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高校生編side晴人 守ってくれるのは大切だからだって思いたい
47.反撃
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部屋に入ってきたスラリとしたシルエットに顔を上げると、そこにいたのは蓮だった。
「何だ君は!」
怒りを含んだ多田の声なんてものともせず、蓮は優雅な仕草で俺の隣に腰掛ける。
「僕は彼の友人です。
巻き込まれた友人が心配で来てみたら、思ってもみなかった会話が聞こえたものですから。」
「友人」を強調したのは、多田が俺に対して言った嫌味への意趣返しだろうか。
凄く丁寧な言葉遣いと落ち着き払った態度。
口元には微笑みすら浮かべてるけど、俺には分かる。
蓮、めちゃめちゃ怒ってるーー。
その身体に纏わせた高校生離れしたオーラは、大人二人をたじろがせる程。
「晴、大丈夫だ。」
静かになった隙を付いて蓮が俺に囁いた。
それだけで強張っていた身体から力が抜ける。
俺が頷くと、蓮は一瞬その空気を和らげた。
そして、向かい合う大人と対等ーーむしろ、こちらが上だと言った風情で話し始める。
「先程から、貴方は僕の友人が犯人であるかの様な物言いをされていますよね。証拠もないのに、貴方の経験だけで決め付けるのはいかがな物でしょう。」
「君には関係無いだろう!」
「そうでしょうか。明らかな免罪を見過ごす事が、僕に関係無いとは思えませんね。」
「生意気な…そもそもどうして会話を知っている?盗み聞きか!」
激昂する多田に、蓮はポケットからスマホを取り出した。
「貴方はもう少し、ご自身の声が大きいと自覚された方が宜しいですよ。この扉の外にまで声が聞こえていましたから。」
言いながら見せたスマホの画面は、録音モード。
「聞こえてきたあまりの内容に、慌てて録音をした次第です。最初からではありませんが、充分に友人が理不尽な疑いに晒された証拠になると思いますよ。」
若い警察官の顔面が蒼白になり、多田はギリリと歯噛みする。
「これだから最近の若い奴は!自分に不都合な事があるとすぐに動画サイトだSNSだと脅しにかかる!」
「そうですね。僕もそう言った投稿をするような輩には辟易しています。」
ニュースでよく見かけたますよね、と言って蓮は続ける。
「しかし一方では、僕達子供が理不尽な大人から自衛するために有用な手段である事も事実です。
僕個人としては、見て見ぬふりをするのも同罪だと思っていますが…。」
その言葉に、若い警察官が震え出す。
「ただ、上司の報復を恐れている様なケースですと、職場の環境に問題が有りそうですね。」
「な、なんだと?」
「ところで、駿河警視監はお元気ですか?」
急に変わった話しに、多田が目を白黒させる。
「す、駿河警視監?未来の警視総監候補だろう…お元気だと思うが…。」
「そうですか。では、駿河警視監…いえ、誠司さんが柴犬を飼ってるのはご存知でしょうか。」
「せ、誠司さん?…柴犬?」
「ええ。溺愛してるんですよ。その証拠にほら、アイコンが愛犬なんです。」
そう言うと、蓮はLAINのトーク画面を見せる。
「な、なんで…警視監とLAINしてるんだ…いや、ハッタリ…だろう…?」
急激に勢いを無くした多田に、蓮は微笑む。
「そう言えば自己紹介がまだでしたね。僕は切藤といいます。切藤総合病院理事長の次男です。
僕の父と警視監が同窓生なのは有名な話ですよね?」
一度言葉を切って続ける。
「その関係で、彼とは個人的に連絡を取り合う仲なんですよ。誠司さんは真面目だから、組織の職場環境に問題があれば知りたいだろうなぁ。」
「ヒッ…やめ、やめてくれ…。」
狼狽える警官に、蓮は冷たい目を向けた。
「では、然るべき態度を取っていただけますか。」
「し、然るべき…?」
分かってない様子の多田に、蓮は丁寧さをかなぐり捨てた。
長い脚を組み、少し上体を反らしたその姿は圧倒的に人を支配する側の人間のそれ。
「救いようがねーな。晴に謝れっつってんだよクソヤロー共。」
低く放たれた命令に、警官二人は震え上がった。
「失礼します!萱島、遅くなってすま…えぇ⁉︎」
戻って来た大山先生が仰天したのも無理はないと思う。
呆然とする俺、何故かここにいて魔王の如きオーラを撒き散らす蓮、涙を流す若い警官、土下座する勢いで謝る中年の警官ーー。
部屋の中は間違いなくカオスだった…。
●●●
切藤総合病院は、日本を代表する最先端設備がある病院の1つです。
セキュリティーのしっかりしたVIPフロアがあるため著名人や政治家がお世話になる事も多く、蓮の父(拓哉)は各方面に顔が効きます。
その子供である蓮と翔も、大物との繋がりが結構あったりします。
警視監は警察関係の序列No.2です。
上には警視総監のみ。
「何だ君は!」
怒りを含んだ多田の声なんてものともせず、蓮は優雅な仕草で俺の隣に腰掛ける。
「僕は彼の友人です。
巻き込まれた友人が心配で来てみたら、思ってもみなかった会話が聞こえたものですから。」
「友人」を強調したのは、多田が俺に対して言った嫌味への意趣返しだろうか。
凄く丁寧な言葉遣いと落ち着き払った態度。
口元には微笑みすら浮かべてるけど、俺には分かる。
蓮、めちゃめちゃ怒ってるーー。
その身体に纏わせた高校生離れしたオーラは、大人二人をたじろがせる程。
「晴、大丈夫だ。」
静かになった隙を付いて蓮が俺に囁いた。
それだけで強張っていた身体から力が抜ける。
俺が頷くと、蓮は一瞬その空気を和らげた。
そして、向かい合う大人と対等ーーむしろ、こちらが上だと言った風情で話し始める。
「先程から、貴方は僕の友人が犯人であるかの様な物言いをされていますよね。証拠もないのに、貴方の経験だけで決め付けるのはいかがな物でしょう。」
「君には関係無いだろう!」
「そうでしょうか。明らかな免罪を見過ごす事が、僕に関係無いとは思えませんね。」
「生意気な…そもそもどうして会話を知っている?盗み聞きか!」
激昂する多田に、蓮はポケットからスマホを取り出した。
「貴方はもう少し、ご自身の声が大きいと自覚された方が宜しいですよ。この扉の外にまで声が聞こえていましたから。」
言いながら見せたスマホの画面は、録音モード。
「聞こえてきたあまりの内容に、慌てて録音をした次第です。最初からではありませんが、充分に友人が理不尽な疑いに晒された証拠になると思いますよ。」
若い警察官の顔面が蒼白になり、多田はギリリと歯噛みする。
「これだから最近の若い奴は!自分に不都合な事があるとすぐに動画サイトだSNSだと脅しにかかる!」
「そうですね。僕もそう言った投稿をするような輩には辟易しています。」
ニュースでよく見かけたますよね、と言って蓮は続ける。
「しかし一方では、僕達子供が理不尽な大人から自衛するために有用な手段である事も事実です。
僕個人としては、見て見ぬふりをするのも同罪だと思っていますが…。」
その言葉に、若い警察官が震え出す。
「ただ、上司の報復を恐れている様なケースですと、職場の環境に問題が有りそうですね。」
「な、なんだと?」
「ところで、駿河警視監はお元気ですか?」
急に変わった話しに、多田が目を白黒させる。
「す、駿河警視監?未来の警視総監候補だろう…お元気だと思うが…。」
「そうですか。では、駿河警視監…いえ、誠司さんが柴犬を飼ってるのはご存知でしょうか。」
「せ、誠司さん?…柴犬?」
「ええ。溺愛してるんですよ。その証拠にほら、アイコンが愛犬なんです。」
そう言うと、蓮はLAINのトーク画面を見せる。
「な、なんで…警視監とLAINしてるんだ…いや、ハッタリ…だろう…?」
急激に勢いを無くした多田に、蓮は微笑む。
「そう言えば自己紹介がまだでしたね。僕は切藤といいます。切藤総合病院理事長の次男です。
僕の父と警視監が同窓生なのは有名な話ですよね?」
一度言葉を切って続ける。
「その関係で、彼とは個人的に連絡を取り合う仲なんですよ。誠司さんは真面目だから、組織の職場環境に問題があれば知りたいだろうなぁ。」
「ヒッ…やめ、やめてくれ…。」
狼狽える警官に、蓮は冷たい目を向けた。
「では、然るべき態度を取っていただけますか。」
「し、然るべき…?」
分かってない様子の多田に、蓮は丁寧さをかなぐり捨てた。
長い脚を組み、少し上体を反らしたその姿は圧倒的に人を支配する側の人間のそれ。
「救いようがねーな。晴に謝れっつってんだよクソヤロー共。」
低く放たれた命令に、警官二人は震え上がった。
「失礼します!萱島、遅くなってすま…えぇ⁉︎」
戻って来た大山先生が仰天したのも無理はないと思う。
呆然とする俺、何故かここにいて魔王の如きオーラを撒き散らす蓮、涙を流す若い警官、土下座する勢いで謝る中年の警官ーー。
部屋の中は間違いなくカオスだった…。
●●●
切藤総合病院は、日本を代表する最先端設備がある病院の1つです。
セキュリティーのしっかりしたVIPフロアがあるため著名人や政治家がお世話になる事も多く、蓮の父(拓哉)は各方面に顔が効きます。
その子供である蓮と翔も、大物との繋がりが結構あったりします。
警視監は警察関係の序列No.2です。
上には警視総監のみ。
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