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【番外編】竜人王アルファは惑わす
④
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翌朝。
起床すると、はやる気持ちを抑えて甲板に向かった。
そろそろ陸地が見えるはずだから。
しかし、あたり一面が湿った朝霧に覆われて、朝日が届かないほど白いもやもやに包まれている。
その中を、船はゆっくりと揺れながら進行していた。
「うわっ。すごい霧だな」
俺は思わず呟く。
竜人国が目視できるかと期待したのに、まったく見えなかった。
視界がほとんど塞がっている。
目を凝らしてみても無理だ。
波音だけが聞こえる。
甲板にオティリオの姿があり、俺以外のリサもハンもすでに揃っていた。
三人とも俺と同じことを考えたに違いない。
オティリオは姿勢よく手摺を掴み右足の膝を曲げつつ、じっと前方を凝視していた。
長旅で疲れを滲ませながらも、オティリオはまだまだ王族の気品が損なわれていない。
流石だ。
無造作に銀髪をひとつで纏めて、色気が漂う首筋を覗かせていた。
俺がその隣に佇むと、こちらを一瞥して、残念そうに口を開く。
「船長が言うには、この霧さえなければ、竜人国が見えてもおかしくないぐらいの距離にいるらしい」
「まったく何も見えませんけどね」
俺はそう答えた。
濃い霧だ。
霧の切れ間にでも、うっすら陸地が見えないだろうかと、身体を前のめりにしたら、背後にいたグスタに「危ないです」とすかさず止められてしまう。
「もっと近づくのを待つしかないな」
オティリオが諦めたように呟いた。
ハンも隣に並ぶ。
船酔いで憔悴した様子のハンは髪がぼさぼさで、ひどく皺の寄った服を身につけていた。
俺もとやかく言えたような身支度は整えていない。
似たような格好だ。
「これほどの濃い霧は、アンゼル王国ではなかなか見かけませんね。遠い異国の地に来たのだと感じます」
ハンが感慨深げに言う。
俺は頷いた。
「確かにしっとりと水分を含んだ空気は、経験したことがない感覚かも。アンゼルとは違いますね」
俺は出発前に竜人国について少しだけ調べたことを思い出す。
アンゼル王国と言語と文化は多少異なる。
言語に関しては俺たちが話す大陸語に似た竜人語という公用語があるらしいが、大陸語でも十分通じるらしい。
「これだけ視界が悪いと、ちょっと不気味だな」
周囲を見渡しつつ、オティリオが何気なく言った。
そのつぎの瞬間。
突如、風が荒れ狂う。
海面が白波を立てて、船体がぐらりと揺れた。
身体が大きく傾ぐ。
咄嗟にグスタが俺の腕を掴んだ。
リサとハンは膝を突き、オティリオは耐えて踏みとどまっている。
反射的に、俺たちは上空を見上げた。
何かとんでもなく重圧なものが迫ってくる気配がする。
その何かが空を切り裂くような不穏な音を響かせた。
霧を霧散させて現れたそれは――。
山のように巨大な……巨大な――翼を広げた青いドラゴン!
「な、に⁉︎」
俺は緊迫した声で叫んだ。
しかし身体は微動だにしない。
グスタが大きな身体で俺に覆い被さった。
ドラゴンが俺たちに向かって急降下する。
こちらを睨みつけるようなドラゴンの凶暴な赤い目。
燃えるようなその瞳が迫ってくる。
ジョージ号を破壊しようとしているのか。
それとも着陸でもしようというのか。
ドラゴンの鋭く尖った足爪が近距離まで接近した。
そのとたん、巨大な姿が忽然と消滅する。
「どう……なった?」
俺は瞬きを繰り返した。
今、目撃したものは幻か?
衝撃も音もなく、ドラゴンは消えた。
しかし、まだ船は大きく揺れている。
「今のは……?」
立ち竦むオティリオと俺は、視線を彷徨わせた。
すると船首のほうから、朝靄に紛れて見慣れぬ男が現れた。
船員でもない。
今までこんな男、見たことがないからだ。
その男は、ルシャードのような気品のある美麗さとは違うものの、荒々しいほどの美丈夫だった。
留め具が一切ない不思議な服を前で重ね合わせるようにして、腰で帯紐を結びながら気だるげに現れる。
呆然とする俺たちに大股で近寄ると、その男は唐突に口を開く。
「おや、やはりオティリオ殿下ではないか? 三年ぶりぐらいか? 覚えているか俺のこと?」
「あっ……あ、青の王!」
驚愕するオティリオが叫ぶように答えると、男は嬉しげに頷く。
「青の王……?」
信じられない思いで唖然とする俺は、オティリオの言葉を意味もなく繰り返した。
青の王はしっとりとした低音の甘い声で満足げに言う。
「忘れてないようだな」
青の王の緩くうねった髪は、黒色と青色がまじったかのような見たことのない髪色だった。
瞳の色は血のように禍々しい赤。
なんとも形容しがたい悪魔のような魅力がある。
「怪しい帆船を発見したから偵察しに来てみたら、なんだか懐かしい顔があってさ。つい降りてしまった」
「あ……あのドラゴンは……?」
戸惑いながらオティリオが訊くと、青の王はあっさりと答える。
「俺だけど?」
胸を撫で下ろすかのように、オティリオは瞼をゆっくりと閉じた。
青の王は、どこか楽しげな表情で続ける。
「なんだ、驚かせてしまったか? 大型竜型を見るのははじめてだったか?」
「……はい」
オティリオは大きな息を吐き出した。
ずっと息を詰めていたかのように。
俺もまだ心臓が高鳴っている。
竜人は大型の竜型に変化できると聞いてはいたが、あれほどに大きいとは。
人型からは、全く想像がつかない。
先ほどのドラゴンは凶暴そうな尻尾があったが、目の前の青の王にはない。
人型は俺たち人間とたいして変わらなかった。
「でもさ、ずいぶんと無作法なのはそっちだろ。王弟のくせに先触れもなしに他国に入国しようとするなんて」
皮肉げに青の王が告げると、オティリオは二秒ほど口ごもるが、朗らかに謝罪する。
「それについては、事情がありまして使者を送っている余裕がありませんでした。申し訳なく思っています。竜人国に到着次第、先触れを送ろうと考えておりました」
「まあ、いいさ。気にするな」
青の王は気さくに右手を振ると、オティリオは安堵の表情を覗かせた。
「ありがとうございます。再びお目にかかれて光栄です」
軽く頭を下げたオティリオに、青の王はじっと観察するように眺める。
「オティリオ殿下は、三年前にアンゼル王国で会ったときと変わらないな」
「青の王こそ、お変わりないようで……」
ふたりが交わす笑顔に、俺は少しだけ違和感を覚えた。すぐに忘れてしまうほどの違和感だ。
「それで。お忙しい王弟殿下が、遠路遥々我が国まで足を運んだ理由はなんだ? ただただ俺に会いたくて来たっていうわけでもなさそうだ」
「はい……国の危機を救うため参りました」
「ああ? もしかして、あれか……アンゼル王国のことは聞き及んでいるぞ。病が蔓延しているらしいな。その件か?」
「はい」
オティリオは、強い決意を秘めたような瞳で大きく頷いた。
青の王の表情からは、どんな感情も読み取れない。
ただオティリオに視線を注ぐ。
「……ちょうど退屈していたところだ。このまま王城に招待するから、詳しい事情は王城で聞くとしよう」
「ありがとうございます。そのお言葉に感謝いたします」
オティリオは胸に手を添えて礼を言う。
どこか掴みどころのない青の王は、そこではじめて俺に視線を向けた。
ばちりと目が合う。
青の王は首を傾げた。
「可愛い男を連れているじゃないか。まさかオティリオ殿下の番ではないだろうな?」
「違います。僕の番ではなく、ルシャード兄上の番です」
訂正するオティリオに合わせて、俺は深く頭を下げて慇懃に挨拶する。
「はじめまして、王弟妃マイネと申します。このたびは突然の訪問となり失礼いたしました。お目にかかれたこと、大変光栄でございます」
「なんと。あの冷血漢ルシャード殿下の番とは興味深い。よく顔を見せてくれ」
青の王に顎を触れられて、顔を上げられた。
俺の容姿は、いたって平凡だと自覚している。
じっくりと見たところで、面白みはないだろうに。
それよりも青の王のほうが見応えがあった。
綺麗な顔が間近に近寄り、炎のような紅い瞳に射竦められる。
特に左目に吸い寄せられた。
その瞳孔の中に、稲妻のような細い紋様がひときわ鮮やかに浮かび上がっている。
その紋様がわずかに脈打つように見えた。
まるで、左目の中に何かが生きているかのように。
「青の王、そろそろマイネから離れてくれませんか……」
オティリオの制止する声に、俺ははっとして目を逸らす。
青の王の左目に不思議な力が宿っているようだった。
これが王の証なのか。
竜の王は前王から王の紋章を身体の一部に引き継ぐと聞いている。
「ん? マイネは何も嫌がってなさそうだけど」
くくっと愉快そうに青の王は笑った。
オティリオは憮然とする。
そのとき、青の王の肩に張りつく青い鱗がちらりと覗く。
親指の爪よりも少し大きいほどの青い鱗。
いくつもの水滴が肌に密着しているかのようだ。
その後、青の王の誘導に従い、ジョージ号は竜人国王城に向かった。
王の城は湖上に浮かぶ巨大な岩山に築かれていた。
湖ではなく海湾といったほうが正しいのかもしれない。
天然の要塞だ。
港湾の入り江が王城門の役割を担っているようで、本来ならば予定にないジョージ号が侵入を許されることなど決してないだろう。
まだ霧がわずかに立ち込めて幻想的な光景が広がっている。
いくつもの尖塔が天空を貫くように聳え立つ王城は、竜の王の権威を象徴しているかのようだ。
ジョージ号は滑り込むように桟橋に着岸した。
「ようこそ。我が竜人国へ」
青の王が言った。
起床すると、はやる気持ちを抑えて甲板に向かった。
そろそろ陸地が見えるはずだから。
しかし、あたり一面が湿った朝霧に覆われて、朝日が届かないほど白いもやもやに包まれている。
その中を、船はゆっくりと揺れながら進行していた。
「うわっ。すごい霧だな」
俺は思わず呟く。
竜人国が目視できるかと期待したのに、まったく見えなかった。
視界がほとんど塞がっている。
目を凝らしてみても無理だ。
波音だけが聞こえる。
甲板にオティリオの姿があり、俺以外のリサもハンもすでに揃っていた。
三人とも俺と同じことを考えたに違いない。
オティリオは姿勢よく手摺を掴み右足の膝を曲げつつ、じっと前方を凝視していた。
長旅で疲れを滲ませながらも、オティリオはまだまだ王族の気品が損なわれていない。
流石だ。
無造作に銀髪をひとつで纏めて、色気が漂う首筋を覗かせていた。
俺がその隣に佇むと、こちらを一瞥して、残念そうに口を開く。
「船長が言うには、この霧さえなければ、竜人国が見えてもおかしくないぐらいの距離にいるらしい」
「まったく何も見えませんけどね」
俺はそう答えた。
濃い霧だ。
霧の切れ間にでも、うっすら陸地が見えないだろうかと、身体を前のめりにしたら、背後にいたグスタに「危ないです」とすかさず止められてしまう。
「もっと近づくのを待つしかないな」
オティリオが諦めたように呟いた。
ハンも隣に並ぶ。
船酔いで憔悴した様子のハンは髪がぼさぼさで、ひどく皺の寄った服を身につけていた。
俺もとやかく言えたような身支度は整えていない。
似たような格好だ。
「これほどの濃い霧は、アンゼル王国ではなかなか見かけませんね。遠い異国の地に来たのだと感じます」
ハンが感慨深げに言う。
俺は頷いた。
「確かにしっとりと水分を含んだ空気は、経験したことがない感覚かも。アンゼルとは違いますね」
俺は出発前に竜人国について少しだけ調べたことを思い出す。
アンゼル王国と言語と文化は多少異なる。
言語に関しては俺たちが話す大陸語に似た竜人語という公用語があるらしいが、大陸語でも十分通じるらしい。
「これだけ視界が悪いと、ちょっと不気味だな」
周囲を見渡しつつ、オティリオが何気なく言った。
そのつぎの瞬間。
突如、風が荒れ狂う。
海面が白波を立てて、船体がぐらりと揺れた。
身体が大きく傾ぐ。
咄嗟にグスタが俺の腕を掴んだ。
リサとハンは膝を突き、オティリオは耐えて踏みとどまっている。
反射的に、俺たちは上空を見上げた。
何かとんでもなく重圧なものが迫ってくる気配がする。
その何かが空を切り裂くような不穏な音を響かせた。
霧を霧散させて現れたそれは――。
山のように巨大な……巨大な――翼を広げた青いドラゴン!
「な、に⁉︎」
俺は緊迫した声で叫んだ。
しかし身体は微動だにしない。
グスタが大きな身体で俺に覆い被さった。
ドラゴンが俺たちに向かって急降下する。
こちらを睨みつけるようなドラゴンの凶暴な赤い目。
燃えるようなその瞳が迫ってくる。
ジョージ号を破壊しようとしているのか。
それとも着陸でもしようというのか。
ドラゴンの鋭く尖った足爪が近距離まで接近した。
そのとたん、巨大な姿が忽然と消滅する。
「どう……なった?」
俺は瞬きを繰り返した。
今、目撃したものは幻か?
衝撃も音もなく、ドラゴンは消えた。
しかし、まだ船は大きく揺れている。
「今のは……?」
立ち竦むオティリオと俺は、視線を彷徨わせた。
すると船首のほうから、朝靄に紛れて見慣れぬ男が現れた。
船員でもない。
今までこんな男、見たことがないからだ。
その男は、ルシャードのような気品のある美麗さとは違うものの、荒々しいほどの美丈夫だった。
留め具が一切ない不思議な服を前で重ね合わせるようにして、腰で帯紐を結びながら気だるげに現れる。
呆然とする俺たちに大股で近寄ると、その男は唐突に口を開く。
「おや、やはりオティリオ殿下ではないか? 三年ぶりぐらいか? 覚えているか俺のこと?」
「あっ……あ、青の王!」
驚愕するオティリオが叫ぶように答えると、男は嬉しげに頷く。
「青の王……?」
信じられない思いで唖然とする俺は、オティリオの言葉を意味もなく繰り返した。
青の王はしっとりとした低音の甘い声で満足げに言う。
「忘れてないようだな」
青の王の緩くうねった髪は、黒色と青色がまじったかのような見たことのない髪色だった。
瞳の色は血のように禍々しい赤。
なんとも形容しがたい悪魔のような魅力がある。
「怪しい帆船を発見したから偵察しに来てみたら、なんだか懐かしい顔があってさ。つい降りてしまった」
「あ……あのドラゴンは……?」
戸惑いながらオティリオが訊くと、青の王はあっさりと答える。
「俺だけど?」
胸を撫で下ろすかのように、オティリオは瞼をゆっくりと閉じた。
青の王は、どこか楽しげな表情で続ける。
「なんだ、驚かせてしまったか? 大型竜型を見るのははじめてだったか?」
「……はい」
オティリオは大きな息を吐き出した。
ずっと息を詰めていたかのように。
俺もまだ心臓が高鳴っている。
竜人は大型の竜型に変化できると聞いてはいたが、あれほどに大きいとは。
人型からは、全く想像がつかない。
先ほどのドラゴンは凶暴そうな尻尾があったが、目の前の青の王にはない。
人型は俺たち人間とたいして変わらなかった。
「でもさ、ずいぶんと無作法なのはそっちだろ。王弟のくせに先触れもなしに他国に入国しようとするなんて」
皮肉げに青の王が告げると、オティリオは二秒ほど口ごもるが、朗らかに謝罪する。
「それについては、事情がありまして使者を送っている余裕がありませんでした。申し訳なく思っています。竜人国に到着次第、先触れを送ろうと考えておりました」
「まあ、いいさ。気にするな」
青の王は気さくに右手を振ると、オティリオは安堵の表情を覗かせた。
「ありがとうございます。再びお目にかかれて光栄です」
軽く頭を下げたオティリオに、青の王はじっと観察するように眺める。
「オティリオ殿下は、三年前にアンゼル王国で会ったときと変わらないな」
「青の王こそ、お変わりないようで……」
ふたりが交わす笑顔に、俺は少しだけ違和感を覚えた。すぐに忘れてしまうほどの違和感だ。
「それで。お忙しい王弟殿下が、遠路遥々我が国まで足を運んだ理由はなんだ? ただただ俺に会いたくて来たっていうわけでもなさそうだ」
「はい……国の危機を救うため参りました」
「ああ? もしかして、あれか……アンゼル王国のことは聞き及んでいるぞ。病が蔓延しているらしいな。その件か?」
「はい」
オティリオは、強い決意を秘めたような瞳で大きく頷いた。
青の王の表情からは、どんな感情も読み取れない。
ただオティリオに視線を注ぐ。
「……ちょうど退屈していたところだ。このまま王城に招待するから、詳しい事情は王城で聞くとしよう」
「ありがとうございます。そのお言葉に感謝いたします」
オティリオは胸に手を添えて礼を言う。
どこか掴みどころのない青の王は、そこではじめて俺に視線を向けた。
ばちりと目が合う。
青の王は首を傾げた。
「可愛い男を連れているじゃないか。まさかオティリオ殿下の番ではないだろうな?」
「違います。僕の番ではなく、ルシャード兄上の番です」
訂正するオティリオに合わせて、俺は深く頭を下げて慇懃に挨拶する。
「はじめまして、王弟妃マイネと申します。このたびは突然の訪問となり失礼いたしました。お目にかかれたこと、大変光栄でございます」
「なんと。あの冷血漢ルシャード殿下の番とは興味深い。よく顔を見せてくれ」
青の王に顎を触れられて、顔を上げられた。
俺の容姿は、いたって平凡だと自覚している。
じっくりと見たところで、面白みはないだろうに。
それよりも青の王のほうが見応えがあった。
綺麗な顔が間近に近寄り、炎のような紅い瞳に射竦められる。
特に左目に吸い寄せられた。
その瞳孔の中に、稲妻のような細い紋様がひときわ鮮やかに浮かび上がっている。
その紋様がわずかに脈打つように見えた。
まるで、左目の中に何かが生きているかのように。
「青の王、そろそろマイネから離れてくれませんか……」
オティリオの制止する声に、俺ははっとして目を逸らす。
青の王の左目に不思議な力が宿っているようだった。
これが王の証なのか。
竜の王は前王から王の紋章を身体の一部に引き継ぐと聞いている。
「ん? マイネは何も嫌がってなさそうだけど」
くくっと愉快そうに青の王は笑った。
オティリオは憮然とする。
そのとき、青の王の肩に張りつく青い鱗がちらりと覗く。
親指の爪よりも少し大きいほどの青い鱗。
いくつもの水滴が肌に密着しているかのようだ。
その後、青の王の誘導に従い、ジョージ号は竜人国王城に向かった。
王の城は湖上に浮かぶ巨大な岩山に築かれていた。
湖ではなく海湾といったほうが正しいのかもしれない。
天然の要塞だ。
港湾の入り江が王城門の役割を担っているようで、本来ならば予定にないジョージ号が侵入を許されることなど決してないだろう。
まだ霧がわずかに立ち込めて幻想的な光景が広がっている。
いくつもの尖塔が天空を貫くように聳え立つ王城は、竜の王の権威を象徴しているかのようだ。
ジョージ号は滑り込むように桟橋に着岸した。
「ようこそ。我が竜人国へ」
青の王が言った。
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