ワールドトークRPG!

しろやぎ

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二部

177 古代龍の強さ

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「みんな! 大丈夫か!?」
「メテオ!! リーズンが、イーフリートが……!」

 俺がみんなのところに《転移/テレポート》で駆けつけたら、血の涙を流したリーズンをハムとアーティアが囲んでいるところだった。
 なんでリーズンがここにいるかは後だ!!

「どうしたんだリーズン!! 血の涙とか――《快癒/リフレッシュ》」

 身体の欠損以外はたいてい治す、万能の回復魔法。《快癒/リフレッシュ》をリーズンに使っておく。ダメージのほか毒や感覚障害も一気に治せるが、精神消費が大きい魔法だが、俺だったら問題はない。

「メテオ……お前なら感じるか? イーフリートの。炎の精霊王の気配を――」

 リーズンが蒼白な顔をして白く細い指を俺に差し出した。
 そこには精霊があちらの世界からこちらの世界に出てくるための扉になる、精霊との契約の指輪があった。
 精霊の気配は少し気を張れば感知できるが、この指輪からは悲しいくらいに何も感じない。

「いや……何も。どうしたんだ? イーフリートはこの世界で消えたとしても、精霊界に還るだけだろ?」
「いつもならな……いつもだったら消えたところで、この指輪から気配が消えることはなかった。なんであいつは俺に勝手に行動して――しかもあんな魔法。見たこともない」

 さっきの閃光と衝撃波はイーフリートの魔法だったのか? いや、リーズンの言葉が正しければ勝手に行動したって話だ。
 いくらイーフリートといっても、精霊使いがこの世界につなぎとめる決定権を持っている。クロックじゃあるまいし、勝手に行動なんてするはずがない。

「イーフリートは死んだのか? 俺たちを助けるために――」
「リーズン。考えるのは後だ」

 呆然とリーズンが呟く。
 しかしそれをハムの力強い言葉が遮る。

「銀龍はまだ死んだわけじゃない」

 そうだよ、銀龍!!
 古代龍エルダードラゴンが出てきたから俺も出てきたんだ。
 銀龍の姿を探すと、地面でぐったり伸びていた。でも動いてる。
 あ、今なんか全身光った。おそらく回復系の何かだ。時間はないな。

「ハム。ひとまずみんなを連れて後ろに下がってくれ。レオンが全軍指揮を取ってレゴリス軍に突入するから、合流して助けてやってくれ」
「わかった。ビショップとシェイラは先に向かわせてある」

 さすがハム。そつがない。

「メテオ。あなた、あの銀龍に勝てるの?」
「やってみないことには……できれば足止めしているうちに、レオンがレゴリスの大将をなんとかしてくれればいいんだけど」
「そう……あなたに幸運神の加護があるよう祈っておくわ。がんばってね」
「不運はさっき出し尽くしたから、次は幸運だな。サンキュ」

 俺たちの間では、セッション中に一度一ゾロが出たら、不幸を出し尽くしたということにしている。もちろん縁起かつぎで、実際にはそんなの関係なく出るときは出るのが一ゾロなんだが。

「頼んだぞ――リーズン!!」

 俺が呼ぶと、まだリーズンはショック状態だが、これだけはいっておかないと。

「精霊王が――イーフリートが死ぬわけないだろ。なんならまた契約しなおせ。もうお前、《コントロール・グレータースピリット/上位精霊支配》使えるんだからな」

 10レベルの精霊魔法。《コントロール・グレータースピリット/上位精霊支配》。四大の精霊と契約するための魔法。この魔法がないと、本来はイーフリートのような最上位精霊とは交信できない。

「……そうだな。イーフリートの奴に、二度と勝手な真似はするなとがんじがらめに契約してやろう」
「そうだそうだ。じゃ、また後でな」
「ああ。イーフリートの魔法。メテオに見せてやりたかったな」

 そうだよ!! 発動しているところが見られれば俺、イーフリートの特別っぽい魔法使えたんじゃね!? 

「もう銀龍が空に舞い上がった――気をつけろメテオ。衝撃波はイーフリートのものだろうが、あの銀色の光は銀龍の放ったものだ」
「わかった。サンキュな」

 さすがはハム。よく見ている。

 皆が退却したところで、俺は心を沈めて魔法を使う。

「《加速/ヘイスト》――《魔力抵抗/カウンターマジック》――《防護/プロテクション》――《敵意察知/センスエネミィ》――《嘘感知/センスライ》――《飛翔/フライト》――《力の障壁/フォースフィールド》――《魔防皮膜/ルーンスクリーン》」

 補助魔法をこれでもかと重ねがけだ。すべての魔法を一度だけ弾き返す《魔防皮膜/ルーンスクリーン》を最後に使うのがミソだ。

 おそらくイーフリートが、無茶をして精霊界でしか使えないような大技を使ったんだろう。その代償はまだはっきりとしないが、テーブルトークRPG的にはシステム化されていない行為だ。
 リーズンは、よっぽどイーフリートに気に入られていたんだろう。
 だが、最悪。人間界にふたたび実体化することはできないとかあるかもしれない……
 
「イーフリートが時間を稼いでくれなかったら、リーズンたちも無事じゃなかったし、俺もこんなに準備万端じゃいられなかったろうな」

 ありがとうイーフリート。おかげで初手を全力でいける。
 上位魔神も押しつぶした俺最大のダメージ魔法。

「星界の子供たちよ。この声は届いているか。この魔力は伝わっているか。これなるは我が箒。魔法を極めた者の魔法の箒。お前たちの古箒と取り替えておくれ。この地を掃くため清めるため。何も残さず綺麗にしよう――」

 古代龍エルダードラゴンは耐えられるかな?

「――《隕石落とし/メテオラ》」

 銀龍の巨体の上を取り囲むよう、十の空間の裂け目が開いたと思うと、目にも留まらぬ速さで隕石が降り注いだ。

 ――――――――!!

 うっし。いい手応えだ。
 俺も魔法を使い込んで、スカの手応えと当たりの手応えはわかるようになってきた。
 今のはかなりいい出来な魔法。
 
 ……それでもさっき俺が感じた衝撃波や閃光のような効果は生み出せない。
 もし仮にあれが魔法だとしたらほしい。超ほしい。
 古代龍エルダードラゴンの操る魔法とか、精霊王の固有精霊魔法とか……もしかしたらこの世界に存在するんじゃないか?

 そんなことを考えているが、俺はきっちり視線を銀龍のいる方向に向けて警戒は怠っていない。
 ここに来る前から魔法で増強していた視力は、もくもくと立ち上がる土埃の向こうに、水撒き中に手を離してコントロールを失ったホースみたいな銀色の姿が……
 あっ、やばい、銀色の光が来る!!

 土煙の向こうからとてつもない銀色の光が、今度は俺一人にむけてレーザー光線みたいに飛んできた。
 避けるヒマもない――

「痛い痛い痛い!!」

 銀色の光を真正面から浴びた俺。
 とっさに眩しい光は腕で遮ったものの、全身を針で刺し貫かれるような痛みに襲われた。
 なにこのダメージ源!? 《魔防皮膜/ルーンスクリーン》が消えてないから魔法的なものじゃない。
 物理ダメージなら防いでくれるはずの《力の障壁/フォースフィールド》も機能していないようだ。

「こりゃ遠間の打ち合いはダメな気がする。接近戦かよ!!」

 本能的にこのまま撃ちあうのはヤバいと思った俺は、《飛翔/フライト》の全速力で銀龍に近づいた。それと同時に、自分のキャラクターシートも取り出してステータスを確認する。

「ウソ……50点近くダメージ食らってる」

 50点といったら俺の耐久値――VITのおおよそ半分。しかも、レベル分は確実にダメージを引いているし、防御魔法や俺の魔法の装備品の効果も合わせれば、今の光は少なく見積もって70点くらいのダメージのはずだ。

「おいおい……ハムですら一撃で死ぬレベルじゃないの」

 ハムは俺よりもダメージ減少の強い装備を身にまとっている。それでもギリギリ生きるか死ぬかという感じだろう。アーティアやリーズンだったら直射を食らったら、生き残ることはまずムリだ。

「回復のことも考えないとこれは死ぬ。死んじゃう目が見えて――あぎゃばばばばば!!」

 俺が《飛翔/フライト》で近づく間に、銀色の光がまたもや俺に浴びせかけられた。
 
 痛い痛い痛い痛ァい!!

 キャラシートは無事か!? あっ無事だ、よかった。いやよくない!!
 今度はダメージさっきより多い!!

「100点オーバーのダメージは一度の《回復/ヒーリング》じゃ無理――《快癒/リフレッシュ》……ってまたあの光かよぉぉぉぉぉぉッ!!」

 《飛翔/フライト》は全速力でも原付バイクくらいの速さだ。接近までには三ターンくらいかかるのは承知の上だったが……この光はあまりに痛い。《強制/ギアス》の痛みと違って耐えることはできるけど、このVITが削られていく感覚は心底ゾッとする。

「くそっ。こんなことなら初手で《魔防皮膜/ルーンスクリーン》解除して《転移/テレポート》で一気に接近するんだった」

 100点のダメージを治したところでふたたび50点のダメージ。こんなこと続けていると、いかな俺の精神点でもいずれ底を突く。まだ接近して殴り合いの距離に詰め寄って、この光を封じたほうがいい。

 土埃を抜けてやっとこさ銀龍の長い身体の近くに来たと思ったところで、俺が見たのはキラキラと光り輝く銀龍の姿。
 鱗の一枚一枚が光ってすごくキレイだ。
 しかも、頭から尾の先まですらっと伸びたたてがみのような純白の毛が、あきらかに魔力とおぼしき光をたたえて、すうっと消えていった。
 そして俺が《隕石落とし/メテオラ》で与えたであろう、えぐれたり裂けたりしている身体もすうっと元通りに――

 ……あの感じって、回復魔法じゃね?
 しかも、俺が見ても真似できない。
 考えられるのは、あれは神聖魔法でも精霊魔法でも、ましてや魔法語の魔法でもない、俺の持っていないスキル。すなわち未知のスキルによるもの。

「なんだよそれ! ずるい!! いや俺がいうのも何だけどチートすぎんだろッ!!」

 銀龍と目が合った。
 確実に知性を持った瞳だ。そして怒りがそこに見える。

 こんな怪物を支配下にできるってことは――

「やっぱり何かのアーティファクトの力か……」

 ここまで近づくと《隕石落とし/メテオラ》を使えない。その余波で俺までダメージを食らってしまう。
 となれば次席のダメージ魔法はこれしかない。

「遍く満ちたものにひと垂らし。すべてを溶かし尽くす魔力の雫よ、膨れて爆ぜてみせておくれ――《酸の霧/アシッドミスト》」 

 指定した空間に強酸の霧を生み出す魔法だ。
 俺の本気の魔力を込めた《酸の霧/アシッドミスト》は大木まるまる一本を一瞬で溶かし去る。これでダメージが通らないとかなりきつい。

 狙いは銀龍の頭全体。魔法の完成とともに、酸が何かを溶かすどぎつい刺激臭が立ち込めた。

「効いてるよな……――ァヅ!!」

 霧系の魔法はテーブルトークRPGのときはペナルティはなかったが、いざ実際に使うとほんの一瞬だけ魔法効果範囲の視界が途切れる。その様子を見ようと思った俺の肩口に、何かとてもつなく大きな物がぶつかった。

 えっ――この時代に交通事故?

 ダンプカーにはねられたかと思うくらいの衝撃。

 その正体は、銀龍の胴体による横薙ぎだった。

「――うえっほ! おえっ!!」

 油断もあったが、ぜんぜん見えなかった。
 まさかあんなでかい胴体が、ハムの斬撃なみに鋭く襲い掛かってくるなんて。

「でも、さっきの光よりは痛くない……物理攻撃だから《力の障壁/フォースフィールド》でかなり軽減できて――あっ」

 銀龍の胴体だか尾の横薙ぎを食らった俺は弾き飛ばされ、ふたたび間合いを開けられていた。

 そして、銀龍の焼けただれた顔面がくわっと顎を開くと、パンパンに膨れ上がった銀の何かを吐き出し、それを噛み砕いた。

「嘘だろぉぉぉぉぉぉぉッ!!」

 ――こいつ、戦い慣れてやがる!!

************************************************
そういやアルファライト文庫から『ワールドトークRPG!』の二巻が出ました。
今回のあとがきは魔法の呪文について語り散らしました!
本にあとがき書くの、じつは憧れだったんですよねー
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