21 / 65
第一章
20 ~社員証みたいなものだろうか
しおりを挟む閑話
──────────
智美が昼食を終えて、自室に入ると、侍女頭のミシェルが、ベットメーキングをしていた。
「あ、ありがとうそざいます。置いといていただけたら、自分でしますので」
智美はまさか侍女頭がベットメーキングをしているとは思ってなかったので、慌ててそういう。
『サトミ様にそんなことはさせられません。こんな時間にどうかしましたか?』
こんな時間に、自室へ戻ってきた智美に疑問を覚えたミシェルは智美に問いかける、ちなみにミシェルは最初に盤園での部屋に入ってきた人物だ。
「ペンが書けなくなってきたから、インクを補充しようと思って…」
食堂で、ちょっとしたことを書こうとしたら字がかすれてきていたのだ、部屋に戻れば補充できるだろうと安易に戻ってきたのだが、はたと疑問に思う。万年筆だと思い込んでいたので簡単に補充できると考えていたが、もしかして違う作りならさっぱりかえ方が分からない。
『私が、やりましょうか?』
言いよどんだことに気付いたのか、ミシェルが言い出した。その言葉に、ありがたく思いお願いする。
ミシェルはペンを受け取り、事務机によるがそこに置いてあった、カワセミのガラスの置物を見て眉をひそめた。
『すみませんサトミ様、補充用のインクが切れております。今お持ちしますので、少々お待ちください』
「いえ、お手数かけます」
補充の仕方を見ようと、そばに寄っていた智美はかえって手間をかけてしまったようで、申し訳ない。
ミシェルは、智美の言葉にいいえと答えながら、自分の胸に着けてあるブローチに手を置いた。
『ミシェルです。代えのインクをサトミ様の部屋まで持ってくる様手配してください』
〔……、…〕
『…、そうですね、二瓶持って来てください』
〔……、…〕
相手の声は聞こえなかったが、まるでトランシーバーのようなやり取りに、智美は不思議そうにそれを見る。そういえば、お城で働いてる人は皆形は違うけれど、似たようなブローチを着けていたなと思う。
「それって…」
『?ああ、水章ですか?城で働く者は皆つけておりますよ。一対一ならこれで、連絡できます』
智美は、興味を持ちミシェルにいろいろ質問すして聞き出したところ、ICチップ入りの社員証みたいなものだろうかと思う。
小さな香水瓶の様になっていて、中に青泉水を入れて、宝石や半貴石、金銀等の栓がしてある、栓の部分に身分的なことや、制限などの記録の魔法がかかっていて、先ほどの通信などができる魔法もかかっているが、高難度の魔法の技術が使われており、己自身で使おうとすると、魔力量の消費が激しいので、だれでも使えるようにこのような形になったそうだ。
「へえ、身分証みたいなものなんですね」
『ええ、形や大きさ、使っている石などで、所属しているところと、役職などが分かります』
「失くしたり、盗まれちゃったら大変ですね」
『これらは、自分の魔力に反応して使えるようになってますので、成り変わりなどの悪用はできなくなってますし、お金に換金するにも、だれのものか特定するものですから、だれも引き取ってくれません』
そんな話をしていると、部屋をノックする音がした。
『ミシェル様、おもちしました』
ドアの外からした声は、男性の物だった。
ミシェルはざわざドアの外へ出て、インクの瓶を受け取ってきた。
受け取った瓶はショート缶の缶コーヒーぐらいの大きさで2本持っている。
そのままミシェルは机の方へ行くので、智美も近寄ってどうするのかを見る。
机の上にあるカワセミの置物の背中の羽の部分をスライドさせ外し、インクを注ぐ。すると、透明だったカワセミの嘴に青黒い色がつきだした。こぼれない程度に2本目の瓶も入れると、蓋をする。
『これで、しばらくここには補充しなくて済むと思います、なくなったりほかに足りない物がありましたらお申し付けください』
ミシェルに言葉が通じる様になって初の時もそう言われたが、ミシェルに会えるのは、朝ぐらいのなので、水章が有ったら良いなと思う。
「水章って、私には頂けないですよね」
恐る恐る言うと、ミシェルは智美をまじまじと不思議そうに見ていたが、はっと気づいた様に話しだした。
『サトミ様は魔法が使えないんでしたね、青魔晶のピアスをしてらっしゃいますから、それが水章と同じ役目をしますが、通信の魔法となりますと、カイ皇子にお願いして組み込んでもらえばどうにかなりましょうか。そのことについては詳しくないので、申し訳ありませんが、カイ皇子にお尋ねください』
ミシェルはそう言いながら、ペンを持ち、本体のカバーを外して中のインクの部分をさらした、そこはただの筒ではなく不思議な形状になっているガラスの小瓶だった。
ミシェルはその小瓶をペン先が付いてない逆側の窪みに、カワセミの嘴を差し込む、すると小瓶がみるみる満たされていった。
満杯いなった本体を、こぼさないようそのまま刺し口を上にしたまま、ミシェルは本体のカバーをつけしっかりとねじを締めた。智美はその様子をじっと見つめる。
ミシェルは最後にキャップを外して、液だれしてないか確認して元に戻して智美に手渡す。
「ありがとうございます。水章の件はカイ皇子に聞いてみます」
そう言いながら受け取って、智美は早速今の手順を忘れないうちに書き付けておこうと、メモに図を書き出した。覚えてられるとは思うのだが、毎日する作業ではないので、ちょっと念のためだ。
書き終わった紙を机にしまう。この作業をするのは、部屋だけだろうから持ち歩く必要性は無いだろう。
『サトミ様、午後はどのようなご予定で』
「午後は、昨日できなかった城内の案内をタンザ様にしていただくのです。カイ皇子がすると言ってたんだけど、ミエル様がタンザ様にお願いしたみたいです」
ミシェルの問いに、智美はそう答える。ミエルが案内するのかとおもいきや、ミエルは泉神殿の案内はできるが、城内では制限が邪魔で案内が中途半端になってしまうと思ったようで、城内での制限があまりない、タンザに頼んだようだ。
「あ、お待たせしては悪いので、もう行きますね~。ミシェルさんお手数おかけしました」
そう智美は言い残して、部屋を出て行った。
──────────
後書き
作者的こだわりの話、一応細かい布石としての意味合いもあります。
なくてもいいんでしょうが…。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
魔性の大公の甘く淫らな執愛の檻に囚われて
アマイ
恋愛
優れた癒しの力を持つ家系に生まれながら、伯爵家当主であるクロエにはその力が発現しなかった。しかし血筋を絶やしたくない皇帝の意向により、クロエは早急に後継を作らねばならなくなった。相手を求め渋々参加した夜会で、クロエは謎めいた美貌の男・ルアと出会う。
二人は契約を交わし、割り切った体の関係を結ぶのだが――
私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】
Lynx🐈⬛
恋愛
ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。
それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。
14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。
皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。
この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。
※Hシーンは終盤しかありません。
※この話は4部作で予定しています。
【私が欲しいのはこの皇子】
【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】
【放浪の花嫁】
本編は99話迄です。
番外編1話アリ。
※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。
巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた
狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている
いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった
そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた
しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた
当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった
この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる