清色恋慕 〜溺れた先は異世界でした〜

月峰

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第一章

20 ~社員証みたいなものだろうか

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閑話

──────────



 智美が昼食を終えて、自室に入ると、侍女頭のミシェルが、ベットメーキングをしていた。

「あ、ありがとうそざいます。置いといていただけたら、自分でしますので」

 智美はまさか侍女頭がベットメーキングをしているとは思ってなかったので、慌ててそういう。

『サトミ様にそんなことはさせられません。こんな時間にどうかしましたか?』

 こんな時間に、自室へ戻ってきた智美に疑問を覚えたミシェルは智美に問いかける、ちなみにミシェルは最初に盤園での部屋に入ってきた人物だ。

「ペンが書けなくなってきたから、インクを補充しようと思って…」

 食堂で、ちょっとしたことを書こうとしたら字がかすれてきていたのだ、部屋に戻れば補充できるだろうと安易に戻ってきたのだが、はたと疑問に思う。万年筆だと思い込んでいたので簡単に補充できると考えていたが、もしかして違う作りならさっぱりかえ方が分からない。

『私が、やりましょうか?』

 言いよどんだことに気付いたのか、ミシェルが言い出した。その言葉に、ありがたく思いお願いする。
 ミシェルはペンを受け取り、事務机によるがそこに置いてあった、カワセミのガラスの置物を見て眉をひそめた。

『すみませんサトミ様、補充用のインクが切れております。今お持ちしますので、少々お待ちください』

「いえ、お手数かけます」

 補充の仕方を見ようと、そばに寄っていた智美はかえって手間をかけてしまったようで、申し訳ない。
 ミシェルは、智美の言葉にいいえと答えながら、自分の胸に着けてあるブローチに手を置いた。

『ミシェルです。代えのインクをサトミ様の部屋まで持ってくる様手配してください』

 〔……、…〕

『…、そうですね、二瓶持って来てください』

 〔……、…〕

 相手の声は聞こえなかったが、まるでトランシーバーのようなやり取りに、智美は不思議そうにそれを見る。そういえば、お城で働いてる人は皆形は違うけれど、似たようなブローチを着けていたなと思う。

「それって…」

『?ああ、水章ですか?城で働く者は皆つけておりますよ。一対一ならこれで、連絡できます』

 智美は、興味を持ちミシェルにいろいろ質問すして聞き出したところ、ICチップ入りの社員証みたいなものだろうかと思う。
 小さな香水瓶の様になっていて、中に青泉水を入れて、宝石や半貴石、金銀等の栓がしてある、栓の部分に身分的なことや、制限などの記録の魔法がかかっていて、先ほどの通信などができる魔法もかかっているが、高難度の魔法の技術が使われており、己自身で使おうとすると、魔力量の消費が激しいので、だれでも使えるようにこのような形になったそうだ。

「へえ、身分証みたいなものなんですね」

『ええ、形や大きさ、使っている石などで、所属しているところと、役職などが分かります』

「失くしたり、盗まれちゃったら大変ですね」

『これらは、自分の魔力に反応して使えるようになってますので、成り変わりなどの悪用はできなくなってますし、お金に換金するにも、だれのものか特定するものですから、だれも引き取ってくれません』

 そんな話をしていると、部屋をノックする音がした。

『ミシェル様、おもちしました』

 ドアの外からした声は、男性の物だった。
 ミシェルはざわざドアの外へ出て、インクの瓶を受け取ってきた。
 受け取った瓶はショート缶の缶コーヒーぐらいの大きさで2本持っている。
 そのままミシェルは机の方へ行くので、智美も近寄ってどうするのかを見る。
 机の上にあるカワセミの置物の背中の羽の部分をスライドさせ外し、インクを注ぐ。すると、透明だったカワセミの嘴に青黒い色がつきだした。こぼれない程度に2本目の瓶も入れると、蓋をする。

『これで、しばらくここには補充しなくて済むと思います、なくなったりほかに足りない物がありましたらお申し付けください』

 ミシェルに言葉が通じる様になって初の時もそう言われたが、ミシェルに会えるのは、朝ぐらいのなので、水章が有ったら良いなと思う。

「水章って、私には頂けないですよね」

 恐る恐る言うと、ミシェルは智美をまじまじと不思議そうに見ていたが、はっと気づいた様に話しだした。

『サトミ様は魔法が使えないんでしたね、青魔晶のピアスをしてらっしゃいますから、それが水章と同じ役目をしますが、通信の魔法となりますと、カイ皇子にお願いして組み込んでもらえばどうにかなりましょうか。そのことについては詳しくないので、申し訳ありませんが、カイ皇子にお尋ねください』

 ミシェルはそう言いながら、ペンを持ち、本体のカバーを外して中のインクの部分をさらした、そこはただの筒ではなく不思議な形状になっているガラスの小瓶だった。
 ミシェルはその小瓶をペン先が付いてない逆側の窪みに、カワセミの嘴を差し込む、すると小瓶がみるみる満たされていった。
 満杯いなった本体を、こぼさないようそのまま刺し口を上にしたまま、ミシェルは本体のカバーをつけしっかりとねじを締めた。智美はその様子をじっと見つめる。
 ミシェルは最後にキャップを外して、液だれしてないか確認して元に戻して智美に手渡す。

「ありがとうございます。水章の件はカイ皇子に聞いてみます」

 そう言いながら受け取って、智美は早速今の手順を忘れないうちに書き付けておこうと、メモに図を書き出した。覚えてられるとは思うのだが、毎日する作業ではないので、ちょっと念のためだ。
 書き終わった紙を机にしまう。この作業をするのは、部屋だけだろうから持ち歩く必要性は無いだろう。

『サトミ様、午後はどのようなご予定で』

「午後は、昨日できなかった城内の案内をタンザ様にしていただくのです。カイ皇子がすると言ってたんだけど、ミエル様がタンザ様にお願いしたみたいです」

 ミシェルの問いに、智美はそう答える。ミエルが案内するのかとおもいきや、ミエルは泉神殿の案内はできるが、城内では制限が邪魔で案内が中途半端になってしまうと思ったようで、城内での制限があまりない、タンザに頼んだようだ。

「あ、お待たせしては悪いので、もう行きますね~。ミシェルさんお手数おかけしました」

 そう智美は言い残して、部屋を出て行った。



──────────
後書き

作者的こだわりの話、一応細かい布石としての意味合いもあります。
なくてもいいんでしょうが…。




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