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中学生編 side晴人

13.旅立ち

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夏休みが終わった。
って言うかそこから卒業まで早すぎじゃない⁉︎
あっと言う間に中学生を終えてしまった俺は、卒業証書その証を手に蓮と帰宅中だ。

中一の時も中二の時も感じなかった、早足で去ってしまう時間の流れがそこにはあった。
高校次のステップへ進むのってこんな感じなんだな。
まぁ俺や蓮をはじめ、9割の生徒がそのまま高校へ持ち上がるんだけどね。

でも中には例外もあって、それが我らが幼馴染だ。

「明日父さんが空港でまで車出すって言ってるから蓮も乗ってくよな?」

「ん。憲人さん(晴の父)にお礼言っといて。」

明日、遥はカナダへ旅立つ。
なんとタイミング良く遥のお父さんがアメリカ赴任になったからお母さんもアメリカに住むらしい。
つまり南野家は日本から暫くいなくなるってこと。

両親がアメリカにいるなら日本にはほぼ帰って来ないだろうな。
予定では3年間で、大学は日本に戻るらしいけど。

遥がいない日常ってどんな感じになるんだろ。
蓮と二人かぁ。

俺達はあれ以来何もない。
いや、あってたまるかって感じだけど。
意味深に耳を弄られた後も全く今まで通りだった。
もう本当に、拍子抜けするくらい。

普通に夏休みを過ごして、普通に新学期を迎えて。
あ、蓮と啓太が仲悪いのは困ったけど。
啓太はそんな気無さそうなんだけど、蓮が啓太に圧かけるんだよなぁ。
文化祭の時とか、啓太と回る約束してるって言ったら物凄い不機嫌だった。

蓮は遥と回ると思ったから俺的には気を使ったんだけど…。
てか、蓮、遥のこと放置しすぎなのでは?
カレカノってこんな感じでいいの?

そんな疑問を持ちつつも、遥も別段なんともないように過ごしてたから気にしないようにはしてた。

そうしてあれよあれよと言う間に卒業を迎えた訳である。光陰矢の如し。



卒業式の翌日、空港に向かう車の中で蓮はいつもより口数が少ない気がした。
うーん、俺が気にしてるからそう感じるだけなのかな。

空港に着くと、南野家と合流した。
俺の家は両親共見送りに来てて、切藤家は蓮のお母さんが来てる。
お父さんは出張で来れなくて、翔君は大学の卒業式と被っちゃったらしい。

親は親同士で話してるから、俺達は三人でカフェに移動した。

「伊藤達は来ないの?」

伊藤って言うのは遥と仲良い女子だ。
俺の問いかけに遥が答える。

「うん。由奈達とは昨日お別れ会したから。
その前にパジャマパーティーもしたし。」

「欧米か!」

思わず突っ込んだ俺に遥が笑ってくれる。
蓮は何言ってんだって目で見て来るけど、遥は俺に優しいもんな。

「何か実感沸かないなぁ。取り敢えずこまめに連絡するね。」

遥の言葉に俺も蓮も頷く。
と、そこで気が付いた。

俺、お邪魔虫なのでは⁉︎
俺がいると二人が別れを惜しむ時間が無いじゃん。
空気を読まなければ。

「あっ…俺、遥パパ達とも話してくる!」

二人は特に不思議がることもなく、分かったと言ってくれた。

ふぅ、やっぱ二人になりたかったよね。
ごめんな、鈍い幼馴染で。

親達の所に行くと、いつも通り和気あいあいと話していた。
遥のお母さんが俺に気付く。

「晴ちゃん、どうしたの?」

「ん、遥ママと遥パパにもお別れ言いたくて。」

「「「可愛い!!」」」

うちの両親以外が声を揃えて言う。

「あぁー、晴ちゃんの成長が見られないことだけが心残りだわ。」

「本当だよね。年々クウォーター感が強くなってるから先が楽しみなのに。」

遥ママとパパは昔から俺に甘い。
って言うか蓮父と蓮母もだな。
どうも「一番年下でいつも泣いてた晴ちゃん」
のイメージがずっとあるらしい。
俺、来月から高校生だけどね?

「毎日見てると分かんないけど、確かに髪の色とか色素がどんどん薄くなってるような…。」

俺の父さんの言葉に蓮母が頷く。

「肌は前から白かったけどね。あと瞳の色がやっぱり日本人とは違うわ。憲人さんに似てきたわよね。」

実は俺の父さんは日本とフランス人のハーフで、その子供の俺はクウォーターだ。


ここで声を大にして言いたいんだけど…
ハーフとかクウォーター=イケメン
と思うなかれ!!

俺はただただ色素が薄いだけの凡庸地味野郎に仕上がりつつある。
フランス語も一切喋れないしな!

「マジ?色素と一緒に存在感も薄くなっていく気がするだけど。」

俺の言葉に遥ママが首を振る。

「もう。晴ちゃんは分かってないわね…。
蓮くん、高校でもちゃんと見張ってないと拐われちゃうわよ。」

その視線の先には蓮と遥がいた。
あ、もう話し終わったのか。
案外アッサリしてるんだなぁ。

「遥ママ、俺誘拐されたりしないから。」

当然のことを言ったのに、俺以外の全員に生温かい目で見られた。
え、俺そんな誘拐されそう?
子供みたいだから?
身長も伸びてきてるんだけど…ショックだわ。


『JALU312便バンクーバー行きに搭乗のお客様は…』

アナウンスの音に皆ハッとして顔を上げる。
名残惜しいけど、もう送り出さなければ。

口々に相手の健康を気遣い、まめに連絡すると約束し、握手したりハグしたりする。
生まれた時から一緒だった俺達にとって、萱島家・切藤家・南野家は三組で一つの家族だ。

とてつもなく、寂しい。

「遥ぁ~!!」

涙声を出す俺を遥が抱きしめてくれる。
俺もギュッと腕に力を込めた。

「蓮、約束守んなさいよ。」

俺の頭越しに遥が蓮に話しかけてる。

「るせーな、分かってるよ。」

恋人同士の別れにしては素っ気なさ過ぎだけど、二人がそれでいいならいいんだろう。
約束って言うのは、浮気するなとか毎日連絡しろとかそう言うのかな。

「晴、蓮に虐められたらすぐ連絡してね!」

そう言って笑うと、チラリと蓮の方を見てから遥は背を向けた。
最後に大きく手を振って南野家はゲートを潜っていく。

「元気でな…。」

一筋涙を溢して呟いた俺の頭を、蓮が優しく撫でてくれた。




こうして、幼馴染であり姉のようでもあった遥は夢のために日本を旅立ったのだった。





●●●
晴人の使い分け
自分の父、母→父さん、母さん
蓮の父、母→蓮ちち、蓮はは
遥の父、母→遥パパ、遥ママ



これで中学生編(side晴人)は完結になります!
お読みいただきありがとうございました。
引き続き高校生編もお楽しみいただけますと嬉しいです(*´∀`*)















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