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高校生編side晴人 事件の始まり…なのにキスとかそれ以上とか⁉︎
26.陽菜ちゃんと私(side木村桃)
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『引っ込み思案で大人しい』
それが物心ついた頃からずっと私の評価だった。
私は自分に自信がない。
人に嫌われるのが怖い。
だから、友達なんてできなかった。
中学に入学してもそれは変わらなかったけど、私とは正反対の女の子に出会った。
相川陽菜ちゃんは、誰よりも可愛くて明るくて、何でもできる完璧な人気者。
私のお父さんもお母さんも、陽菜ちゃんみたいな娘がいたら嬉しかっただろうなぁ。
そんな風に羨望の眼差しで見ていた彼女から声をかけられたのは、突然だった。
「ねぇ、そこの席変わってくれない?」
席替えで陽菜ちゃんの仲のいい女子と隣の席になった私に、彼女はそう言ってきた。
席をトレードするのは禁止されていたけど、私は陽菜ちゃんに話しかけられたのが嬉しくてすぐに頷いた。
「うん…!うん!いいよ!」
陽菜ちゃんは私の勢いにビックリしてたけど、「ありがと」と言ってくれた。
それ以来、陽菜ちゃんは私にお願いをしてくれるようになった。
「委員会、代わりに出てくれない?」
「この本図書室に返しといてくれる?」
陽菜ちゃんは私にでもできる事をお願いしてくれるから、こんな私でも役に立つ事ができる。
そうすると、地味でクラスの隅っこにいるような人間の私でも、存在を許されたような気がした。
中2になったある日、また陽菜ちゃんからお願いされた。
「3年の先輩がカッコイイから今の彼氏と別れたいんだけど、ぐずられそうなんだよね。面倒臭いから、アイツが桃と浮気した事にしてくれない?」
私は言われるがままに陽菜ちゃんの彼氏を呼び出して、スマホが鳴った合図で彼に抱きついた。
その時、胸が苦しくなったのを覚えてる。
私は小学校の頃からずっと、彼の事を目で追っていた。
だけど私は今、陽菜ちゃんが別れるためにその人に抱きついている…。
「勇気!何してるの⁉︎」
偶然を装って現れた陽菜ちゃんに彼が慌てて弁解している。
「他の女の子と抱き合ってたら浮気でしょ!ヒドイ!もう別れる!!」
そう言って走り去る陽菜ちゃんを呆然と見ていた彼は、私を突き飛ばした。
「ふざけんなこの根暗ブス!!俺は陽菜みたいな可愛い子が好きなんだよ!二度と俺に近寄るな!!」
こうして無事に別れられた陽菜ちゃんは、2ヶ月後には狙っていた先輩と付き合い出した。
「浮気されたのを慰めてくれた」新しい彼氏と笑い合う陽菜ちゃんを、誰も咎めたりしない。
陽菜ちゃんは役に立った私を褒めてくれたけど、何故だか酷く虚しかった。
そんなある日、陽菜ちゃんが仲のいい女子達としている会話を聞いてしまった。
「木村桃ってマジで陽菜の言う事なら何でも聞くよねぇ!」
「うん♡超便利♡」
ヒドーイ!!と言いながら爆笑するそのグループがいなくなると、私は自分が涙を流している事に気が付いた。
私は、役に立てればいいはず。
だから泣くなんておかしい。
なのに、どうしてこんなに悲しいんだろう。
陽菜ちゃんの役に立たなければ、この学校に私の存在理由なんて無い。
便利だなんて誉め言葉じゃないか。
自分に言い聞かせながら何とか登校し続けたけど、心は疲弊していく。
ただ、3年生になると陽菜ちゃんとクラスが離れて少し楽になった。
彼女は難関と言われる高校の特進クラスを狙っていたから受験生モードに入り、「お願い」どころ私の存在も忘れてたと思う。
どこかホッとしながら私は県立高校を受験して、合格することができた。
県外の高校にしたから、中学の知り合いは一人もいない。
何だか生まれ変わったような気分になって、頑張って人と話すようにした。
そしたら、2人も友達ができた。
決して多くないのは分かってる。
だけど、私にとっては大きな進歩だ。
2人の友達のおかげで学校生活を「楽しい」と感じられるようになった頃、ふいにスマホが鳴った。
『相川陽菜ちゃん』
表示された名前に、一瞬頭が真っ白になる。
早く出ないと!
でも、いったい何の用だろう…。
何とか電話に出た私に「久しぶり」と言って、彼女はこう続けた。
『ちょっと協力して欲しいんだよね。』
『中2の時みたいにしてくれればいいから。』
また、誰かの想いを壊す事に利用されるんだろうか。
だけど、断れなかったーーー。
調子に乗っていた自分が恥ずかしい。
結局、臆病で弱い私は変わってないんだ。
気が重いまま、でも言われた通りやって来てしまった陽菜ちゃんの高校。
集合場所のプールに辿り着くと、そこはリゾートプールみたいだった。
緊張して心臓がバクバクする。
私が陽菜ちゃんのお願いを実行する事で、傷付くかもしれない人がここにやって来るーー。
俯いていると、目線の先に影が見えた。
顔を上げると、華奢な男の子がーー青いチャイナドレスを着て私を見ていた。
●●●
陽菜は中学生の頃から策略家です。
それが物心ついた頃からずっと私の評価だった。
私は自分に自信がない。
人に嫌われるのが怖い。
だから、友達なんてできなかった。
中学に入学してもそれは変わらなかったけど、私とは正反対の女の子に出会った。
相川陽菜ちゃんは、誰よりも可愛くて明るくて、何でもできる完璧な人気者。
私のお父さんもお母さんも、陽菜ちゃんみたいな娘がいたら嬉しかっただろうなぁ。
そんな風に羨望の眼差しで見ていた彼女から声をかけられたのは、突然だった。
「ねぇ、そこの席変わってくれない?」
席替えで陽菜ちゃんの仲のいい女子と隣の席になった私に、彼女はそう言ってきた。
席をトレードするのは禁止されていたけど、私は陽菜ちゃんに話しかけられたのが嬉しくてすぐに頷いた。
「うん…!うん!いいよ!」
陽菜ちゃんは私の勢いにビックリしてたけど、「ありがと」と言ってくれた。
それ以来、陽菜ちゃんは私にお願いをしてくれるようになった。
「委員会、代わりに出てくれない?」
「この本図書室に返しといてくれる?」
陽菜ちゃんは私にでもできる事をお願いしてくれるから、こんな私でも役に立つ事ができる。
そうすると、地味でクラスの隅っこにいるような人間の私でも、存在を許されたような気がした。
中2になったある日、また陽菜ちゃんからお願いされた。
「3年の先輩がカッコイイから今の彼氏と別れたいんだけど、ぐずられそうなんだよね。面倒臭いから、アイツが桃と浮気した事にしてくれない?」
私は言われるがままに陽菜ちゃんの彼氏を呼び出して、スマホが鳴った合図で彼に抱きついた。
その時、胸が苦しくなったのを覚えてる。
私は小学校の頃からずっと、彼の事を目で追っていた。
だけど私は今、陽菜ちゃんが別れるためにその人に抱きついている…。
「勇気!何してるの⁉︎」
偶然を装って現れた陽菜ちゃんに彼が慌てて弁解している。
「他の女の子と抱き合ってたら浮気でしょ!ヒドイ!もう別れる!!」
そう言って走り去る陽菜ちゃんを呆然と見ていた彼は、私を突き飛ばした。
「ふざけんなこの根暗ブス!!俺は陽菜みたいな可愛い子が好きなんだよ!二度と俺に近寄るな!!」
こうして無事に別れられた陽菜ちゃんは、2ヶ月後には狙っていた先輩と付き合い出した。
「浮気されたのを慰めてくれた」新しい彼氏と笑い合う陽菜ちゃんを、誰も咎めたりしない。
陽菜ちゃんは役に立った私を褒めてくれたけど、何故だか酷く虚しかった。
そんなある日、陽菜ちゃんが仲のいい女子達としている会話を聞いてしまった。
「木村桃ってマジで陽菜の言う事なら何でも聞くよねぇ!」
「うん♡超便利♡」
ヒドーイ!!と言いながら爆笑するそのグループがいなくなると、私は自分が涙を流している事に気が付いた。
私は、役に立てればいいはず。
だから泣くなんておかしい。
なのに、どうしてこんなに悲しいんだろう。
陽菜ちゃんの役に立たなければ、この学校に私の存在理由なんて無い。
便利だなんて誉め言葉じゃないか。
自分に言い聞かせながら何とか登校し続けたけど、心は疲弊していく。
ただ、3年生になると陽菜ちゃんとクラスが離れて少し楽になった。
彼女は難関と言われる高校の特進クラスを狙っていたから受験生モードに入り、「お願い」どころ私の存在も忘れてたと思う。
どこかホッとしながら私は県立高校を受験して、合格することができた。
県外の高校にしたから、中学の知り合いは一人もいない。
何だか生まれ変わったような気分になって、頑張って人と話すようにした。
そしたら、2人も友達ができた。
決して多くないのは分かってる。
だけど、私にとっては大きな進歩だ。
2人の友達のおかげで学校生活を「楽しい」と感じられるようになった頃、ふいにスマホが鳴った。
『相川陽菜ちゃん』
表示された名前に、一瞬頭が真っ白になる。
早く出ないと!
でも、いったい何の用だろう…。
何とか電話に出た私に「久しぶり」と言って、彼女はこう続けた。
『ちょっと協力して欲しいんだよね。』
『中2の時みたいにしてくれればいいから。』
また、誰かの想いを壊す事に利用されるんだろうか。
だけど、断れなかったーーー。
調子に乗っていた自分が恥ずかしい。
結局、臆病で弱い私は変わってないんだ。
気が重いまま、でも言われた通りやって来てしまった陽菜ちゃんの高校。
集合場所のプールに辿り着くと、そこはリゾートプールみたいだった。
緊張して心臓がバクバクする。
私が陽菜ちゃんのお願いを実行する事で、傷付くかもしれない人がここにやって来るーー。
俯いていると、目線の先に影が見えた。
顔を上げると、華奢な男の子がーー青いチャイナドレスを着て私を見ていた。
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陽菜は中学生の頃から策略家です。
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