星わたりの妖精

くみちよ

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星わたりの妖精

3 約束

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アンソニーが目を覚ますと、そこは辺り一面金色に輝く星でした。

草も、木も、何もありません。ただ、ツルツルの氷のような地面が光を放っています。

マリアがいないと気づいたアンソニーは、立ち上がってマリアを呼びました。しかし、どこからも声は帰ってきません。

「どこなの、マリア!」

寂しくて、怖くて、アンソニーは俯いてしまいました。

そして、透き通る冷たい地面の中に、人を見つけました。

「わあ!」

女の人が、透明な地面に埋まっています。

その人だけではありません。
よく見ると、そこかしこに、人が埋まっているのです。

しかも、皆んな決まった方向に頭を向け、仰向けに寝ています。
目は閉じて、手は胸の上で組んでいます。

誰一人として、動きません。

アンソニーは、怖くなって、走り出しました。 

「いやだ!いやだ!助けて!お母さん!!お父さん!」


「おいで」


走り続けていると、どこからか、女の人の声が聞こえてきました。

「お母さん?お母さんなの?」

アンソニーは、辺りを探しましたが、やはり何もありませんし、地面の中以外には、誰もいません。

「こっちよ」

下から声がして、アンソニーは下を向きました。

「ああ、そんな!」

そこには、アンソニーのお父さんと、お母さんがいました。

目を閉じて、並んで眠っています。


アンソニーは、全てを思い出しました。


ポロリと、何かがアンソニーの目から地面に落ちて、転がっていきます。


「僕のパパとママは、もういないんだ!

僕が100個の星を渡り、幸せを届けたら、僕もパパもママも一緒に、星に帰れると約束したのに!」


アンソニーは、その場に崩れ落ちて、わっと泣き出しました。

ポロポロ、ポロポロ、目からキャンディがこぼれ落ちてきて、止まりません。



アンソニーの家族は、羽の生えた妖精の一族でした。

そして、妖精のすむ、緑豊かな小さな星で仲良く暮らしていました。

しかし、ある日突然、真っ白で大きな魔女が現れて、妖精を捕まえてしまいました。

それは、『星食いの魔女』でした。
宇宙の星々を食い荒らして、自分をどんどん大きくしている、恐ろしい魔女です。

妖精達は抵抗しましたが、次々にカゴに入れられ、どこかへ運ばれていきました。

「パパと、ママを、そして友達を返して欲しければ、私の言うことを聞きなさい。」

そう言われて、1人残された幼い日のアンソニーは、泣きながらうなづいたのです。

その日から、アンソニーの首には、金色の首飾りが付いています。

アンソニーが何も思い出さずに、仕事ができるように。

そして、約束を守らなければ、その身をチリにしてしまうと、呪いをかけるために。

「あなたは、今日からその羽で星々を飛び回り、皆んなの願いを叶えて、幸せにするのです。
新しい星についたら、前の事は忘れなさい。いいですね?約束です。

約束を守れなかったら、パパもママも、あなたも、みーんな、空のチリにしてしまいますからね」


それからアンソニーはいくつもの星をわたりました。

沢山の友達が出来ましたが、すぐに忘れてしまいました。

「100個の星で、それができたら、パパとママを返しましょう」

しかし、その約束が果たされる事は、もうありません。
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