音の魔術師 ――唯一無二のユニーク魔術で、異世界成り上がり無双――

ふぁいぶ

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第九十一話 俺VS父さん 中編

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 俺は《ミュージックプレイヤー》を発動させて、音楽を流し始めた。
 出始めはやはり激しい曲だろう!
 今再生している曲は、《ナイトウィッシュ》の《エンド・オブ・オール・ホープ》だ。
 この曲はまだボーカルが《ターヤ・トゥルネン》の時代だった頃のもので、彼女はソプラノ歌手だった。
 ただし、この《ナイトウィッシュ》の面白い所は、オペラ調の歌に世界観を合わせるようにゴシック調の曲調にしている。
 神秘的且つ、歌詞は破滅的な雰囲気を漂わせる。そんな彼らのジャンルは《シンフォニック・メタル》と呼ばれており、直訳すると《交響的なメタル》である。それほどまでに、水と油であったろうオペラ調の歌声とメタルが、見事にマッチしたバンドだ。
 曲のタイトルの和訳は、《全ての希望の終わり》だ。
 つまり、俺が父さんとの戦いに負けたら、まさにそのタイトル通りになってしまう。

 負ける訳には、いかねぇぇぇぇぇっ!!

「おおおおおおおおおおおおおっ!!」

 俺は両方の剣を頭上から振り下ろした。もちろん、手加減なしの全力だ。
 ただの力業だが、受け流しを得意とする父さんの剣技とは実は相性が悪い。
 理由としては、単純な力は受け流しすらも無効にしてしまうからだ。

「ちっ」

 父さんは舌打ちをして、身体を半身にしてすれすれで回避する。
 最小限の動作で、一番反撃しやすい体勢で父さんは回避するんだ。
 そして間髪入れずに父さんが反撃してくるが、俺は右手に持っている赤色の刀身であるレヴィーアで受け止める。
 ただし、受け止めた瞬間に、父さんの首目掛けて青色の刀身を持つリフィーアを水平に振る。
 父さんは左手がない。この攻防一体の攻撃をどうやって捌く?
 恐らく後方へバックステップするだろうから、俺はそれを追い掛ける。

 そう読んでいたのだが、父さんは違った。
 俺の腹にヤクザキックをしてきたんだ。
 当然想定と違う行動に、俺は回避出来ずにモロに入ってしまった。

「ぐっ!?」

 しかし日頃身体を鍛えていたからだろう、思った以上に痛みはなかったものの、俺の攻撃は中断されて蹴りの衝撃によって後ろへ数歩後退りしてしまう。
 すると父さんは隙を突いて、自身の剣を地面に突き刺して空いた右手をコートの中に突っ込んだ。
 ヤバイ、何か魔道具を使ってくる!
 俺は一瞬で俺の半径百メートル範囲にサウンドボールを百個程ばらまき、《サウンドマイク》を発動した。
 基本的に魔道具は音声発動式。余裕があれば《詠唱殺し》をやればいいが、今からじゃ間に合わずに起動させてしまう。
 だから俺は咄嗟に父さんの声を拾って、魔道具の種類を判別しようとした。

「魔道具、即発動。《フラッシュグレネード》!」

 フラッシュグレネード!?
 しかも即発動かよ!!
 俺は瞬時に目を瞑った。
 だが、強い光は発動しない。
 すると、《サウンドマイク》が風を切る何かの音を察知した。まるで何かを投げたような音だ。

(まさか、俺の《サウンドマイク》を逆手に取った、フェイク!?)

 俺は急いで目を開くと、父さんから投擲されたであろう投げナイフが、後五十センチで俺の眉間に突き刺さる距離まで来ていた。
 やられた!!
 俺は咄嗟に身体を左に傾けてギリギリ回避に成功。俺の頬をナイフが掠め、赤い筋を作った。
《サウンドマイク》は父さんに全て知られている。しかも気配を感覚で読む事が出来ない俺は、《サウンドマイク》で拾った音で状況判断をするしかない。つまり俺はこの魔法に頼りっきりなんだ。
 くそっ、手の内を知られるってのは、本当に厄介だぜ。

「とりあえず、最初の一手は俺の勝ちだな、ハル」

「はっ、一手だけ勝っただけで喜んでるんじゃねぇよ、父さん!」

 でも、してやられたから悔しいぜ。
 まぁもちろん、やり返すけどな。
 今の曲は激しい為、俺の攻撃も獰猛だ。
 やっぱりメタルは気分を高揚させるぜ!

 俺は父さんとの距離を詰めて、力の限り剣を振るう。
 時には両方の剣で同時に攻撃を仕掛けたり、片方を振った直後に別の角度からもう片方で斬撃を繰り出したり。
 父さんとの特訓でも二刀流は見せなかった為か、非常にやりにくそうな表情をしている。
 歴史上誰も二刀流の領域に到達出来なかったから、前知識もない初見だ。俺の攻撃を捌くのが精一杯といった表情だ。
 すると、父さんの左耳の近くに、一個のサウンドボールが浮遊していた。
 チャンス!
 俺はそのサウンドボールに視線をくれる。
 どうやら父さんは、俺の視線の移動で近くにサウンドボールがある事を察知したのだろう。俺の視線から遠ざかろうと右へ飛ぼうとするが、もう遅い!
 父さんの左耳付近で浮遊していたサウンドボールは、銃の発砲音を再生した。
 耳近くで鳴らされた爆音は、父さんの鼓膜にダメージを与えたようだ。

「ぐぅっ!?」

「隙あり!!」

 俺はレヴィーアで腹部目掛けて鋭い突きを放つ。
 父さんは当然、突然の爆音をモロに受けてしまって体勢を大きく崩しているから、回避行動は取れないはず。
 だが、やはり父さんは一筋縄ではいかない。
 父さんは、俺の突きが入る前に身体を回転させ、その力を利用して右膝で水平に薙ぐようにレヴィーアの刀身を蹴った。
 この膝蹴りで突きの軌道を大きく変えられてしまい、突きは不発に終わる。
 だが俺にはまだリフィーアの攻撃が残っている!
 
「ふっ!」

 俺は短く息を吐き、リフィーアで父さんの首を水平に斬ろうとした。
 だが父さんは回転膝蹴りで勢い余った回転力を利用して身体を一回転させ、回転に逆らわないように水平に剣を薙いできた!
 マジかよ、三半規管を刺激しているはずだから、平衡感覚もしばらく麻痺しているはずだぞ?
 俺はリフィーアでの攻撃を中断し、父さんの攻撃を受け止めた。
 くっ、さすがに十歳の身体じゃ、大人の攻撃を片手で受け止めきるのは辛い。リフィーアを握る左手は軽く痺れ、左手首に軽い痛みが走る。
 だが俺もその程度では止まらない。
 右手のレヴィーアで、父さんの眉間目掛けて突きを放った。
 流石に焦ったのか、父さんは首を右に傾げてギリギリ回避。しかし父さんの左頬を刃が掠めたようで、赤い筋を作った。

「お返しだぜ?」

「ちっ、二刀流ってのは、本気で厄介だな」

「だろ? 俺の自慢の剣技だ」

「ああ、大したもんだよ、ハル。だから、尚更勝ちたくなった!!」

 父さんの、剣士としての闘争本能に火が付いたようで、目がギラついている。
 わかるよ、父さん。
 俺も、父さんを越えたい!
 あんな口だけの《武力派》の連中より、数百倍も強い父さんを俺は、絶対に越える!

「いいや、俺が勝つ!!」

「ふふ、まさか息子であるハルが、最高の相手になるとはなっ!」

「へへっ、父さんの息子であり、天才だからなっ!!」

「調子に乗りすぎ、だぞ!」

「戦いは、少し余裕があった方がいいだろ!?」

「ふ、違いない!!」

 俺達は会話をしつつ、激しく攻撃をし合う。
 もうそれなりの時間斬り合っているが、まだマトモな有効打は互いに入れられていない。
 このまま拮抗状態が続くと、体力面で俺が圧倒的に不利だ。
 何か、何か打開策がないと俺は負けてしまう。

 俺は攻撃をしつつ、父さんに勝つ一手を思考していた。
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