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二部
193 旅立ち
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レゴリスの狂太子を倒し、ユルセールが勝利宣言をしてから一ヶ月が経った。
レオンをはじめとして、ユルセールの騎士団や普段は目立たない文官たち。そして宮廷魔術師であるロルトじいたちにとっては、あるいは戦争そのものよりも大変な日々だったに違いない。
ユルセールはレゴリスに対して多額の賠償金を請求し、レゴリス側はいくらかの値段交渉はあったものの素直に条件を飲んだ。
レゴリスにしてみれば、自国の王子とブリンガーをひとり失い、さらに国土に住み着いていたはずの古代龍がどういうわけかユルセールに移り住んでしまった。
そんな事を構えることなどできず、レゴリスは大敗を喫したといっていいだろう。
かといってユルセールが大勝利かというとそうでもない。失われたピニオーリの住民たちの命は帰ってこない。
ミストブリンガーとともに霧と消えてしまった狂太子ザラシュトラス。そして破壊された龍王の装飾卵と晴嵐。ふたつのアーティファクトは永遠に失われた。
そんな中でユルセールが唯一得たものは、銀龍カトラという存在だ。
もともとアンデッドが自然発生し、国土としては手がつけられない荒れ地のアヴィルードに住み着いたカトラは、ただそこにいるだけで土地を浄化しているとのことだ。
レゴリスに圧勝し、しかも国土にはユルセール王と友誼を結んだ古代龍がいるという事実は、諸外国に知れ渡った。
しばらくはユルセールに手を出そうという国も、現れることがないだろう。
さらにレオンは三度、銀龍に対して頼みごとができる。
あいつの性格を考えると、使うことはないかもしれないが。
一度死んで、今回まったくいいところのなかったストブリは脅威の回復を見せて、金獅子騎士団の団長として忙しくやっているらしい。
風のウワサでは、ザラシュトラスを倒し、アーティファクトを破壊してのけたメルに対して、金獅子騎士団団長の次期候補としてスカウトをしたというが…… ここらへんは俺がどうこういうことでもないので、深くは聞かなかった。
いずれにせよ、メルはしばらくエステルたちと冒険者でいることを望むだろうしな。
ちなみにメル。俺が教えてくれといっても、「メテオ様にも秘密なのー!!」と、どうやってアーティファクトを破壊したかは教えてくれなかった……
エステルたち北極星は、俺たちとともに一度ウォルスタに戻った。
リーズンが領主から退き、魔術師ギルドのフィリアが就任する。
魔術師ギルドはオリナスがひとまずの長として、就任することとなった。
「リーズン様の後任は緊張いたしますが、中継ぎだと思ってやらせていただきます。ほんの十数年もすれば、お弟子さんが帰ってくるでしょうから」
「わたしもそのつもりです。フィリアのようにほんの……とはいきませんが」
フィリアもオリナスも、自分たちはリコッタとエステルが帰ってくるまでのことだと思っているらしい。
そのエステルたち北極星はというと、いずれはウォルスタに帰ってきてそれぞれの役目を果たそうと考えてはいるようだった。ただ、数年は冒険者として本格的にあちこちを旅して見聞を広め、それぞれの力を高めるという心づもりのようだ。
そして、俺たち流れ星も、それぞれの道に進み始めようとしている。
アーティアとハムはウォルスタ神殿と自警団のトップとして、ウォルスタを離れるつもりはないらしい。
といってもアーティアは、ケイシャが戻ってきたら神殿を継がせるつもりだという。
「実はわたし。もともと神官職よりもお金儲けのほうが好きなのよね」
アーティアをよく知っている俺も、こんなカミングアウト聞きたくなかったぞ……
というわけで、アーティアは神官としての地位はケイシャに譲り、自分はウォルスタの。いや、おそらくはこの世界の経済を牛耳るつもりなのではなかろうか。
ハムはもともと自警団の育成には力を入れていて、すでにハムがいなくてもなんとかなるまでの組織に鍛え上げている。
それでもウォルスタに残るのは――
「さすがにもうすぐ子供が産まれるのに、俺がこの町を離れるわけにはいかないだろう」
「えっ! こ、子供!?」
「お前たちにいってなかったっけか?」
「初耳よ」
「ハムも隅に置けんな」
「あ、おいら知ってる。武器屋の看板娘のミユちゃんだよう」
「ガルーダにいったつもりはないんだが……」
ウォルスタに帰ったところでハムのこの爆弾発言である。
なんでも結婚すらしておらず、気がついたらのおめでただったらしい。
「いろいろ忙しかったから、帰ったら式をという話だったんだが……子供ができていたとはさすがに俺も驚いた」
もちろんアーティアにさんざん説教をされたが、なんだかんだでめでたいことだ。俺たちが盛大にハムと武器屋のミユちゃんとの結婚式を取り仕切ったのが、今から半月前のことだ。
ハムの結婚式については語ることは多いいんだが、俺は結婚祝いにマジックアイテムを贈った。《万物創成/クリエイトオール》で作った準アーティファクトとともいえる、なかなかの鎧なんだが、これも語ると長いのでまたいつか。
好き勝手動くだろうが、俺はガルーダにもマジックアイテムを作ってやった。現代風のバイク乗りが使うようなゴーグルだ。その使い方を教えたら、飛び上がって喜んでくれた。これであいつはきっと、俺の予想通りに動いてくれるはずだ。
アーティアにも何か作ってやろうと思ったんだが、それとなく本人に何かほしい魔法の品物はないかと聞いたところ……
「そうね……護身用にメイスでもひと振り――!!」
「どうしたアーティア!?」
メイスをひと振り。といったところで、アーティアがこれまで見たこともないような引きつった顔で全身をぶるっと震わせた。
「――今、何かこの世の終わりのような悪寒がしたの。……わたしはいいわ。特に欲しいものはないわ」
「なんだよ、メイスならものすごくいいのがある――」
「いらない」
と、なぜか頑なにメイスのプランを断ってきた。
アーティアのプレイヤーであった聡が考案した、素敵な魔法のメイスのプランがあったんだがなあ……
もちろんリーズンにはすでにマジックアイテムを渡している。
イーフリートと再契約するため。ユルセールからはるか東にあるというゲヘナ火山へと向かう準備を進めていたときに、これを渡した。
紫色をした八面体の宝石を、ミスリルのワイヤーで閉じ込めた護符。
「――という力がある。回数制限はあるが、いざってときに使ってくれ」
「メテオよ。すばらしい贈り物だ」
このマジックアイテムの効果を説明し終わると、リーズンにしては珍しく俺をがっちり抱きしめて礼を述べた。
「必ずイーフリートと再契約して……ふふ、ふふふ……」
「よ、喜んでくれて何よりだ」
予想以上に喜んでくれて、若干引いたくらいだった。
リーズンがこれから向かう場所には、古代龍。しかも混沌の側の龍であるカラードラゴン。赤龍がいるという。
この護符が役立ってくれれば。いや、使わなければそのまま温存してくれればいいんだが。
ちなみに《万物創成/クリエイトオール》で俺が作ったマジックアイテムはこれまでで五つ。
エステルの無病息災の腕輪。
北極星に持たせたこびとの厩。
ハムの鎧。
ガルーダのゴーグル。
リーズンの護符。
《万物創成/クリエイトオール》は10レベルをひとつ超えるごとに、ひとつマジックアイテムを作ることができ、5レベルごとにアーティファクトを作ることができる。
このアーティファクト枠は、俺が元の世界とこちらがわを行き来するためのアーティファクトを作るために温存している。
いまのところあとふたつ作れるが、これはアーティアのぶんと、まだ見たことがないけどマリアージュのために取っておこうと思う。
もっとレベルが上がれば、俺の分も作れるだろう。
「そろそろ出るか……」
なんだかんだで数ヶ月を暮らした、魔術師ギルドにある俺の自室。
きれいに掃除をして、本棚や私物などもしっかり整頓し終わったところだ。
実は俺の私物はかなり少ない。本来ならメテオというキャラはもっといっぱいマジックアイテムを持っているはずなんだが……まあ、それはどうでもいい。
「お師匠様。そろそろ猫屋敷に向かわれては――」
「ん。ちょうど片付けが終わったところだ」
エステルが俺の部屋の扉をノックしてから、様子を見に来てくれた。
今日は俺とリーズンが旅立つといったら、みんなが猫屋敷で送別会を開いてくれることになっている。
俺は《転移/テレポート》や《次元の扉/ゲート》があるので、たいていの場所からはすぐに帰ってこれる。だが、エステルたち北極星が冒険に出てしまったら、なかなか会えないからな。
「メルたちは先に向かってます」
「じゃあ、行くか」
俺はエステルと並んで、猫屋敷へと歩いた。
もはや見慣れた魔術師ギルトの建物の中。ウォルスタの雑踏。猫屋敷までの猫だらけの道を、俺よりもほんのわずか微弱に少しだけ背の高い弟子と並んで、どうでもいい話をしながら。
猫屋敷の屋上では、すでに皆がどんちゃん騒ぎで出来上がっていた。
そこに俺を待つという様子は微塵もなく、きっと飲み食いをするダシに使われたんだろう。
けれども、そんな仲間たちがいることがすこし嬉しい。
元の世界ではテーブルトークRPGのキャラクターとして二十年ほども冒険を共にしてきた仲間である、リーズン。ガルーダ。アーティア。ハム。
セッション中ではNPCとして動いていたエステルやメル。そこにはこの世界で新たにエステルたちの冒険仲間となったリコッタとケイシャ。ロマーノは気が向けばたまにリコッタと交代して出てくるだろう。
驚いたことにストブリとロルトじいもその中に混じって酒を飲んでいた。さらに、巨大な白猫を抱えて椅子に座る金髪の少年は……
「レオンも来たのか! いいのか!?」
「友人の旅立ちに、駆け付けぬ訳にはいくまい?」
「ぶみゃーお」
レオンは着ているものこそ、そこそこ裕福な商家の少年みたいな単衣だが、王族のオーラがびしびし出ている。
来てくれるのは嬉しいんだけど、戦争の処理とか……いいのか?
「夕食の時間くらいであれば問題ありますまい。息はヒュメリア殿が《転移/テレポート》に使う気力を負担してくれたので、帰りはじいが責任を持ちますゆえ」
「俺はまあ、レオン様と宮廷魔術師殿の護衛ってことだ」
「国民の生の姿を体験するのも、レオン様には必要じゃろうと思うてな」
「たまには息抜きもしないとな」
ロルトじいとストブリはさらっといってくれる。このふたりは庶民派だな!!
「民草の中で暮らす猫というのは、ずいぶん大きいのだな」
「ああいや。コーデリアは別格だ」
「ごみゃー」
レオンの膝の上でなすがままのコーデリア。この猫を通常サイズだと考えちゃダメだ。
「この猫はコーデリアというのか。姫君のような名前だ。よしよし」
「レオンもメテオも飲むよう!!」
いつものハイテンションで、両手にジョッキを持ったガルーダが俺たちにエールを押し付ける。
「このメンツが揃った飲み会なら、城の中より安全だしな……せっかくだから猫屋敷のうまいものを堪能していってくれ」
「うむ。人間の作るものは美味なので楽しみである」
「フォッ!? カ、カトラもいたのか!?」
後ろから突然現れたのは、巫女服姿の銀龍少女カトラだった。すでに手にはジョッキが握られている。そしてカトラの少し上空には、こまっしゃくれた顔のクロックが浮いていた。
「おぬしの守護精霊が知らせてくれたので、駆けつけたのである。……うむ、このエールはたいへんに美味なのである!!」
「古代龍と上位精霊というのはそれなりに仲良しなんだよ。何かこの世界にかかわるようなことがあれば、自由に動けるぼくらがこっそりと情報をリークするのが昔からの習わしなんだ。それに宴会というのは人数が多いほうが楽しいというし、食べ物や酒もおいしいんだろう? ぼくには食事を摂ることができないから、カトラたちや人間がちょっとだけだけど羨ましいことがあるよ」
「最近姿を見せないと思ったら……てか、何で俺とリーズンの送別会が世界にかかわるような話なんだよ!!」
クロックはふふっと生意気に笑うと、猫屋敷の屋上のさらに上に浮かび上がり、両手を広げて歌うようにいった。なんでこんなに芝居がかってるんだ!!
「だって見てご覧よ――!? この国屈指の冒険者と、その国の王と宮廷魔術師と近衛の団長が一同に会しているんだよ!! 並のことではないよ! そこにふさわしい賓客として、銀龍カトラや時の精霊たるこのぼくもまた、――多少過度すぎるきらいはあるけれども――相応しいと思わないか!?」
「……時の精霊じゃと!?」
ロルトじいが。そしてエステルやリコッタやストブリもクロックの突然の身バレに目を丸くしている。
「……クロック。お前ってそんな堂々と自己紹介してもいいものなの?」
「――あっ」
「………………」
「………………」
きまりの悪い沈黙が猫屋敷の屋上に流れる。
「……今のは聞かなかったことにしてくれないかな。あっ、ちょっとぼくは用事を思い出したんでお暇するよ。ああ忙しい忙しい!!」
早口にそう言い残すと、クロックは消えてしまった。
「お師匠様。時の精霊というと、伝説の――」
「ああ、うん。いつでも正確な時間がわかるくらいの便利な奴だと思ってくれ。さあ飲もう! ちょっと俺、一階でおやっさんに酒の追加頼んでくる!!」
クロックめ! 好き勝手喋って消えやがった!!
――結局。
送別会という名の飲み会は深夜を超え、朝になるまで続けられた。
ロルトじいとレオンとストブリはさすがにひと晩城を開けるわけにはいかず、途中で《転移/テレポート》で帰り、カトラもしこたま飲み食いをしたらアヴィルードに戻るといって消えてしまった。
残ったのは、流れ星と北極星のみ。
見送られるには悪くないメンバーだ。
「それでは俺は、東に向かう」
リーズンがちょっとそこまで。という軽い感じで、バックパックひとつ背負い、『猫屋敷』の前に居並ぶ面々に別れを告げた。
徹夜で飲み明かした朝だというのに、さすが皆一流の冒険者だ。ちょっと目が充血しているくらいで、元気なものだった。
「俺はひとまず西か。レゴリスを横断してマリアを探しながらぶらぶらするよ」
かくいう俺も見送られる側だ。
流れ星のメンバー。マリアージュはレゴリスにいるという話だったはずだ。
冒険のついでというには片手間な感じだが、ひとまずの目標としては悪くないだろう。
「リーズン様。お師匠様。道中お気をつけて」
「メテオ様なら平気なのー!!」
「リーズン様。旅のご無事を祈っております」
「こ、幸運の神のご加護がありますように……」
北極星の皆からしばしの別れの言葉をもらう。
ちょっとばかりの寂しさはあるかもだが、サバサバしたもんだ。
エステルははじめに比べてずいぶん強くなった。
短い間だが、仲間たちにリーダーとして頼られたことが、成長につながったのだろう。
「今日は昼ごろから曇りそうね……早く帰って洗い物を済ませないと」
「メテオ。旅先で珍しい武具を見つけたら《転移/テレポート》で俺の部屋に送ってくれ」
一方流れ星の仲間であるアーティアとハムには、これといった挨拶すらない。俺、いちおうリーダーだよな! もっと心配してもいいんじゃないか!?
「おいらはリーズンについていくよう」
「――な!?」
そしてガルーダの爆弾発言が炸裂である。
「そろそろウォルスタから出て、どこかに冒険の旅って気分だったんだよう。リーズンの背中はおいらが守るよう?」
「冗談はよせ! ついていくならメテオにしろ!!」
「いや、俺にはもうクロックがいるから定員オーバーだ。悪いなリーズン」
――実は、ガルーダにゴーグルのマジックアイテムを渡したとき、すでにこの流れは決まっていた。
「ガルーダ。このマジックアイテムをやるから、リーズンと一緒にいてやってくれ。あいつにはお前くらいついてやらないと不安だからな。このゴーグルは選別だ」
「そんなものなくてもおいらとメテオとリーズンの仲だよう? 水臭いよゥ――でもくれるっていうのを拒むのはリトルフィートの心情に反するから、ありがたく貰っておくよう!!」
すまん、リーズン。
正直うっとうしい連れだとは思うが、旅の道連れにガルーダはきっと役立つ。
俺についてこられても迷惑だし、先手を打たせてもらった。
「それじゃあ、みんな。またな――」
これで心置きなく旅立つことができる。
いざゆかん! 冒険の旅へ――
「メテオ様」
「えっ、誰?」
さっそうとマントを翻して離脱しようと思った俺に近づいてきたのは、どこにでもいそうな町娘だった。年の頃なら十代後半。胸のふくらみこそ控えめだがなかなか均整の取れた……いやそんなことはどうでもいい。
「この手紙を渡してくれって頼まれたの」
「誰から?」
「さあ? 二通あるけど、こっちのほうは絶対にひとりの時に読んでって」
町娘は茶色のおさげを揺らして、俺に二通の手紙を押し付けた。
一通は厳重に封がしてあり、一通は封すらしていない。
何かよくない罠かとも思ったが、町娘にはそれらしい気配はなく、手紙にも怪しげな魔力は感じない。
「じゃあ確かに渡したわよ。お金もらっちゃったから、しっかりしておきたいのよね。じゃあね」
旅の出鼻をくじかれた俺は、仕切り直すのもばつが悪い。
ひとまずは封のしていないガバガバな封筒から一枚の紙を引っぱり出した。
「――“メテオ。あなたに会いに戻る――マリアージュ”。えっ、マリア!?」
便箋には共通語でそれだけが書かれていた。
――マリアージュ・ロスタン。
俺たち流れ星の六人目。
リーズンのプレイヤーである遊佐みゆき。ミーちゃんの妹である、マリア。天本マリアのキャラクター。
こっちから見つけに行こうと思ったんだが、まさか向こうから――
「マリアージュが来るのか……よし、ガルーダ。行くぞ」
「マリアが来るんだったらもうちょっと残ってもよかったよう……ってまってよう。リーズン~」
俺が手紙を読み上げると、リーズンとガルーダはそそくさと歩いていってしまった。
「マリアが来るのね……まあいいわ。メテオがご指名なら」
「それじゃあ俺は帰って寝るか。またな、メテオ」
えっえっ?
アーティアもハムもそれだけ?
というか俺の旅立ちは……中止?
「ご主人様のお仲間のマリアージュ様。わたしはお目もじ叶ったことはないのですが……」
「北極星も今日から依頼のお仕事があるのー! 猫屋敷のおやっさんからだからマジメにやるニャ!!」
「魔の大森林にしか咲かない薬用の花なんですが、時期を逃すと花が萎れてしまうんです」
「か、帰って、きたら、またあ、会えるです」
えっえっえっ?
「それじゃあお師匠様。マリアージュ様がお泊りになられるようでしたら、エステルとメルの部屋をお使いいただいて構いませんので、よろしくお伝え下さい」
「メテオ様ー またニャー!!」
……行ってしまった。
なにこの取り残され感。
見送られる筈が見送る側になってるんですけど……!?
「ぶみゃーーーーお」
「……ああ、コーデリア。お前がいたか。おおよしよし」
コーデリアをモフらせてもらって心を癒やし、握りしめた手紙を見た。
もうひとつは俺がひとりで見ろっていってたな……
封蝋を取り去って、便箋を取り出す。
そこにはやはり共通語でこんなことが延々書かれていた。
“ひどいですよメテオ様!! どうしていつまでたっても定時連絡してくれないんですか!? こちらから連絡取ろうにも見知らぬ闇エルフがうろついていたり、テラスには鍵がかかてるし!! いつも誰かがそばにいるから手紙も渡せない!! あげく、どこかに冒険に出るっていうから俺も誰かに見られる危険を冒してこんなマネですよ!!”
「何の話なんだ……」
“しかも盗賊ギルドからメテオ様宛の手紙まで押し付けられたんですよ!? 一瞬、俺とメテオ様のつながりがバレたのかと思ってマジでビビりましたよ!! なんなんですか一体!? メテオ様が誰にも秘密にっていったんじゃないですか!!”
よくわからないが、この手紙の主と俺は顔見知り。というよりも、何か秘密を共有しているか、俺が何かを頼んでいたみたいな感じなのか。
“いいですか。今日の夜の丑三つですよ!? 絶対テラスの鍵を開けておいてくださいね!! 最近はいないみたいですけど、あの殺気出まくりの闇エルフも遠ざけてくださいね!? 絶対ですよ!! 本当にもう今日もシカトしたら知りませんからね!! Dより”
手紙の文面からはこの差出人。Dというの奴がキレっキレなのがよく伝わってきた。
「俺がまだメテオとしてこの世界にいたとき、交わされた約束事か何かか……?」
わからん。
だが、わかったことはある。
俺の新しい冒険は――
「中止ってことか……」
「ごみゃーーーーーお」
************************************************
ワールドトークRPG! 二部これにて完結となります…
お付き合いありがとうございます!
そしてこれからもよろしくお願いします…!!
ワールドトークRPG!文庫版の作業をしたり、
そろそろ違う小説を書いてみたりしたいので、
ちょっと長めのお休みをいただくのです。…あれ、これって休んでないですよね???
今後のワールドトークRPG! の予定ですが、三部が始まる前にいくつか本編にかかわる
閑話、異伝、外伝的なものを出しながら徐々にスタートしていきます。
おそらく三部は早めに終わり、ワールドトークRPG! という物語はひとまず閉幕です。
といっても、延々長く書いていきたいので、
まずは先にエンディングまでを書ききってから、
三部始まりからエンディングの間にこんな話が…
という形で、不定期にシリーズを続けていこうかな、と。
とくに別行動したリーズンなんかは、もうTRPGに関係しなくなっちゃう冒険ですしね(今更)
とにもかくにもエンディング。三部はここを目指していきます。
もちろん三部はようやく出てくるシックスメン。マリアージュが重要人物になります。
他のメンバーともども、マリアージュも皆様に気に入ってもらえればいいな…
それでは二部完結。
ちょっと肩の力を抜いて、最後まで走り抜ける準備を整えてきます。
読んでくれてありがとうです!!
レオンをはじめとして、ユルセールの騎士団や普段は目立たない文官たち。そして宮廷魔術師であるロルトじいたちにとっては、あるいは戦争そのものよりも大変な日々だったに違いない。
ユルセールはレゴリスに対して多額の賠償金を請求し、レゴリス側はいくらかの値段交渉はあったものの素直に条件を飲んだ。
レゴリスにしてみれば、自国の王子とブリンガーをひとり失い、さらに国土に住み着いていたはずの古代龍がどういうわけかユルセールに移り住んでしまった。
そんな事を構えることなどできず、レゴリスは大敗を喫したといっていいだろう。
かといってユルセールが大勝利かというとそうでもない。失われたピニオーリの住民たちの命は帰ってこない。
ミストブリンガーとともに霧と消えてしまった狂太子ザラシュトラス。そして破壊された龍王の装飾卵と晴嵐。ふたつのアーティファクトは永遠に失われた。
そんな中でユルセールが唯一得たものは、銀龍カトラという存在だ。
もともとアンデッドが自然発生し、国土としては手がつけられない荒れ地のアヴィルードに住み着いたカトラは、ただそこにいるだけで土地を浄化しているとのことだ。
レゴリスに圧勝し、しかも国土にはユルセール王と友誼を結んだ古代龍がいるという事実は、諸外国に知れ渡った。
しばらくはユルセールに手を出そうという国も、現れることがないだろう。
さらにレオンは三度、銀龍に対して頼みごとができる。
あいつの性格を考えると、使うことはないかもしれないが。
一度死んで、今回まったくいいところのなかったストブリは脅威の回復を見せて、金獅子騎士団の団長として忙しくやっているらしい。
風のウワサでは、ザラシュトラスを倒し、アーティファクトを破壊してのけたメルに対して、金獅子騎士団団長の次期候補としてスカウトをしたというが…… ここらへんは俺がどうこういうことでもないので、深くは聞かなかった。
いずれにせよ、メルはしばらくエステルたちと冒険者でいることを望むだろうしな。
ちなみにメル。俺が教えてくれといっても、「メテオ様にも秘密なのー!!」と、どうやってアーティファクトを破壊したかは教えてくれなかった……
エステルたち北極星は、俺たちとともに一度ウォルスタに戻った。
リーズンが領主から退き、魔術師ギルドのフィリアが就任する。
魔術師ギルドはオリナスがひとまずの長として、就任することとなった。
「リーズン様の後任は緊張いたしますが、中継ぎだと思ってやらせていただきます。ほんの十数年もすれば、お弟子さんが帰ってくるでしょうから」
「わたしもそのつもりです。フィリアのようにほんの……とはいきませんが」
フィリアもオリナスも、自分たちはリコッタとエステルが帰ってくるまでのことだと思っているらしい。
そのエステルたち北極星はというと、いずれはウォルスタに帰ってきてそれぞれの役目を果たそうと考えてはいるようだった。ただ、数年は冒険者として本格的にあちこちを旅して見聞を広め、それぞれの力を高めるという心づもりのようだ。
そして、俺たち流れ星も、それぞれの道に進み始めようとしている。
アーティアとハムはウォルスタ神殿と自警団のトップとして、ウォルスタを離れるつもりはないらしい。
といってもアーティアは、ケイシャが戻ってきたら神殿を継がせるつもりだという。
「実はわたし。もともと神官職よりもお金儲けのほうが好きなのよね」
アーティアをよく知っている俺も、こんなカミングアウト聞きたくなかったぞ……
というわけで、アーティアは神官としての地位はケイシャに譲り、自分はウォルスタの。いや、おそらくはこの世界の経済を牛耳るつもりなのではなかろうか。
ハムはもともと自警団の育成には力を入れていて、すでにハムがいなくてもなんとかなるまでの組織に鍛え上げている。
それでもウォルスタに残るのは――
「さすがにもうすぐ子供が産まれるのに、俺がこの町を離れるわけにはいかないだろう」
「えっ! こ、子供!?」
「お前たちにいってなかったっけか?」
「初耳よ」
「ハムも隅に置けんな」
「あ、おいら知ってる。武器屋の看板娘のミユちゃんだよう」
「ガルーダにいったつもりはないんだが……」
ウォルスタに帰ったところでハムのこの爆弾発言である。
なんでも結婚すらしておらず、気がついたらのおめでただったらしい。
「いろいろ忙しかったから、帰ったら式をという話だったんだが……子供ができていたとはさすがに俺も驚いた」
もちろんアーティアにさんざん説教をされたが、なんだかんだでめでたいことだ。俺たちが盛大にハムと武器屋のミユちゃんとの結婚式を取り仕切ったのが、今から半月前のことだ。
ハムの結婚式については語ることは多いいんだが、俺は結婚祝いにマジックアイテムを贈った。《万物創成/クリエイトオール》で作った準アーティファクトとともいえる、なかなかの鎧なんだが、これも語ると長いのでまたいつか。
好き勝手動くだろうが、俺はガルーダにもマジックアイテムを作ってやった。現代風のバイク乗りが使うようなゴーグルだ。その使い方を教えたら、飛び上がって喜んでくれた。これであいつはきっと、俺の予想通りに動いてくれるはずだ。
アーティアにも何か作ってやろうと思ったんだが、それとなく本人に何かほしい魔法の品物はないかと聞いたところ……
「そうね……護身用にメイスでもひと振り――!!」
「どうしたアーティア!?」
メイスをひと振り。といったところで、アーティアがこれまで見たこともないような引きつった顔で全身をぶるっと震わせた。
「――今、何かこの世の終わりのような悪寒がしたの。……わたしはいいわ。特に欲しいものはないわ」
「なんだよ、メイスならものすごくいいのがある――」
「いらない」
と、なぜか頑なにメイスのプランを断ってきた。
アーティアのプレイヤーであった聡が考案した、素敵な魔法のメイスのプランがあったんだがなあ……
もちろんリーズンにはすでにマジックアイテムを渡している。
イーフリートと再契約するため。ユルセールからはるか東にあるというゲヘナ火山へと向かう準備を進めていたときに、これを渡した。
紫色をした八面体の宝石を、ミスリルのワイヤーで閉じ込めた護符。
「――という力がある。回数制限はあるが、いざってときに使ってくれ」
「メテオよ。すばらしい贈り物だ」
このマジックアイテムの効果を説明し終わると、リーズンにしては珍しく俺をがっちり抱きしめて礼を述べた。
「必ずイーフリートと再契約して……ふふ、ふふふ……」
「よ、喜んでくれて何よりだ」
予想以上に喜んでくれて、若干引いたくらいだった。
リーズンがこれから向かう場所には、古代龍。しかも混沌の側の龍であるカラードラゴン。赤龍がいるという。
この護符が役立ってくれれば。いや、使わなければそのまま温存してくれればいいんだが。
ちなみに《万物創成/クリエイトオール》で俺が作ったマジックアイテムはこれまでで五つ。
エステルの無病息災の腕輪。
北極星に持たせたこびとの厩。
ハムの鎧。
ガルーダのゴーグル。
リーズンの護符。
《万物創成/クリエイトオール》は10レベルをひとつ超えるごとに、ひとつマジックアイテムを作ることができ、5レベルごとにアーティファクトを作ることができる。
このアーティファクト枠は、俺が元の世界とこちらがわを行き来するためのアーティファクトを作るために温存している。
いまのところあとふたつ作れるが、これはアーティアのぶんと、まだ見たことがないけどマリアージュのために取っておこうと思う。
もっとレベルが上がれば、俺の分も作れるだろう。
「そろそろ出るか……」
なんだかんだで数ヶ月を暮らした、魔術師ギルドにある俺の自室。
きれいに掃除をして、本棚や私物などもしっかり整頓し終わったところだ。
実は俺の私物はかなり少ない。本来ならメテオというキャラはもっといっぱいマジックアイテムを持っているはずなんだが……まあ、それはどうでもいい。
「お師匠様。そろそろ猫屋敷に向かわれては――」
「ん。ちょうど片付けが終わったところだ」
エステルが俺の部屋の扉をノックしてから、様子を見に来てくれた。
今日は俺とリーズンが旅立つといったら、みんなが猫屋敷で送別会を開いてくれることになっている。
俺は《転移/テレポート》や《次元の扉/ゲート》があるので、たいていの場所からはすぐに帰ってこれる。だが、エステルたち北極星が冒険に出てしまったら、なかなか会えないからな。
「メルたちは先に向かってます」
「じゃあ、行くか」
俺はエステルと並んで、猫屋敷へと歩いた。
もはや見慣れた魔術師ギルトの建物の中。ウォルスタの雑踏。猫屋敷までの猫だらけの道を、俺よりもほんのわずか微弱に少しだけ背の高い弟子と並んで、どうでもいい話をしながら。
猫屋敷の屋上では、すでに皆がどんちゃん騒ぎで出来上がっていた。
そこに俺を待つという様子は微塵もなく、きっと飲み食いをするダシに使われたんだろう。
けれども、そんな仲間たちがいることがすこし嬉しい。
元の世界ではテーブルトークRPGのキャラクターとして二十年ほども冒険を共にしてきた仲間である、リーズン。ガルーダ。アーティア。ハム。
セッション中ではNPCとして動いていたエステルやメル。そこにはこの世界で新たにエステルたちの冒険仲間となったリコッタとケイシャ。ロマーノは気が向けばたまにリコッタと交代して出てくるだろう。
驚いたことにストブリとロルトじいもその中に混じって酒を飲んでいた。さらに、巨大な白猫を抱えて椅子に座る金髪の少年は……
「レオンも来たのか! いいのか!?」
「友人の旅立ちに、駆け付けぬ訳にはいくまい?」
「ぶみゃーお」
レオンは着ているものこそ、そこそこ裕福な商家の少年みたいな単衣だが、王族のオーラがびしびし出ている。
来てくれるのは嬉しいんだけど、戦争の処理とか……いいのか?
「夕食の時間くらいであれば問題ありますまい。息はヒュメリア殿が《転移/テレポート》に使う気力を負担してくれたので、帰りはじいが責任を持ちますゆえ」
「俺はまあ、レオン様と宮廷魔術師殿の護衛ってことだ」
「国民の生の姿を体験するのも、レオン様には必要じゃろうと思うてな」
「たまには息抜きもしないとな」
ロルトじいとストブリはさらっといってくれる。このふたりは庶民派だな!!
「民草の中で暮らす猫というのは、ずいぶん大きいのだな」
「ああいや。コーデリアは別格だ」
「ごみゃー」
レオンの膝の上でなすがままのコーデリア。この猫を通常サイズだと考えちゃダメだ。
「この猫はコーデリアというのか。姫君のような名前だ。よしよし」
「レオンもメテオも飲むよう!!」
いつものハイテンションで、両手にジョッキを持ったガルーダが俺たちにエールを押し付ける。
「このメンツが揃った飲み会なら、城の中より安全だしな……せっかくだから猫屋敷のうまいものを堪能していってくれ」
「うむ。人間の作るものは美味なので楽しみである」
「フォッ!? カ、カトラもいたのか!?」
後ろから突然現れたのは、巫女服姿の銀龍少女カトラだった。すでに手にはジョッキが握られている。そしてカトラの少し上空には、こまっしゃくれた顔のクロックが浮いていた。
「おぬしの守護精霊が知らせてくれたので、駆けつけたのである。……うむ、このエールはたいへんに美味なのである!!」
「古代龍と上位精霊というのはそれなりに仲良しなんだよ。何かこの世界にかかわるようなことがあれば、自由に動けるぼくらがこっそりと情報をリークするのが昔からの習わしなんだ。それに宴会というのは人数が多いほうが楽しいというし、食べ物や酒もおいしいんだろう? ぼくには食事を摂ることができないから、カトラたちや人間がちょっとだけだけど羨ましいことがあるよ」
「最近姿を見せないと思ったら……てか、何で俺とリーズンの送別会が世界にかかわるような話なんだよ!!」
クロックはふふっと生意気に笑うと、猫屋敷の屋上のさらに上に浮かび上がり、両手を広げて歌うようにいった。なんでこんなに芝居がかってるんだ!!
「だって見てご覧よ――!? この国屈指の冒険者と、その国の王と宮廷魔術師と近衛の団長が一同に会しているんだよ!! 並のことではないよ! そこにふさわしい賓客として、銀龍カトラや時の精霊たるこのぼくもまた、――多少過度すぎるきらいはあるけれども――相応しいと思わないか!?」
「……時の精霊じゃと!?」
ロルトじいが。そしてエステルやリコッタやストブリもクロックの突然の身バレに目を丸くしている。
「……クロック。お前ってそんな堂々と自己紹介してもいいものなの?」
「――あっ」
「………………」
「………………」
きまりの悪い沈黙が猫屋敷の屋上に流れる。
「……今のは聞かなかったことにしてくれないかな。あっ、ちょっとぼくは用事を思い出したんでお暇するよ。ああ忙しい忙しい!!」
早口にそう言い残すと、クロックは消えてしまった。
「お師匠様。時の精霊というと、伝説の――」
「ああ、うん。いつでも正確な時間がわかるくらいの便利な奴だと思ってくれ。さあ飲もう! ちょっと俺、一階でおやっさんに酒の追加頼んでくる!!」
クロックめ! 好き勝手喋って消えやがった!!
――結局。
送別会という名の飲み会は深夜を超え、朝になるまで続けられた。
ロルトじいとレオンとストブリはさすがにひと晩城を開けるわけにはいかず、途中で《転移/テレポート》で帰り、カトラもしこたま飲み食いをしたらアヴィルードに戻るといって消えてしまった。
残ったのは、流れ星と北極星のみ。
見送られるには悪くないメンバーだ。
「それでは俺は、東に向かう」
リーズンがちょっとそこまで。という軽い感じで、バックパックひとつ背負い、『猫屋敷』の前に居並ぶ面々に別れを告げた。
徹夜で飲み明かした朝だというのに、さすが皆一流の冒険者だ。ちょっと目が充血しているくらいで、元気なものだった。
「俺はひとまず西か。レゴリスを横断してマリアを探しながらぶらぶらするよ」
かくいう俺も見送られる側だ。
流れ星のメンバー。マリアージュはレゴリスにいるという話だったはずだ。
冒険のついでというには片手間な感じだが、ひとまずの目標としては悪くないだろう。
「リーズン様。お師匠様。道中お気をつけて」
「メテオ様なら平気なのー!!」
「リーズン様。旅のご無事を祈っております」
「こ、幸運の神のご加護がありますように……」
北極星の皆からしばしの別れの言葉をもらう。
ちょっとばかりの寂しさはあるかもだが、サバサバしたもんだ。
エステルははじめに比べてずいぶん強くなった。
短い間だが、仲間たちにリーダーとして頼られたことが、成長につながったのだろう。
「今日は昼ごろから曇りそうね……早く帰って洗い物を済ませないと」
「メテオ。旅先で珍しい武具を見つけたら《転移/テレポート》で俺の部屋に送ってくれ」
一方流れ星の仲間であるアーティアとハムには、これといった挨拶すらない。俺、いちおうリーダーだよな! もっと心配してもいいんじゃないか!?
「おいらはリーズンについていくよう」
「――な!?」
そしてガルーダの爆弾発言が炸裂である。
「そろそろウォルスタから出て、どこかに冒険の旅って気分だったんだよう。リーズンの背中はおいらが守るよう?」
「冗談はよせ! ついていくならメテオにしろ!!」
「いや、俺にはもうクロックがいるから定員オーバーだ。悪いなリーズン」
――実は、ガルーダにゴーグルのマジックアイテムを渡したとき、すでにこの流れは決まっていた。
「ガルーダ。このマジックアイテムをやるから、リーズンと一緒にいてやってくれ。あいつにはお前くらいついてやらないと不安だからな。このゴーグルは選別だ」
「そんなものなくてもおいらとメテオとリーズンの仲だよう? 水臭いよゥ――でもくれるっていうのを拒むのはリトルフィートの心情に反するから、ありがたく貰っておくよう!!」
すまん、リーズン。
正直うっとうしい連れだとは思うが、旅の道連れにガルーダはきっと役立つ。
俺についてこられても迷惑だし、先手を打たせてもらった。
「それじゃあ、みんな。またな――」
これで心置きなく旅立つことができる。
いざゆかん! 冒険の旅へ――
「メテオ様」
「えっ、誰?」
さっそうとマントを翻して離脱しようと思った俺に近づいてきたのは、どこにでもいそうな町娘だった。年の頃なら十代後半。胸のふくらみこそ控えめだがなかなか均整の取れた……いやそんなことはどうでもいい。
「この手紙を渡してくれって頼まれたの」
「誰から?」
「さあ? 二通あるけど、こっちのほうは絶対にひとりの時に読んでって」
町娘は茶色のおさげを揺らして、俺に二通の手紙を押し付けた。
一通は厳重に封がしてあり、一通は封すらしていない。
何かよくない罠かとも思ったが、町娘にはそれらしい気配はなく、手紙にも怪しげな魔力は感じない。
「じゃあ確かに渡したわよ。お金もらっちゃったから、しっかりしておきたいのよね。じゃあね」
旅の出鼻をくじかれた俺は、仕切り直すのもばつが悪い。
ひとまずは封のしていないガバガバな封筒から一枚の紙を引っぱり出した。
「――“メテオ。あなたに会いに戻る――マリアージュ”。えっ、マリア!?」
便箋には共通語でそれだけが書かれていた。
――マリアージュ・ロスタン。
俺たち流れ星の六人目。
リーズンのプレイヤーである遊佐みゆき。ミーちゃんの妹である、マリア。天本マリアのキャラクター。
こっちから見つけに行こうと思ったんだが、まさか向こうから――
「マリアージュが来るのか……よし、ガルーダ。行くぞ」
「マリアが来るんだったらもうちょっと残ってもよかったよう……ってまってよう。リーズン~」
俺が手紙を読み上げると、リーズンとガルーダはそそくさと歩いていってしまった。
「マリアが来るのね……まあいいわ。メテオがご指名なら」
「それじゃあ俺は帰って寝るか。またな、メテオ」
えっえっ?
アーティアもハムもそれだけ?
というか俺の旅立ちは……中止?
「ご主人様のお仲間のマリアージュ様。わたしはお目もじ叶ったことはないのですが……」
「北極星も今日から依頼のお仕事があるのー! 猫屋敷のおやっさんからだからマジメにやるニャ!!」
「魔の大森林にしか咲かない薬用の花なんですが、時期を逃すと花が萎れてしまうんです」
「か、帰って、きたら、またあ、会えるです」
えっえっえっ?
「それじゃあお師匠様。マリアージュ様がお泊りになられるようでしたら、エステルとメルの部屋をお使いいただいて構いませんので、よろしくお伝え下さい」
「メテオ様ー またニャー!!」
……行ってしまった。
なにこの取り残され感。
見送られる筈が見送る側になってるんですけど……!?
「ぶみゃーーーーお」
「……ああ、コーデリア。お前がいたか。おおよしよし」
コーデリアをモフらせてもらって心を癒やし、握りしめた手紙を見た。
もうひとつは俺がひとりで見ろっていってたな……
封蝋を取り去って、便箋を取り出す。
そこにはやはり共通語でこんなことが延々書かれていた。
“ひどいですよメテオ様!! どうしていつまでたっても定時連絡してくれないんですか!? こちらから連絡取ろうにも見知らぬ闇エルフがうろついていたり、テラスには鍵がかかてるし!! いつも誰かがそばにいるから手紙も渡せない!! あげく、どこかに冒険に出るっていうから俺も誰かに見られる危険を冒してこんなマネですよ!!”
「何の話なんだ……」
“しかも盗賊ギルドからメテオ様宛の手紙まで押し付けられたんですよ!? 一瞬、俺とメテオ様のつながりがバレたのかと思ってマジでビビりましたよ!! なんなんですか一体!? メテオ様が誰にも秘密にっていったんじゃないですか!!”
よくわからないが、この手紙の主と俺は顔見知り。というよりも、何か秘密を共有しているか、俺が何かを頼んでいたみたいな感じなのか。
“いいですか。今日の夜の丑三つですよ!? 絶対テラスの鍵を開けておいてくださいね!! 最近はいないみたいですけど、あの殺気出まくりの闇エルフも遠ざけてくださいね!? 絶対ですよ!! 本当にもう今日もシカトしたら知りませんからね!! Dより”
手紙の文面からはこの差出人。Dというの奴がキレっキレなのがよく伝わってきた。
「俺がまだメテオとしてこの世界にいたとき、交わされた約束事か何かか……?」
わからん。
だが、わかったことはある。
俺の新しい冒険は――
「中止ってことか……」
「ごみゃーーーーーお」
************************************************
ワールドトークRPG! 二部これにて完結となります…
お付き合いありがとうございます!
そしてこれからもよろしくお願いします…!!
ワールドトークRPG!文庫版の作業をしたり、
そろそろ違う小説を書いてみたりしたいので、
ちょっと長めのお休みをいただくのです。…あれ、これって休んでないですよね???
今後のワールドトークRPG! の予定ですが、三部が始まる前にいくつか本編にかかわる
閑話、異伝、外伝的なものを出しながら徐々にスタートしていきます。
おそらく三部は早めに終わり、ワールドトークRPG! という物語はひとまず閉幕です。
といっても、延々長く書いていきたいので、
まずは先にエンディングまでを書ききってから、
三部始まりからエンディングの間にこんな話が…
という形で、不定期にシリーズを続けていこうかな、と。
とくに別行動したリーズンなんかは、もうTRPGに関係しなくなっちゃう冒険ですしね(今更)
とにもかくにもエンディング。三部はここを目指していきます。
もちろん三部はようやく出てくるシックスメン。マリアージュが重要人物になります。
他のメンバーともども、マリアージュも皆様に気に入ってもらえればいいな…
それでは二部完結。
ちょっと肩の力を抜いて、最後まで走り抜ける準備を整えてきます。
読んでくれてありがとうです!!
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