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高校生編side晴人 守ってくれるのは大切だからだって思いたい
50.身代わり
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文化祭は短縮と言う形で終わった。
混乱を避けるために小火の件は公表されなかったから、急な決定に生徒は文句タラタラ。
学校側は翌日…つまり今日、全校集会を開いてそこで事情を話すと約束した。
で、今はその集会中だ。
最初に生徒会から、文化祭の急な短縮に関する予算の修正とかの報告。
昨日の今日で資料が足りなかったり、終始バタバタしてたのが不憫だ。
その後が、事件に関する話しだった。
昨日小火があった事。
その場所が剣道部の部室だった事。
イタズラ目的の可能性がある事。
それに関して注意喚起されて集会は終了した。
少し残って啓太と話してると、先輩達が合流して来た。
「学校側からは注意だけか。もし内部犯だったらどうすんだよ。」
「校長、事勿れ主義だもんな。頼みの綱の理事長は出張中らしいし。」
「まぁでもホラ、もしかしたらこの後の持ち物検査で何か出てくるかもしれないぜ?」
「持ち物検査?」
「あっ、一年は知らないよな。文化祭の翌日って帰りに持ち物検査があんの。
何年か前に、文化祭の備品を持って帰ろうとする事件があったらしくて。」
へぇー。まぁ禁止な物は特に持って来てないから大丈夫か。
そんな事を考えながら先輩達と別れて教室に戻ると、全員鞄を持って視聴覚室に移動するように言われた所だった。
視聴覚室には先客がいて、派手な髪色が目立つ。
「特進と合同でやるんだね。いつもゲームとか持って来てるけど大丈夫なのかな?」
「ご心配なーく!先輩から情報入ってるから今日の鞄は優等生でっす!」
背後から明るい声と共に肩を抱かれて、驚いて振り返ると黒崎君だった。
「そ、そうなんだ…。流石だね。
あ、昨日はありがとね!」
「全然だいじょーぶ!俺さ、待ち合わせ忘れてて相手激オコだったんだけど、人助けしてたって言ったら許してくれたからむしろ有難かった!」
悪びれもせず言う黒崎君に思わず笑ってしまう。
と、急に彼が仰け反った。
「痛っえ!何すんだよ、蓮!」
見ると、黒崎君の太腿に長い脚が蹴りを入れてる。
「急に走り出したと思ったらこれか。腕退けろ。」
急な蓮の登場に心臓がひっくり返った。
昨日の事を思い返すと嫌な汗が止まらない。
下手したら昨日のあれで、俺が蓮を好きだってバレたんじゃないか⁉︎
何とか弁解しないと、と思うのに、見つめたまま声が出なくて…。
パチっと目が合うと思いっ切り逸らしてしまった。
あぁぁ!!これじゃあ火に油!!!
その時、担任が入って来て荷物検査の説明が始まった。
皆んな大ブーイングだ。
だけど…
バァン!!
大きなドアの音と共に視聴覚室に入って来た人物に、部屋の中が静まり返った。
「ゲッ!鬼丸じゃん。」
黒崎君が小声で呻く。
鬼丸こと田丸先生は、学年主任兼体育教師。
デカイ声と鋭い眼光が威圧的で、かなり厳しい事で有名だ。
「アイツ、特進のこと目の敵にしてんだよな。」
特進は服装に関して自由なんだけど、田丸先生がそれに猛反対してるのは周知の事実だ。
彼曰く、『服装の乱れは心の乱れ』らしい。
ドアの前に仁王立ちする田丸先生に、部屋の緊張感が一気に高まる。
その隙に、荷物検査が始まった。
検査する先生は3人で、生徒はランダムに呼ばれる。
(田丸先生は何でいるんだろう。見張り?)
パーテーションがあって、プライバシーには考慮してるけど当然あんまりいい気持ちはしないよなぁ。
啓太は直ぐに呼ばれて行ってしまった。
俺ももうすぐかもしれない。
なんとなく鞄の中を探って…見慣れない箱に首を傾げる。
これって…え???
それが何か悟った瞬間、全身から血の気が引いた。
「晴、どうした?」
様子のおかしい俺に気付いたのか、蓮が小声で尋ねる。
だけど、上手く答えられない。
「…これ……」
震える手で掴んだその箱を見て、蓮が息を呑んだ。
違う、俺のじゃ無い!
全く身に覚えが無いんだ!
そう言いたいのに、舌がもつれて上手く言葉が出ない。
そんな俺に、蓮は声を押し殺して言う。
「寄越せ。」
「え?」
良く理解できないまま、蓮が俺の手からそれを奪うのを呆然と見ていた。
「れ…」「切藤!!何してるんだ!!」
突然の大声に、部屋の中の全員の目がこっちに注がれる。
田丸先生はズカズカと蓮に近付いて、その手から箱を奪い取るとニヤリと笑った。
「ほぉ?これは…タバコだなぁ?」
ヒュッと息を呑む声があちこちから聞こえた。
「立て、切藤!お前は別室だ!」
無理矢理蓮を立たせる先生に向かって、俺は必死に言った。
「先生!違うんです!それは…」「触んじゃねーよ。行けばいんだろ?」
俺の言葉を遮って、蓮が田丸先生の手を振り払う。
「なんだその態度は!これだから特進は!!」
ヒートアップした田丸先生は俺の話しなんか聞いちゃいない。
言い争いながら部屋を出て行く二人を、残された全員が呆然と見送る。
「な…なんで…?」
ふいに聞こえた声に振り返ると、真っ青になった相川さんがドアの向こうを見つめていた。
●●●
今後タバコに関する表現がありますが…未成年の喫煙ダメ、絶対。
混乱を避けるために小火の件は公表されなかったから、急な決定に生徒は文句タラタラ。
学校側は翌日…つまり今日、全校集会を開いてそこで事情を話すと約束した。
で、今はその集会中だ。
最初に生徒会から、文化祭の急な短縮に関する予算の修正とかの報告。
昨日の今日で資料が足りなかったり、終始バタバタしてたのが不憫だ。
その後が、事件に関する話しだった。
昨日小火があった事。
その場所が剣道部の部室だった事。
イタズラ目的の可能性がある事。
それに関して注意喚起されて集会は終了した。
少し残って啓太と話してると、先輩達が合流して来た。
「学校側からは注意だけか。もし内部犯だったらどうすんだよ。」
「校長、事勿れ主義だもんな。頼みの綱の理事長は出張中らしいし。」
「まぁでもホラ、もしかしたらこの後の持ち物検査で何か出てくるかもしれないぜ?」
「持ち物検査?」
「あっ、一年は知らないよな。文化祭の翌日って帰りに持ち物検査があんの。
何年か前に、文化祭の備品を持って帰ろうとする事件があったらしくて。」
へぇー。まぁ禁止な物は特に持って来てないから大丈夫か。
そんな事を考えながら先輩達と別れて教室に戻ると、全員鞄を持って視聴覚室に移動するように言われた所だった。
視聴覚室には先客がいて、派手な髪色が目立つ。
「特進と合同でやるんだね。いつもゲームとか持って来てるけど大丈夫なのかな?」
「ご心配なーく!先輩から情報入ってるから今日の鞄は優等生でっす!」
背後から明るい声と共に肩を抱かれて、驚いて振り返ると黒崎君だった。
「そ、そうなんだ…。流石だね。
あ、昨日はありがとね!」
「全然だいじょーぶ!俺さ、待ち合わせ忘れてて相手激オコだったんだけど、人助けしてたって言ったら許してくれたからむしろ有難かった!」
悪びれもせず言う黒崎君に思わず笑ってしまう。
と、急に彼が仰け反った。
「痛っえ!何すんだよ、蓮!」
見ると、黒崎君の太腿に長い脚が蹴りを入れてる。
「急に走り出したと思ったらこれか。腕退けろ。」
急な蓮の登場に心臓がひっくり返った。
昨日の事を思い返すと嫌な汗が止まらない。
下手したら昨日のあれで、俺が蓮を好きだってバレたんじゃないか⁉︎
何とか弁解しないと、と思うのに、見つめたまま声が出なくて…。
パチっと目が合うと思いっ切り逸らしてしまった。
あぁぁ!!これじゃあ火に油!!!
その時、担任が入って来て荷物検査の説明が始まった。
皆んな大ブーイングだ。
だけど…
バァン!!
大きなドアの音と共に視聴覚室に入って来た人物に、部屋の中が静まり返った。
「ゲッ!鬼丸じゃん。」
黒崎君が小声で呻く。
鬼丸こと田丸先生は、学年主任兼体育教師。
デカイ声と鋭い眼光が威圧的で、かなり厳しい事で有名だ。
「アイツ、特進のこと目の敵にしてんだよな。」
特進は服装に関して自由なんだけど、田丸先生がそれに猛反対してるのは周知の事実だ。
彼曰く、『服装の乱れは心の乱れ』らしい。
ドアの前に仁王立ちする田丸先生に、部屋の緊張感が一気に高まる。
その隙に、荷物検査が始まった。
検査する先生は3人で、生徒はランダムに呼ばれる。
(田丸先生は何でいるんだろう。見張り?)
パーテーションがあって、プライバシーには考慮してるけど当然あんまりいい気持ちはしないよなぁ。
啓太は直ぐに呼ばれて行ってしまった。
俺ももうすぐかもしれない。
なんとなく鞄の中を探って…見慣れない箱に首を傾げる。
これって…え???
それが何か悟った瞬間、全身から血の気が引いた。
「晴、どうした?」
様子のおかしい俺に気付いたのか、蓮が小声で尋ねる。
だけど、上手く答えられない。
「…これ……」
震える手で掴んだその箱を見て、蓮が息を呑んだ。
違う、俺のじゃ無い!
全く身に覚えが無いんだ!
そう言いたいのに、舌がもつれて上手く言葉が出ない。
そんな俺に、蓮は声を押し殺して言う。
「寄越せ。」
「え?」
良く理解できないまま、蓮が俺の手からそれを奪うのを呆然と見ていた。
「れ…」「切藤!!何してるんだ!!」
突然の大声に、部屋の中の全員の目がこっちに注がれる。
田丸先生はズカズカと蓮に近付いて、その手から箱を奪い取るとニヤリと笑った。
「ほぉ?これは…タバコだなぁ?」
ヒュッと息を呑む声があちこちから聞こえた。
「立て、切藤!お前は別室だ!」
無理矢理蓮を立たせる先生に向かって、俺は必死に言った。
「先生!違うんです!それは…」「触んじゃねーよ。行けばいんだろ?」
俺の言葉を遮って、蓮が田丸先生の手を振り払う。
「なんだその態度は!これだから特進は!!」
ヒートアップした田丸先生は俺の話しなんか聞いちゃいない。
言い争いながら部屋を出て行く二人を、残された全員が呆然と見送る。
「な…なんで…?」
ふいに聞こえた声に振り返ると、真っ青になった相川さんがドアの向こうを見つめていた。
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今後タバコに関する表現がありますが…未成年の喫煙ダメ、絶対。
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