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第九章 揺れる
大切な思い
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リウの処刑が決まり、号外が配られたという情報は、すぐにシュレアの耳にも入ってきた。その知らせを聞いたシュレアはいてもたってもいられずに、リウの牢に足を運んだ。
牢の前の兵士は何故か眠っており、シュレアはうまく入り込むことが出来た。
懐かしい風景、ここは、昔、自分が捕えられていた場所。そこに今度は、自分の恩人が捕えられているという。実感の湧かなかった情報は、目の前で冷たいコンクリートの上、薄い1枚のシートの上に座るリウの姿を見て一気に現実味を帯びる。久しぶりに見るリウの姿。それは、最後に見た姿とは全く違うもので。ひらひらと可愛らしいドレスはシンプルな白いワンピースとカーディガンに、いつも整えられていたふわふわの髪はボサボサと乱れていた。
「リウ様…っ」
意図的に発したというよりは、自然に零れた言葉。その声に気づいたのか、リウの視線がシュレアに向けられた。
「シュレア…?」
「リウ様…リウ様…っ」
思わず駆け寄った。少し痩せたように見えるその体を抱きしめたかったが、柵がそれを阻む。
「久しぶりに名前を呼ばれた気がする」
そう言ってリウが笑った。彼女はどうやって入ってきたのか、なぜここに来たのかを聞くこともなく、まるでシュレアが来ることを知っていたかのようだった。しかし、シュレアはそのことを特に気にすることもなく、ただ、以前のような笑顔に安心していた。
「会いたかった…」
伝えるべき言葉は沢山あるのに上手く出てこない。崩れ落ちて座り込み、やっと絞り出した一言は、この数日何度も思った気持ち。けれど、帰ってきた返事は思いもよらないものだった。
「私は、会いたくなかった」
てっきり、リウも同じ気持ちでいてくれてると思っていたシュレアには、鈍器で頭を殴られたような衝撃だった。面会出来なかったことだって、きっと城から何かしらの命令が下ってたとか、やむを得ない事情なのだと信じてきたが、リウから発せられた言葉に、保ってきた気持ちが崩れていく。しかし、不思議と涙は出なかった。
なんとか顔を上げるとこちらを見るリウと目が合った。その表情は先ほどの笑顔とはうってかわり、非常に悲しそうな、今にも泣き出しそうな表情だった。
「あなたに会うと、決意が揺らぐ」
「決意…?」
「うん、決意」
カシャ、と柵を掴んだリウの手は震えていた。
「私ね、火炙りにされるんだって」
「城下の人たちは、私のことを"魔女"だって」
「兵士たちも私のことを番号で呼ぶの」
「リウ様!!!」
ガシャン!柵が大きな音を立てる。シュレアはリウの手に自分の手を重ねるようにして握る。彼女の震えを止めるように。リウの瞳からは涙がこぼれ落ちていた。
「私があなたの名前を呼びます!あなたはリウ、この国の姫で、世間知らずで、でも悪を良しとはしない、そんな私の恩人です!」
シュレアの瞳からもボロボロと涙がこぼれ落ち、泣き叫ぶ。
「だから、あなたがしてくれたように、私は、私が、今度はあなたを」
言葉がうまくまとまらない。それでも必死に言葉を紡ごうとする。リウはそれを黙って聞いていた。
「リウ様が私をここから出してくれて、冤罪を晴らしてくれて、その上、裏路地の孤児だった私を傍に置いてくださって…私は沢山のものを頂きました。初めて見たもの、キラキラしたもの、世界はこんなに綺麗なもので溢れてることを知ったんです!」
一気にそこまで言い切ると何度か呼吸を繰り返し、また口を開く。
「ねえリウ様。本当のことを話してください、私はあなたを救いたい、あなたにここで死んで欲しく、ない」
最後の方は聞き取れないんじゃないかと思うくらい、掠れてしまった。それを聞いていたリウはゆっくりと言葉を紡ぎ出す。
「あなたの泣き顔を見たのは、どれくらいぶりかな」
「リウ様…」
リウの涙はいつの間にか止まっていた。
「分かった、話すよ。あなたの中では、"魔女"じゃなくて、1人の人で、"リウ"のままでありたいから」
そう言って、リウはぽつり、ぽつりと話し始めた。
牢の前の兵士は何故か眠っており、シュレアはうまく入り込むことが出来た。
懐かしい風景、ここは、昔、自分が捕えられていた場所。そこに今度は、自分の恩人が捕えられているという。実感の湧かなかった情報は、目の前で冷たいコンクリートの上、薄い1枚のシートの上に座るリウの姿を見て一気に現実味を帯びる。久しぶりに見るリウの姿。それは、最後に見た姿とは全く違うもので。ひらひらと可愛らしいドレスはシンプルな白いワンピースとカーディガンに、いつも整えられていたふわふわの髪はボサボサと乱れていた。
「リウ様…っ」
意図的に発したというよりは、自然に零れた言葉。その声に気づいたのか、リウの視線がシュレアに向けられた。
「シュレア…?」
「リウ様…リウ様…っ」
思わず駆け寄った。少し痩せたように見えるその体を抱きしめたかったが、柵がそれを阻む。
「久しぶりに名前を呼ばれた気がする」
そう言ってリウが笑った。彼女はどうやって入ってきたのか、なぜここに来たのかを聞くこともなく、まるでシュレアが来ることを知っていたかのようだった。しかし、シュレアはそのことを特に気にすることもなく、ただ、以前のような笑顔に安心していた。
「会いたかった…」
伝えるべき言葉は沢山あるのに上手く出てこない。崩れ落ちて座り込み、やっと絞り出した一言は、この数日何度も思った気持ち。けれど、帰ってきた返事は思いもよらないものだった。
「私は、会いたくなかった」
てっきり、リウも同じ気持ちでいてくれてると思っていたシュレアには、鈍器で頭を殴られたような衝撃だった。面会出来なかったことだって、きっと城から何かしらの命令が下ってたとか、やむを得ない事情なのだと信じてきたが、リウから発せられた言葉に、保ってきた気持ちが崩れていく。しかし、不思議と涙は出なかった。
なんとか顔を上げるとこちらを見るリウと目が合った。その表情は先ほどの笑顔とはうってかわり、非常に悲しそうな、今にも泣き出しそうな表情だった。
「あなたに会うと、決意が揺らぐ」
「決意…?」
「うん、決意」
カシャ、と柵を掴んだリウの手は震えていた。
「私ね、火炙りにされるんだって」
「城下の人たちは、私のことを"魔女"だって」
「兵士たちも私のことを番号で呼ぶの」
「リウ様!!!」
ガシャン!柵が大きな音を立てる。シュレアはリウの手に自分の手を重ねるようにして握る。彼女の震えを止めるように。リウの瞳からは涙がこぼれ落ちていた。
「私があなたの名前を呼びます!あなたはリウ、この国の姫で、世間知らずで、でも悪を良しとはしない、そんな私の恩人です!」
シュレアの瞳からもボロボロと涙がこぼれ落ち、泣き叫ぶ。
「だから、あなたがしてくれたように、私は、私が、今度はあなたを」
言葉がうまくまとまらない。それでも必死に言葉を紡ごうとする。リウはそれを黙って聞いていた。
「リウ様が私をここから出してくれて、冤罪を晴らしてくれて、その上、裏路地の孤児だった私を傍に置いてくださって…私は沢山のものを頂きました。初めて見たもの、キラキラしたもの、世界はこんなに綺麗なもので溢れてることを知ったんです!」
一気にそこまで言い切ると何度か呼吸を繰り返し、また口を開く。
「ねえリウ様。本当のことを話してください、私はあなたを救いたい、あなたにここで死んで欲しく、ない」
最後の方は聞き取れないんじゃないかと思うくらい、掠れてしまった。それを聞いていたリウはゆっくりと言葉を紡ぎ出す。
「あなたの泣き顔を見たのは、どれくらいぶりかな」
「リウ様…」
リウの涙はいつの間にか止まっていた。
「分かった、話すよ。あなたの中では、"魔女"じゃなくて、1人の人で、"リウ"のままでありたいから」
そう言って、リウはぽつり、ぽつりと話し始めた。
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