音の魔術師 ――唯一無二のユニーク魔術で、異世界成り上がり無双――

ふぁいぶ

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第二百十九話 ログナイト VS レイ 本気の死合い

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 ――レイ視点――

 さっきの一合で、どうやらログナイト卿は本気を出したようだね。
 彼から伝わる殺気が全身を突き刺していて、冷や汗が止まらないよ。
 でも、僕はそれを望んでいるんだ。
 目の前にいるのは、真の猛者だからね。僕の戦い方が本当に通用するのかを試してみたいんだ。
 こんな機会は滅多にないから、非常に心が踊っている。

(でもなぁ、多分これ、下手すると死んじゃうかも……)

 正直まだ死にたくないんだ。
 だって、ハルとの子供を授かってもいないし、そもそも結婚したばかりだし!
 新婚なんだから、もっとハルとイチャイチャしたいし、夫婦らしい事も沢山したい。
 だから死ぬ訳にはいかないんだけど、この屈強な老人を倒すにはそれなりの覚悟は必要かもしれないね。

 さてさて、お相手は大剣だけど片手で軽々扱えちゃう程の馬鹿力の持ち主。
 だけどどう考えても小回りが効く動きは出来ない筈。
 その分僕の剣は、細身だから小回りも効くし素早い攻撃を繰り出せる。代わりに一撃で仕留める攻撃は苦手としてるけどね。
 ならば僕の攻撃は、相手に攻撃の隙を与えない連続攻撃メインだ!

「《ゴッドスピード》!」

 僕は詠唱を短縮して自分の身体を光の粒子に変換する。
 光速でログナイト卿の目の前まで移動した瞬間、実体化して瞬時に斬りかかる。

「ぬおっ!?」

 流石ログナイト卿。
 完全に不意討ちだったにも関わらず反応して、大剣をまるで盾のようにして僕の斬撃を防いだ。
 普通ならもうこの一手で終わっている筈なのだけど、流石の一言しか出ない。
 でもこちらもそれは想定内。
 僕は攻める手を一切緩めない。

「ふっ!」

 細身の剣の最大の攻撃は、斬撃ではなくて刺突にある。
 剣が細いと軽すぎて骨を断つのも難しい。逆に刺突だと骨を貫く事が出来るんだ。
 だから僕は、短く息を吐いて突きの乱撃を放つ。
 密かに名付けたこの技術は《乱れ雨》だね。
 無数に降り注ぐ雨を正確に回避出来る人間は、この世で一人もいない。
 この乱撃は、相手に防戦一方にする為の技なんだ。

 無数の刺突がログナイト卿を捉える。
 しかしこれも大剣を盾にして、丁寧に防がれてしまう。
 互いの刀身がぶつかり合う音が、細かく鳴り響く。
 
 僕は防がれても手を緩めない。
 あらゆる急所という急所を、正確に突く。
 この技は結構体力勝負だ。永遠に鋭い突きを放ち続けるのは女の僕には不可能だ。
 でも、相手も同じ筈。
 この攻撃を防ぐ為に正確無比な剣捌きを行うのに、相当な集中力を使う。
 それに攻撃をしっかり目で把握しないといけないから、ログナイト卿の疲労は僕より倍はある筈なんだ。
 
「ぬ、ぬぅっ……」

 辛そうな呻き声が聞こえる。
 もう少し、もう少しで決定的な隙が生まれる!
 だから僕の体力よ、もう少しもってくれ!

 すると、僕の攻撃を防いだ瞬間、少しだけログナイト卿の体幹がぶれた。
 チャンスだ!

「はっ!!」

 僕は眉間目掛けて渾身の突きを放つ。
 その体勢なら避けられない。
 しかし、ログナイト卿は、嗤った。

(ちっ、誘われたか)

 呻き声と体幹がぶれたのは全て演技だったんだ。
 僕の渾身の突きに合わせて、お互いの剣同士がぶつかった瞬間、自分の剣で僕の突きを弾いた。
 彼の豪腕で強引に僕の攻撃を上に弾いたんだ。
 弾かれた剣ごと僕の右腕は上に持っていかれ、右脇腹ががら空きになってしまった。
 そう、そこを斬れば真っ二つに出来ると言わんばかりに。

「きぃええぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

 ログナイト卿の奇声と共に、大剣の刃が僕の脇腹に迫る。
 間違いない、僕を殺すつもりだ。
 まぁ、予想通りなんだけどね。

 大剣の刃が僕に触れる直前に、僕は自分の身体を光の粒子に変換する。
 ログナイト卿の斬撃は、思いっきり空を切ってしまった。

「ちっ、またそれかいな!」

 申し訳御座いませんね、ログナイト卿。
 僕達ウィード家の人間は、使えるものは全て活用するというのがモットーなので。
 では、ちょっとした手品を披露しようかな。

「幻影よ、敵を惑わせ。詠唱完了、《ミラージュ》!」

《ミラージュ》。
 光属性魔法の中級にあたるもので、光の屈折によって自分の姿を本物と変わらない状態で出せる。
 通常なら一体だけしか出せないけど、僕は鍛練したお陰で――

「《ミラージュ》が複数とな!?」

 ログナイト卿が驚いているように、一回の詠唱で三体まで出せるようになったんだ。
 三体の幻影は、彼を囲むように配置している。
 そして三体共剣先を刺すべき相手に向けていた。
 
 幻影達がログナイト卿に向けて剣を突き出す。
 が、ログナイト卿もそれで終わらなかった。

「鬱陶しいわ!! 吹き飛べ《ウインドバースト》!!」

 これは、中級にあたる風属性魔法。
 術者を中心にして、風による衝撃波を放つ魔法だ。
 衝撃波によって大気は歪み、幻影達は姿を保っていられなくなり消滅してしまう。

「本物はいない!?」

 ああ、恐らく三体の幻影の中に本体である僕が紛れ込んでいると思ったんだろう。
 でも残念、僕はまだ光の粒子の状態のまま、貴方の頭上に浮いている。
 しかしそろそろ元に戻らないと、僕は二度と人間に戻れなくなってしまう。
 では、そろそろ戻るとしよう。

 僕はログナイト卿の頭上で瞬時に実体に戻り、そのまま剣を振り下ろす。
 これで終わりだ!
 僕は勝利を確信した。
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