がない。
 その剣ではせめてあいつと同等まで持っていかなければ、真の友達とは言えないような気がしてならない。
 明日からは鍛練の量を増やそう。
 そしてあの若き剣豪に俺は追い付いてやろうじゃないか!
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