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車線・PA
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変わらないと思っていた日常に、友から片手を差しのべられたー
期待を抱いてしまった時点で進まないはずがなかったー
より子は今の仕事との兼ね合いもあるから、来週の週末からなら入れると、タカに連絡した。
そしたら、その日にはタカから返信がきて"じゃあ来週の金曜からお願い!8時までにはお店に来てよ!あと、無地のシャツとボールペンとメモ帳を持ってきて"とのことだった。より子は短く"了解!よろしくお願いします!"と返信した。
その週の平日は、やはり少しの期待と不安で気持ちがふわふわしていた。そんな五日間はあっという間に過ぎ、初日の夜を迎えたー。
あの日以来、来ていない扉の前に立つ。何度味わっても慣れない初出勤の緊張。身だしなみをかるくチェックしてお店の扉を開けた。
「お疲れ様です。」
営業前の店内に入るのは初めてで、静かな店内に自分の声が響いたことに少し戸惑った。
「お疲れー。」
タカともう一人、奥のカウンターに座っている恐もての店長が返してくれた。
「児嶋より子です、よろしくお願いします。」
「おう、よろしく。とりあえず営業前にタカから仕事の内容を説明させるから、時間までゆっくりしてていいよ。」
「はい、分かりました。」
店長とタカはカウンター六席ある中の二席を使って座っているが、両サイドに座っていたため、真ん中に入るのも居心地が悪く、より子はボックスの片隅に腰をおろした。
「(んー、会話ゼロ?)」
後になって分かることだが、その日はたまたまそういう日だったらしく、準備を始めるまで終始無言だった。より子は意味もなく携帯をいじって時間がくるのを待った。
だいたい営業三十分前に準備をし始めるのか、おもむろに店長が席をたち、それにつられるようにしてタカが動き出した。
「じゃあ今から営業前にすることと、営業中にしてもらうことをかるく説明するから。」
「はい、よろしくお願いします。」
同級生であろうと仕事をする上では先輩なため、妙な敬語は一時ぬけなかった。
「てな感じだけど初日だし、分からないことあったらその都度聞いてくれたらいいよ」
「分かりました」
初めてのBarでのバイト。より子は仕事をこなすことももちろんだが、緊張と不安を周りに悟られないように努めた。営業中は長かったが終わってみるとあっという間の初日だった。
「しゅうーりょー!」
店長のこの言葉でお店に来てくださっていたお客様が、もう閉店なのかと少し不満げにお支払いを済ませていく。私はそれを横目に営業後の掃除をしていた。
お客様を全員お見送りをしてから、店長から一言、
「どうだった初日は?疲れた?」
より子は正直に、
「疲れました。」
と答えた。
「明日もあるから、また明日話しようか。」
「はい、わかりました。」
店長との会話は営業前の一言とこの営業後の一言だけだった。今思えば、お互いの情報なんて名前と性別だけの次元で仕事をしていた。より子自身、実は結構適応能力があるのではないかと思ったー。
そして、一番忙しい土曜日の営業も終え、片付けも終わり後は帰るだけという状態になった。
「より子ちゃん、こっちおいで。」
店長がタカに買ってこさせたコーヒーをボックスのテーブルの上に置き、そこに座るように促した。
「さ、二日間入ってみてどうだった?」
店長からそう聞かれて、とりあえず当たり障りのないことを答えておこうと思ったより子は、
「疲れましたけど、楽しかったです。」
「そか、楽しかったならよかった。こっちからみてて動きも悪くないし、初めて女の子をバイトに入れたからどうかなと思ったけど、より子ちゃんさえよけらば、週末だけでもまたバイト入ってよ。」
「はい、ありがとうございます。また、よろしくお願いします。」
この週末から毎週末バイトに入ることになったより子ー
ー次の分岐点まで少し休憩。走る前にセーフティーチェックをー
期待を抱いてしまった時点で進まないはずがなかったー
より子は今の仕事との兼ね合いもあるから、来週の週末からなら入れると、タカに連絡した。
そしたら、その日にはタカから返信がきて"じゃあ来週の金曜からお願い!8時までにはお店に来てよ!あと、無地のシャツとボールペンとメモ帳を持ってきて"とのことだった。より子は短く"了解!よろしくお願いします!"と返信した。
その週の平日は、やはり少しの期待と不安で気持ちがふわふわしていた。そんな五日間はあっという間に過ぎ、初日の夜を迎えたー。
あの日以来、来ていない扉の前に立つ。何度味わっても慣れない初出勤の緊張。身だしなみをかるくチェックしてお店の扉を開けた。
「お疲れ様です。」
営業前の店内に入るのは初めてで、静かな店内に自分の声が響いたことに少し戸惑った。
「お疲れー。」
タカともう一人、奥のカウンターに座っている恐もての店長が返してくれた。
「児嶋より子です、よろしくお願いします。」
「おう、よろしく。とりあえず営業前にタカから仕事の内容を説明させるから、時間までゆっくりしてていいよ。」
「はい、分かりました。」
店長とタカはカウンター六席ある中の二席を使って座っているが、両サイドに座っていたため、真ん中に入るのも居心地が悪く、より子はボックスの片隅に腰をおろした。
「(んー、会話ゼロ?)」
後になって分かることだが、その日はたまたまそういう日だったらしく、準備を始めるまで終始無言だった。より子は意味もなく携帯をいじって時間がくるのを待った。
だいたい営業三十分前に準備をし始めるのか、おもむろに店長が席をたち、それにつられるようにしてタカが動き出した。
「じゃあ今から営業前にすることと、営業中にしてもらうことをかるく説明するから。」
「はい、よろしくお願いします。」
同級生であろうと仕事をする上では先輩なため、妙な敬語は一時ぬけなかった。
「てな感じだけど初日だし、分からないことあったらその都度聞いてくれたらいいよ」
「分かりました」
初めてのBarでのバイト。より子は仕事をこなすことももちろんだが、緊張と不安を周りに悟られないように努めた。営業中は長かったが終わってみるとあっという間の初日だった。
「しゅうーりょー!」
店長のこの言葉でお店に来てくださっていたお客様が、もう閉店なのかと少し不満げにお支払いを済ませていく。私はそれを横目に営業後の掃除をしていた。
お客様を全員お見送りをしてから、店長から一言、
「どうだった初日は?疲れた?」
より子は正直に、
「疲れました。」
と答えた。
「明日もあるから、また明日話しようか。」
「はい、わかりました。」
店長との会話は営業前の一言とこの営業後の一言だけだった。今思えば、お互いの情報なんて名前と性別だけの次元で仕事をしていた。より子自身、実は結構適応能力があるのではないかと思ったー。
そして、一番忙しい土曜日の営業も終え、片付けも終わり後は帰るだけという状態になった。
「より子ちゃん、こっちおいで。」
店長がタカに買ってこさせたコーヒーをボックスのテーブルの上に置き、そこに座るように促した。
「さ、二日間入ってみてどうだった?」
店長からそう聞かれて、とりあえず当たり障りのないことを答えておこうと思ったより子は、
「疲れましたけど、楽しかったです。」
「そか、楽しかったならよかった。こっちからみてて動きも悪くないし、初めて女の子をバイトに入れたからどうかなと思ったけど、より子ちゃんさえよけらば、週末だけでもまたバイト入ってよ。」
「はい、ありがとうございます。また、よろしくお願いします。」
この週末から毎週末バイトに入ることになったより子ー
ー次の分岐点まで少し休憩。走る前にセーフティーチェックをー
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