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第百五十二話 愛しの三人との食事
しおりを挟むひっさびさにダラダラと惰眠を貪ったわぁ……。
故郷の村を離れて王都に来てから、オフの日でも何だかんだで何かしらやっていたからなぁ。
部屋の窓から見たら、外はもう真っ暗。俺の腹も空腹を訴え続けているし、時間はすでに夜の八時だった。
何か腹に入れようとベッドから起き上がった瞬間、俺の部屋の扉をノックする音が聞こえた。
「ん? はい」
あくびを我慢しながら、ノックに対して応える。
するとゆっくりと扉が開いて、その隙間から顔を覗かせる人がいた。
リリルだ。
「ハル君、起こしちゃった?」
「いや、ちょうど起きた感じだ。どうした?」
「うん、夕御飯の準備が出来たから、呼びに来たの」
「おっ、いいタイミング! ありがとう、すぐに向かうよ」
「うん!」
そういえば、この街に来てからレイ、リリル、アーリアと食事を共にしてなかったりする。
王様――あぁ、親父と王太子である兄貴と真面目な話をしながら食事したり、各部隊長との会合だったりで、普通の食事は取れてなかった。
だから今日は、純粋に三人の愛しい女の子と飯を食う事が出来る!
これだよこれ、やっぱり堅苦しい食事より、好きな子や友達と飯を食えた方がいいって!
俺は部屋から飛び出し、階段を駆け降りる。
そしてただ無駄に広い玄関兼待合室をさっさと通り抜け、食事をする部屋へ向かう。
扉も無駄に豪華な作りになってて、無駄に重い。でも向こうには大事な女の子達がいると思うと、どうって事はない!
取っ手を持って扉を体重を掛けて引くと、さらに無駄に広くて金と銀で埋め尽くされた無駄に贅沢な部屋が広がっていた。
広さ的には約三十畳だろうか。壁一面は金箔で敷き詰められていて、銀で出来た壺や皿等がこれでもかって位飾られている。
ちなみに机も王族の皆さんが使っている位に横に伸びてて、一緒に食事をしている気にならないから、速攻で片して実家で使われている木製の真四角の机を用意してもらった。これ位の素朴な感じがいいんだって。
そんな机にすでに三人が座っていた。
「やっと起きたね、ハル」
「おそようだね、ハル君」
「ゆっくり休めましたか、ハル様?」
レイ、リリル、アーリアが柔らかい笑顔で出迎えてくれた。
ああ、嬉しいな、こういうの。
結婚したら、毎日こういう光景を味わえるんだなぁ。
こりゃ頑張って、早めに貴族にならないとな!
「わりっ、思ってたより疲れてたみたいでぐっすりだったわ。ってかアーリア、お前は城に戻らなくていいのか?」
「はい! お父様がハル様の邪魔にならないようにする事を条件に、後十日間一緒にいてもいいとの許可を頂きました」
「そっか、なら安心かな」
俺の席は所謂お誕生日席。そこに座って机を見る。
おおっ、最近までめっちゃ豪勢な料理しか食ってなかったけど、用意されているのは懐かしい庶民的な食事ばかりだった!
木製の皿に山盛りになっている鶏の唐揚げに豚肉の生姜焼きに似たような料理等、机一杯に用意されている!
この世界には米がないから、半分に切った食パンが白い皿に乗せてある感じだった。
意外と慣れちゃうと、そこまで米に執着しなくなったんだよね。
しっかし、すっげぇ美味そう!!
「これ、リリルが作ったんだよ。この二年間、本当の花嫁修行をしていたんだよ、リリルは」
「えっ、前は料理一切出来なかったのに!? すげぇじゃん!」
「えへへ、ハル君に食べて欲しいから、頑張ったの」
俺がまだ村にいた時、包丁で何度教えても指を切りそうだったから、ついには料理禁止命令が下されて落ち込んでいたんだよな、リリル。
まぁリリルのご両親がその命令を下したんだけど、本当に英断だったと思う。
そんなリリルが、こんな美味そうな料理を作れるようになったなんて……おじちゃん、ちょっと感動しちまったわ。
「それじゃ、いただきます!」
「「「いただきます」」」
このいただきますの習慣は、前世と一緒だったのは本当に偶然みたいだ。
百年前までは神に祈りを捧げてから食う形だったけど、いつの間にかこういう形になったのだとか。
さて、まずは唐揚げを食べますか!
流石に出来立てを一口では無理だから、歯で適量に小さくして噛み千切り、咀嚼する。
肉汁がじわっと口の中に広がり、旨みが俺の舌を刺激した!
つまりだ。
「うっわ、すっげぇ美味い!」
もうこの一言で十分だろ!
本当に旨くて、口の中を火傷しそうだったけど、バクバクと唐揚げを貪る。
もちろん生姜焼きにも手を付ける。
もうね、本当に美味かったら美味いしか言えなくなるわ!
そんな俺の様子を見て、リリルは嬉しそうな笑顔を見せてくれた。
「ハル君はこれから、色々お仕事が大変になると思うから、私がしっかり栄養管理するね?」
「うん、うん!!」
俺は食うのに夢中で、適当に相槌を打った。
応える時間すら惜しい位、夢中だったんだ。
「アーリア、僕達も料理覚えた方がよくないかい?」
「……ええ、あんなハル様が見れるのであれば、是非覚えたいですわ」
レイとアーリアがそんな事を言っていたが、俺は気にせず料理を食べる。
王都では基本的に俺自身で飯を作るか外食するかだったんだけど、やっぱりこういう好きな子の手作りは美味さが格別である!
やっと興奮が落ち着いた俺は、皆と話ながら食事を取った。
今日はどういう事をしたのかとか、こんな出来事があったとか、そんな他愛のない話。
でも、最近までお偉いさんと政治的な話しかしていなかった俺からしたら、彼女達から聞ける話がとても楽しくて、ちょっと食の進み具合は普段より遅くなってしまった。それでも彼女達と最近は一緒に過ごせなかったから、この時間は本気で尊いと思う。
そして、全員が食べ終わり、楽しい楽しい食事は終了となる。
一応明日やる事を確認しないとなぁ、と思っていた時、不意にレイから声を掛けられた。
「ハル、この後忙しいかい?」
「ん? ん~、そこまで重要じゃないが……。どうかしたか?」
「うん、もしよかったらなんだけどさ、僕達三人に一人ずつ一時間程時間を貰えないかな?」
「ん? どういう事?」
「まぁ、その、暫くハルとじっくり話せなかったからさ、僕達にハルと二人きりになる時間が欲しいな、って」
レイがちょっと頬を染めて、恥ずかしそうに言った。
そうだよなぁ、本当に俺は最近、忙しさにかまけてレイ達と全然話せていなかったな。
明日もライブがあるから、予定を確認するのは重要な事なんだけど、今はこの三人を優先したい。心からそう思ったんだ。
「ああ。俺もお前達と過ごしたかったし、全然いいさ!」
「ありがとう、ハル。じゃあ最初の一時間は僕とだよ」
「その次に私でお願いね、ハル君」
「最後はわたくしですわ、ハル様」
満面の笑みで自分達の順番を主張する三人。
どうやって順番を決めたのか気になるが、今は聞かないでおこう。
聞く時間すら勿体ない。
「じゃあ僕達は、自分の部屋で待ってるから。なるべく早めに来てよね、ハル?」
「ああ、すぐに行くさ」
三人はそれぞれの部屋に戻っていく。
俺はその姿が見えなくなるまで、椅子に座ったまま見送った。
さて、これから愛しの三人と、それぞれ二人きりの時間になる。
きっと久々にイチャイチャ出来るんだろうなぁ!
もうさ、今からでもちょっと興奮してくるんですけど!
俺の理性、マジ持つかなぁ……。
もう押し倒しちゃってもいいような気がするけど、結婚するまでは純白を守れってそれぞれの親御さんから言われているしなぁ。
「頑張れ、俺の理性! 頑張れ、俺の意思!!」
口に出して自分自身に言い聞かせたが、どうしても絶対的な自信が生まれなかった。
大丈夫かなぁ、俺……。
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