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星わたりの妖精
4 最後のねがいごと
しおりを挟むアンソニーは、悲しくて悔しくて、ずっと泣いていました。
アンソニーの周りには、透明な、綺麗なキャンディが沢山転がっています。
「ママ!ママ!!私よ、マリアよ!!!」
突然、マリアの声が聞こえて、アンソニーは顔を上げました。
見ると、アンソニーの近くに穴が開いていて、下へ続く階段が伸びています。
「マリア?マリアなのかい?」
アンソニーは、涙でぐちゃぐちゃの顔を拭きながら、階段を降りていきました。
暗くて、気味の悪い階段です。
さっきまで黄金に輝く地面に立っていたのが嘘のよう。
階段が終わると、大きな眩しい広場へ出ました。
天井からは、いくつもいくつも、星の形の灯りが吊り下がっており、キラキラ、キラキラ輝きます。
そして、広場の奥に、星食いの魔女がいました。
大きな玉座に座っています。
白くて長い髪は、フワフワとしていて、魔女の綺麗な顔を引き立てます。
真っ白なドレスは、まるで雲が魔女の体にくっついたようでした。
階段から玉座の広間へ行くまで、一本の橋が架かっていました。
下は、底の見えない暗い闇。
落ちたら、ひとたまりもありません。
マリアは、橋の手前で、魔女を見て、嬉しそうに笑っています。
「ママ!今行くからね!」
「ダメだよ!あれは君のママなんかじゃない!君のママは、もうずっと前に、食べられちゃったんだ!」
アンソニーは駆け出して、マリアの小さな手をギュッと握りました。
「いいえ、私のママよ!これからはずっと、ママと一緒!」
しかし、マリアは聞きません。
茶色の髪を、ふわふわと漂わせて、首をブンブン横に振ります。
「さぁおいで、わたしの可愛い娘、さぁ早く」
橋の向こうで、魔女が両手を広げて待っています。
「ダメだ!ダメだよ!行っちゃダメだ!君も食べられちゃう!
わかるだろう?アレが好きなのは、幸せと甘いもの。
僕に幸せを届けさせるのは、幸せになった君や、他の星の人を食べるためなんだ!!
どうしても行くというのなら、僕も行く!どうせ最後の願いを聞いていない僕は、死んでしまうから!」
アンソニーが、そう言ってマリアの手をギュッと強く握ると、マリアはキョトンとした顔をしました。
そして、次に、ニッコリと笑います。
「私の願い事は、最初から決まっているわ。」
そのブルーの目が、アンソニーをじっと見つめます。
「あなたが、永遠に自由でいられますように。」
アンソニーの首飾りが、音を立てて壊れました。
そしてキラキラと光りながら流れ去り、風に乗って消えてしまいました。
その拍子に、アンソニーの手が、マリアから離れていきます。
そして、マリアは橋へと駆け出してしまいました。
「マリア!」
アンソニーが後を追おうとすると、突然、地面が傾きました。
星が、ガタガタと音を立てて崩れ始めたのです。
「何をした!小娘!!!」
魔女が、ヒステリックに叫びながら玉座から立ち上がります。
しかし、もう遅すぎました。
黄色い魔女の星は、どんどん崩れて、バラバラになっていきます。
橋は、ついに折れてしまいました。
「さようなら!アンソニー!!私のお友達!さようなら!!さようなら!!!」
マリア橋の向こうで、精一杯に手を大きく振って、大声でさよならを言いました。
「よくも!!」
マリアに、魔女が襲いかかろうとしているのが見えます。
「マリア!!!!!」
アンソニーは必死に手を伸ばしますが、マリアには届きません。
最後にアンソニーが見たのは、マリアの目から溢れる、キラキラ光る美しいキャンディと、くしゃくしゃになった小さな顔でした。
星が砕けて、金色に光るカケラが降ってきます。
「いつか必ず、迎えに行くから!だから待ってて!!」
それから、辺りは真っ白な光で溢れ、アンソニーは、その中に吸い寄せられるように落ちていきました。
アンソニーの背中には、とても綺麗な透き通る羽がついていました。
アンソニーは、白い光の中を飛びました。
どこまでも、どこまでも。
だって彼は、もう自由なのです。
そう、永遠に。
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