【番外編更新中】桜の記憶 幼馴染は俺の事が好きらしい。…2番目に。

あさひてまり

文字の大きさ
8 / 262
中学生編 side晴人

7.立ち位置

しおりを挟む
「は?」

「イェーイ!スペシャルゲストの晴人くんでーす!!」

「ど、どーもー…。」

不機嫌な蓮、テンション高い翔君、目が死んでる俺がリビングに大集合した。
蓮が、ソファに座った翔君の足の間に座っている俺を見ている。

「そこで何してんだよ。」

うっ、やっぱ怒ってる。
そりゃ二ヶ月も無視してたんだもんな。

「だって一緒にピザ選びたいじゃーん?
昔は良くこーやって絵本読んでやったよな。」

そう言って、後ろからオレを抱えるようにしてスマホを見せてくれる翔君に、懐かしい気持ちになる。

「翔君、俺コレがいい!」

「よーしよしよし。サイドメニューは?ポテト食べる?」

「うん!」

俺の頭をわしゃわしゃする翔君はちょっとムツゴロウさん化してるけど昔から優しいんだよな。

「おーおー、晴人は可愛いなぁ。
サイズ感も丁度いいし何かいい匂いす…ッテェ!」

蓮に思いっきり頭を叩かれた翔君が声を上げる。

「お前、いい加減にしろよ…。」

「ヤキモチかー⁉︎お前だって可愛い弟だぞ♡」

不機嫌MAXの蓮に超明るく返せる翔君は流石お兄ちゃんだわ。
蓮が二発目を放とうとした時、スマホの着信音が鳴った。

「あ、チョイ待ち!電話だわ。もしもーし!」


待って!!行かないでぇ!!

俺の願いも虚しく部屋の外に出て行く翔君。
二人っきりになる、俺と蓮。
き、気まずい…。

「……お前さ。」

「へいっ⁉︎」

地を這うような蓮の声。
裏返る俺の声。

「あんま翔とベタベタすんじゃねぇ。」

「…へい??」

蓮は俺から視線を外して首の後ろに手を当てている。
照れたようなその仕草に、ピンと来た。

そうか、久々に帰って来た翔君のこと俺が独占してたらいい気しないよな。
ごめんな、大事な兄弟の時間に乱入しちゃって。

「蓮、ごめん。」

俺が言うと蓮が訝しげにこっちを見た。
翔君の件だけじゃなくて、謝らなければ。

「ずっと無視してごめん。
ほら、俺もちょっと混乱してて…。」

まさか蓮が俺のこと好きかもなんて勘違いしそうになったとは言えない。

「でも、俺はこれからも蓮とは仲良くやっていきたいんだよ!俺達、幼馴染だろ?」

蓮と遥が恋人になっても、俺が2人の幼馴染であることには変わりない。

「だから、あのことは全部忘れる!!
蓮も忘れろ!!」

遥と恋人になった今、蓮にとっても黒歴史だろうからな。お互いのためにもそれが一番だ。

「晴…。俺は…」「そうしよう!!な⁉︎」

蓮は何か言いたそうだけど、ここで謝罪されて、遥との交際宣言されるなんて嫌だ。
無理無理、今日の今日ではまだ聞きたくない。

「てかさ、蓮はピザどれがいい⁉︎
翔君の奢りらしいから好きなの頼もうぜ!」

強引に会話を逸らした所で、翔君が戻って来た。

「決まったかー?頼むぞー!!」

そうして、ピザパーティーは無事開催された。
蓮とも多少ぎこちないながらも普通に会話できたし、仲直り成功だ。

そう、これでいいんだ。
これでーーーーー。



仲直りしてから俺と蓮は順調だ。
うん。今まで通り。

不思議なのは蓮と遥にも変わった点が見受けられないことだ。
二人から交際報告はない。
付き合ってるらしいって噂も聞かない。
注意深く観察してみても、甘い雰囲気とか一切無いんだよなぁ。
強いて言うなら、少し会話は増えてる気がする。

でも、登下校も蓮は相変わらず俺と一緒だし、休み時間も俺の所に来る。

これって俺が一人にならないように気を使われてるのかな。
気にしないで遥の所行けよって言うべきなのか?
恋愛経験ゼロの俺には正解が分からなくて困ってる。

そんな状態が暫く続いたある日の夜、俺がコンビニに行こうとすると声をかけられた。

「晴?」

「あ、翔君!」

「何か前にもこんな事無かったか?」

あったあった!
蓮と仲直りした日ね。

「なんだ、家いたならお前も来れば良かったのに。」

「え?」

「さっきまで遥が家来てたんだよ。蓮が友達がノート借りに来るって言うから、代わりに俺が送って来たとこ。」

「そうなんだ。…遥って最近良く翔君家いるの?」

「んー、たまにしか帰んない俺が必ず会うから結構来てんじゃねぇ?」

そしてハッとした顔をした。

「え、もしかして喧嘩?そんで晴人だけ呼ばれてないの?」

「違うよ。喧嘩なんかしてないって!
俺は…その、最後だから部活頑張りたくて。」

「あー!夏の大会終わったら引退だもんな。
悔いのないように頑張れよ!」

笑顔で翔君と別れてコンビニに向かう。

そっか。蓮と遥は放課後に家で会ってたのか…。
どうして頑なに隠したがるのか分からないけど、何か二人の事情があるのかもしれない。

寂しいけど、首突っ込まない方がいいよな。
お邪魔虫にならないようにだけ気を付けよう。
来週から夏休みだけど、あんまり蓮のこと遊びに誘わないようにして…。
毎年三人で行ってた夏祭りも今年はパスだ。

二人は恋人で、俺はただの幼馴染。
どっちが優先かなんて一目瞭然だろ。
大丈夫、俺はちゃんと分かってるからーーー。










しおりを挟む
感想 100

あなたにおすすめの小説

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

だって、君は210日のポラリス

大庭和香
BL
モテ属性過多男 × モブ要素しかない俺 モテ属性過多の理央は、地味で凡庸な俺を平然と「恋人」と呼ぶ。大学の履修登録も丸かぶりで、いつも一緒。 一方、平凡な小市民の俺は、旅行先で両親が事故死したという連絡を受け、 突然人生の岐路に立たされた。 ――立春から210日、夏休みの終わる頃。 それでも理央は、変わらず俺のそばにいてくれて―― 📌別サイトで読み切りの形で投稿した作品を、連載形式に切り替えて投稿しています。  15,000字程度の予定です。

言い逃げしたら5年後捕まった件について。

なるせ
BL
 「ずっと、好きだよ。」 …長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。 もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。 ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。  そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…  なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!? ーーーーー 美形×平凡っていいですよね、、、、

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

昔「結婚しよう」と言ってくれた幼馴染は今日、僕以外の人と結婚する

子犬一 はぁて
BL
幼馴染の君は、7歳のとき 「大人になったら結婚してね」と僕に言って笑った。 そして──今日、君は僕じゃない別の人と結婚する。 背の低い、寝る時は親指しゃぶりが癖だった君は、いつの間にか皆に好かれて、彼女もできた。 結婚式で花束を渡す時に胸が痛いんだ。 「こいつ、幼馴染なんだ。センスいいだろ?」 誇らしげに笑う君と、その隣で微笑む綺麗な奥さん。 叶わない恋だってわかってる。 それでも、氷砂糖みたいに君との甘い思い出を、僕だけの宝箱にしまって生きていく。 君の幸せを願うことだけが、僕にできる最後の恋だから。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

僕の番

結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが―― ※他サイトにも掲載

天啓によると殿下の婚約者ではなくなります

ふゆきまゆ
BL
この国に生きる者は必ず受けなければいけない「天啓の儀」。それはその者が未来で最も大きく人生が動く時を見せる。 フィルニース国の貴族令息、アレンシカ・リリーベルは天啓の儀で未来を見た。きっと殿下との結婚式が映されると信じて。しかし悲しくも映ったのは殿下から婚約破棄される未来だった。腕の中に別の人を抱きながら。自分には冷たい殿下がそんなに愛している人ならば、自分は穏便に身を引いて二人を祝福しましょう。そうして一年後、学園に入学後に出会った友人になった将来の殿下の想い人をそれとなく応援しようと思ったら…。 ●婚約破棄ものですが主人公に悪役令息、転生転移、回帰の要素はありません。 性表現は一切出てきません。

処理中です...