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高校生編side晴人 事件の始まり…なのにキスとかそれ以上とか⁉︎
27.どうしたらいいの(side木村桃)
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目の前の男の子、萱島晴人君はその儚げな風貌とは裏腹に、明るくフレンドリーに話しかけてくれた。
チャイナドレスなのはクラスの仕事中だからだそうだ。
控えめに言って、凄く似合ってる。
彼に陽菜ちゃんと友達なのか聞かれて、その柔らかい雰囲気につい、本音を漏らしてしまった。
あ、ヤバイ。引かれる…。
そう思って慌てる私の耳に飛び込んでるきたのは、「超分かる!!!」と言う全肯定の言葉だった。
「え?」
「俺の…知り合いも、何でも完璧な人で。
俺みたいな奴が隣にいちゃダメって言われてさ。」
それは「蓮」って人の事だろうか。
昨日、陽菜ちゃんから念押しの電話でその名前を聞かされた。
「萱島君ならそんな事思う必要ないと思うけど…。」
だってこんなに可憐な男の子を見たのは初めてだ。
「それは木村さんにそっくりそのまま返すよ。」
お世辞だとは分かってるけど、心が温まる。
「何か、褒め合う俺ら変だね?」
そう言って笑う萱島くんに釣られて、私も笑った。
「周りに言われたせいにしちゃダメだよね。
そう言われて、俺が自分でそうかもって納得しちゃったせいだから。
その人といても、俺じゃ足引っ張るだけだよなって。それで、離れる事を俺が選んだんだ。」
それが結果的に相手のために一番いいとか笑っちゃうよね、と言う萱島君に、私は思わず聞いてしまった。
「…萱島君は、今でも一緒にいたい?」
彼はそれには答えず苦笑した。
その表情が全てを物語っている君がして、私は胸がギュッとなる。
「相手はずっと、しょうがなく俺と居てくれてたみたいでさ。これ以上迷惑かけて、嫌われたく無かったんだ。」
きっとその「蓮」って人は今も、萱島君にとって大切な人のままなんだろう。
「萱島君は凄いね。…私は、友達だと思われてないって分かってても陽菜ちゃんから離れる勇気がないの。」
「え?」
「中学の時ね、陽菜ちゃんが私の事、便利だって言ってて…。私なんか友達じゃなくて当たり前なんだけど…。」
積もった心の澱を、初対面の人に話すなんてどうかしてると思う。
だけど、萱島君にどうしても聞いて欲しかった。
「私に話しかけるのなんて、お願いがある時だけ。…それでも嬉しかった。
キラキラした陽菜ちゃんの役に立てば、自分がそこに存在してもいいって認められた気がしたの。」
そう、だから何でもした。
「だけど、段々苦しくなって…。高校生になって全然会わなくなって、正直ホッとしてた。
私なんかが、陽菜ちゃんに会いたくないなんて本当に失礼な話しなんだけど…。」
陽菜ちゃんの近くにいる事を望んでる人は溢れる程いる。
こんな私が陽菜ちゃんを拒否するなんて許されない事なのに…。
だから今日もこうしてやって来てしまった。
そして、私は多分これから、今目の前で話しを聞いてくれている彼を傷付ける。
私の言葉を否定せず、「大変だったね。」「ずっと悩んできたんだね。」そう言って私を慮ってくれる優しいこの人を…。
自分が情けない。
「こんな私、だれにも好かれなくて当然だよ…」
「ううん、それは違うよ。」
思わずポツリと漏れた心の声に、萱島君が反応する。
ずっと肯定してくれた彼の、初めての反応に私は驚いた。
「…もし木村さんの友達が同じように思ってたらどう?」
「え…?」
わたしは高校で初めてできた友達ーーナナとマユを思い浮かべる。
「誰にも」には私も入っている訳で…。
「そんなの、寂しい…。」
だって私は大好きなのに。
私の答えに、萱島君は笑った。
「だよね!俺もさ、今の木村さんみたいに思っちゃった事があったんだけど…その時言われたんだ。
自分が大切に思う人の事は信じなきゃって。
だって逆の立場だったら悲しいじゃん?」
大切な人に「大好き」を信じてもらえないのは寂しい。だから、自分も相手にそう言う思いをさせてはいけない。
そんな風に考えた事は無かった。
「それが上手くいかなくて、一方通行の時もあるけど…って言うか、それ俺だけど。」
萱島君は苦笑して、でもしっかりと言った。
「でも、俺にとっては今でも大切だからさ。
その人には近づかないって決めたけど、何かあったら俺が何とかしたいと思ってる。
細心の注意を払ってコッソリね。」
悪戯っぽく笑う萱島君はとても強くてしなやかで。
凄く、綺麗だなと思った。
私もこんな風に大切な人を想えるようになりたい。
だって、私はーーーー
ブブブッ
その時、ポケットの中のスマホが震えた。
陽菜ちゃんからの合図だ。
きっと「蓮」と一緒にここに着いたんだろう。
『合図したら、萱島に抱きつくとかキスするとかしてイチャイチャしてる感じだしてね♪
蓮にそれ目撃させるから、絶対失敗しないでよ?』
昨日の電話の声を思い出す。
どうしよう、どうしようーー!!
頭が真っ白になってパニックになる。
「木村さん?」
気遣わしげな萱島君の声。ドアの外からはもう陽菜ちゃんの声が聞こえる。
「萱島君。…ごめんね…。」
どうしようもない私を、恨んでーーー。
私は萱島君の身体をグイッと引き寄せた。
●●●
体育祭の一件で、晴人は「遠くから蓮の幸せを見守ること」が自分にできる唯一だと思うようになりました。
翔が危惧していた「献身的なだけの愛」に傾いてしまったのは蓮じゃなくて晴人の方。
チャイナドレスなのはクラスの仕事中だからだそうだ。
控えめに言って、凄く似合ってる。
彼に陽菜ちゃんと友達なのか聞かれて、その柔らかい雰囲気につい、本音を漏らしてしまった。
あ、ヤバイ。引かれる…。
そう思って慌てる私の耳に飛び込んでるきたのは、「超分かる!!!」と言う全肯定の言葉だった。
「え?」
「俺の…知り合いも、何でも完璧な人で。
俺みたいな奴が隣にいちゃダメって言われてさ。」
それは「蓮」って人の事だろうか。
昨日、陽菜ちゃんから念押しの電話でその名前を聞かされた。
「萱島君ならそんな事思う必要ないと思うけど…。」
だってこんなに可憐な男の子を見たのは初めてだ。
「それは木村さんにそっくりそのまま返すよ。」
お世辞だとは分かってるけど、心が温まる。
「何か、褒め合う俺ら変だね?」
そう言って笑う萱島くんに釣られて、私も笑った。
「周りに言われたせいにしちゃダメだよね。
そう言われて、俺が自分でそうかもって納得しちゃったせいだから。
その人といても、俺じゃ足引っ張るだけだよなって。それで、離れる事を俺が選んだんだ。」
それが結果的に相手のために一番いいとか笑っちゃうよね、と言う萱島君に、私は思わず聞いてしまった。
「…萱島君は、今でも一緒にいたい?」
彼はそれには答えず苦笑した。
その表情が全てを物語っている君がして、私は胸がギュッとなる。
「相手はずっと、しょうがなく俺と居てくれてたみたいでさ。これ以上迷惑かけて、嫌われたく無かったんだ。」
きっとその「蓮」って人は今も、萱島君にとって大切な人のままなんだろう。
「萱島君は凄いね。…私は、友達だと思われてないって分かってても陽菜ちゃんから離れる勇気がないの。」
「え?」
「中学の時ね、陽菜ちゃんが私の事、便利だって言ってて…。私なんか友達じゃなくて当たり前なんだけど…。」
積もった心の澱を、初対面の人に話すなんてどうかしてると思う。
だけど、萱島君にどうしても聞いて欲しかった。
「私に話しかけるのなんて、お願いがある時だけ。…それでも嬉しかった。
キラキラした陽菜ちゃんの役に立てば、自分がそこに存在してもいいって認められた気がしたの。」
そう、だから何でもした。
「だけど、段々苦しくなって…。高校生になって全然会わなくなって、正直ホッとしてた。
私なんかが、陽菜ちゃんに会いたくないなんて本当に失礼な話しなんだけど…。」
陽菜ちゃんの近くにいる事を望んでる人は溢れる程いる。
こんな私が陽菜ちゃんを拒否するなんて許されない事なのに…。
だから今日もこうしてやって来てしまった。
そして、私は多分これから、今目の前で話しを聞いてくれている彼を傷付ける。
私の言葉を否定せず、「大変だったね。」「ずっと悩んできたんだね。」そう言って私を慮ってくれる優しいこの人を…。
自分が情けない。
「こんな私、だれにも好かれなくて当然だよ…」
「ううん、それは違うよ。」
思わずポツリと漏れた心の声に、萱島君が反応する。
ずっと肯定してくれた彼の、初めての反応に私は驚いた。
「…もし木村さんの友達が同じように思ってたらどう?」
「え…?」
わたしは高校で初めてできた友達ーーナナとマユを思い浮かべる。
「誰にも」には私も入っている訳で…。
「そんなの、寂しい…。」
だって私は大好きなのに。
私の答えに、萱島君は笑った。
「だよね!俺もさ、今の木村さんみたいに思っちゃった事があったんだけど…その時言われたんだ。
自分が大切に思う人の事は信じなきゃって。
だって逆の立場だったら悲しいじゃん?」
大切な人に「大好き」を信じてもらえないのは寂しい。だから、自分も相手にそう言う思いをさせてはいけない。
そんな風に考えた事は無かった。
「それが上手くいかなくて、一方通行の時もあるけど…って言うか、それ俺だけど。」
萱島君は苦笑して、でもしっかりと言った。
「でも、俺にとっては今でも大切だからさ。
その人には近づかないって決めたけど、何かあったら俺が何とかしたいと思ってる。
細心の注意を払ってコッソリね。」
悪戯っぽく笑う萱島君はとても強くてしなやかで。
凄く、綺麗だなと思った。
私もこんな風に大切な人を想えるようになりたい。
だって、私はーーーー
ブブブッ
その時、ポケットの中のスマホが震えた。
陽菜ちゃんからの合図だ。
きっと「蓮」と一緒にここに着いたんだろう。
『合図したら、萱島に抱きつくとかキスするとかしてイチャイチャしてる感じだしてね♪
蓮にそれ目撃させるから、絶対失敗しないでよ?』
昨日の電話の声を思い出す。
どうしよう、どうしようーー!!
頭が真っ白になってパニックになる。
「木村さん?」
気遣わしげな萱島君の声。ドアの外からはもう陽菜ちゃんの声が聞こえる。
「萱島君。…ごめんね…。」
どうしようもない私を、恨んでーーー。
私は萱島君の身体をグイッと引き寄せた。
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体育祭の一件で、晴人は「遠くから蓮の幸せを見守ること」が自分にできる唯一だと思うようになりました。
翔が危惧していた「献身的なだけの愛」に傾いてしまったのは蓮じゃなくて晴人の方。
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