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高校生編side晴人 望み通り離れたのに、何でその反応?
17.好きでいること
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大きな騒めきが起きる。
蓮と啓太は転がるようにしてコースの内側に倒れて、後続とぶつかることは回避していた。
「れっーーー」
思わず蓮に駆け寄ろうとした俺は、鋭い視線に射抜かれた。
相川さん…。
リレーを走り終えた彼女は、コースの内側で待機していたみたいだ。
蓮の側によって、俺の視界を遮るように立っている。
『ミ・ノ・ホ・ド』
ーーー身の程。
口パクで、でも確かに彼女はそう告げた。
そして、凍りつく俺に背を向けると蓮の背中に手を当てて話しかけている。
学校一のイケメンとアイドルが寄り添う姿は、あまりにも絵になっていた。
大騒ぎしてた蓮のファンの子達も、諦めたように遠巻きにしてる。
また、やってしまったーー。
俺が蓮を心配して駆け寄った所で場違いなだけじゃないか。
身の程を知れ、と。
相川さんはそう言ったけどそれは正しい。
だから、俺は蓮から離れたんだろ。
しっかりしろ。
ちょっと優しくされたからって、また勘違いしそうになってた自分が情けない。
俺の気持ちは、絶対に蓮に…いや、誰にも知られちゃいけないんだから。
だってさ、これ以上蓮に面倒だと思われるとか無理だもん。
それなら、いっそーーーー。
その時、頭の中でカチリとピースが嵌まった。
ずっとフワフワしてた、蓮に対して俺が取るべき行動とか、態度。
それが分かった気がする。
「啓太!大丈夫?」
俺は蓮の脇を通り過ぎて啓太の元へ向かう。
「うわ!血出てんじゃん!歩けるか?」
そうして、膝から出血する啓太に肩を貸して立たせる。
啓太は右足を引き摺りながらもしっかり歩いてるから、骨折とか捻挫は大丈夫そうだ。
保健室に辿り着くと、先生がすぐ消毒を始める。
そのちょっと後に蓮も相川さんに付き添われて来たんだけど…ギャラリーが凄くて。
女子がわんさか保健室に集まって騒ぐもんだから、先生がキレた。
「全員!保健室から出なさい!!」
何故か俺までペイッと追い出されたのが納得いかん。
俺は一度自分の席に戻ると、スポーツ用品店のビニール袋を手にして引き返す。
途中で、部活仲間の鈴木が話しかけてきた。
啓太の代わりに、この後の部活対抗リレーに出て欲しいって内容だ。
部活対抗リレーはお楽しみの余興みたいな感じだから、順位は関係ない。
剣道部は防具付けて走るくらいだし。
「全然いいよ!後でそっち行く!」
鈴木に返事をして、俺はまた保健室へ向かった。
今度は、中庭に面した一階の窓の方から中を除く。
「啓太!脚どうだって?」
「わ!ビックリした!先生いなくて良かったな!」
啓太は笑いながら窓に近付いてきた。
「血は出てるけど、他は異常なし!」
「はぁー!良かったな!」
元気そうだし、これなら部活にも支障は無いだろう。
「あ、奥に切藤いるけど呼ぶ?アイツも大丈夫そうだぜ。」
啓太が言ってくれるけど、俺は首を振った。
「ううん、平気。お大事にって伝えといて。
そのついでに、頼んでいい?」
手に持っている袋を啓太に見せる。
中身は、渡すタイミングがあればとわざわざ応援席まで持って来ていた蓮のTシャツ。
渡す時に話せるかもと僅かに期待していた、俺の未練と期待がこもったそれを、俺から蓮に渡すなんてできない。
「これ、切藤に渡しといてくれる?」
「えっ⁉︎晴人?呼び方…」「俺、啓太の代わりに部活対抗リレー出ることになったからもう行くな!
ちゃんと応援しろよー!」
戸惑う啓太に笑顔で手を振って背を向ける。
離れるのを決意したのに、俺はまだどこかで期待してたんだ。
こう言う所が鬱陶しかったのかなぁ。
だから、名前で呼んだり、特別だって勘違いしてしまいそうな事は全部手放そう。
「幼馴染」もいらない。
俺の存在なんて忘れてしまって構わない。
そしたらさ。
その距離感なら、迷惑かけないだろ?
俺さ、蓮を忘れる事も諦める事もできそうにないんだよ。
でも、絶対に誰にもバレないようにする。
だからさ、蓮。
好きでいる事だけは、許して欲しいんだ。
●●●
相川が出てくると晴人メンブレ。
次回はside啓太です。
蓮と啓太は転がるようにしてコースの内側に倒れて、後続とぶつかることは回避していた。
「れっーーー」
思わず蓮に駆け寄ろうとした俺は、鋭い視線に射抜かれた。
相川さん…。
リレーを走り終えた彼女は、コースの内側で待機していたみたいだ。
蓮の側によって、俺の視界を遮るように立っている。
『ミ・ノ・ホ・ド』
ーーー身の程。
口パクで、でも確かに彼女はそう告げた。
そして、凍りつく俺に背を向けると蓮の背中に手を当てて話しかけている。
学校一のイケメンとアイドルが寄り添う姿は、あまりにも絵になっていた。
大騒ぎしてた蓮のファンの子達も、諦めたように遠巻きにしてる。
また、やってしまったーー。
俺が蓮を心配して駆け寄った所で場違いなだけじゃないか。
身の程を知れ、と。
相川さんはそう言ったけどそれは正しい。
だから、俺は蓮から離れたんだろ。
しっかりしろ。
ちょっと優しくされたからって、また勘違いしそうになってた自分が情けない。
俺の気持ちは、絶対に蓮に…いや、誰にも知られちゃいけないんだから。
だってさ、これ以上蓮に面倒だと思われるとか無理だもん。
それなら、いっそーーーー。
その時、頭の中でカチリとピースが嵌まった。
ずっとフワフワしてた、蓮に対して俺が取るべき行動とか、態度。
それが分かった気がする。
「啓太!大丈夫?」
俺は蓮の脇を通り過ぎて啓太の元へ向かう。
「うわ!血出てんじゃん!歩けるか?」
そうして、膝から出血する啓太に肩を貸して立たせる。
啓太は右足を引き摺りながらもしっかり歩いてるから、骨折とか捻挫は大丈夫そうだ。
保健室に辿り着くと、先生がすぐ消毒を始める。
そのちょっと後に蓮も相川さんに付き添われて来たんだけど…ギャラリーが凄くて。
女子がわんさか保健室に集まって騒ぐもんだから、先生がキレた。
「全員!保健室から出なさい!!」
何故か俺までペイッと追い出されたのが納得いかん。
俺は一度自分の席に戻ると、スポーツ用品店のビニール袋を手にして引き返す。
途中で、部活仲間の鈴木が話しかけてきた。
啓太の代わりに、この後の部活対抗リレーに出て欲しいって内容だ。
部活対抗リレーはお楽しみの余興みたいな感じだから、順位は関係ない。
剣道部は防具付けて走るくらいだし。
「全然いいよ!後でそっち行く!」
鈴木に返事をして、俺はまた保健室へ向かった。
今度は、中庭に面した一階の窓の方から中を除く。
「啓太!脚どうだって?」
「わ!ビックリした!先生いなくて良かったな!」
啓太は笑いながら窓に近付いてきた。
「血は出てるけど、他は異常なし!」
「はぁー!良かったな!」
元気そうだし、これなら部活にも支障は無いだろう。
「あ、奥に切藤いるけど呼ぶ?アイツも大丈夫そうだぜ。」
啓太が言ってくれるけど、俺は首を振った。
「ううん、平気。お大事にって伝えといて。
そのついでに、頼んでいい?」
手に持っている袋を啓太に見せる。
中身は、渡すタイミングがあればとわざわざ応援席まで持って来ていた蓮のTシャツ。
渡す時に話せるかもと僅かに期待していた、俺の未練と期待がこもったそれを、俺から蓮に渡すなんてできない。
「これ、切藤に渡しといてくれる?」
「えっ⁉︎晴人?呼び方…」「俺、啓太の代わりに部活対抗リレー出ることになったからもう行くな!
ちゃんと応援しろよー!」
戸惑う啓太に笑顔で手を振って背を向ける。
離れるのを決意したのに、俺はまだどこかで期待してたんだ。
こう言う所が鬱陶しかったのかなぁ。
だから、名前で呼んだり、特別だって勘違いしてしまいそうな事は全部手放そう。
「幼馴染」もいらない。
俺の存在なんて忘れてしまって構わない。
そしたらさ。
その距離感なら、迷惑かけないだろ?
俺さ、蓮を忘れる事も諦める事もできそうにないんだよ。
でも、絶対に誰にもバレないようにする。
だからさ、蓮。
好きでいる事だけは、許して欲しいんだ。
●●●
相川が出てくると晴人メンブレ。
次回はside啓太です。
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