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エルフ王国
外出準備
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「うわっ……とんでもない事になっているな」
黒箱の蓋の部分を開くと、ナオは中身を覗いて表情を引きつらせる。中には言葉では表現しにくい肉の塊が存在し、圧縮された死骸とゴミの肉塊にナオは掌を構える。この状態で「清浄」の魔法を使用したらどうなるのか確かめると、発動した瞬間に黒箱の中身が消え去った。
「あれ、消えちゃった?さっきは死骸は残ったのに……ミンチになったから汚れとして認識されたのかな」
何故か黒箱の中身は清浄の魔法を使用するだけで消え去ってしまい、一応は訓練場の後始末を終えたナオは自分の部屋に戻る事にする。地面に黒渦を作り出し、その上に飛び込む形でナオは元の部屋に移動を果たす。
「さてと、迎えがくるまで休もうかな」
無事に後始末を終えたナオはベッドに横たわり、朝食の時間まで部屋の中で休む事にした――
――数時間後、ナオはいつも通りに訓練場に案内される。今日の予定では外の世界へ赴くはずだったが、リンの申し出で外に出る前に実際の魔物との戦闘に慣れてい置いた方が良いと提案され、今日は彼女が用意した魔物と戦う事になった。
「ナオ様には今日は角兎から戦ってもらいます」
「角兎?」
「名前の通りに兎型の魔獣です。危険度はそれほど高くはなく、頭に生えている角さえ気を付ければ子供でも対処できる魔獣ですので安心してください」
「はあっ……」
子供でも対応できるというリンの言葉にナオは少し引っかかったが、別に彼女に悪気はなく、彼女なりに気遣っている事は彼も理解できている。それでも子ども扱いされていうようで良い気分ではないが、ナオが密かにレベルを上げている事を知らない彼女は安全を重視して彼に説明する。
「角兎の弱点は角の下に隠されている眉間です。なので眉間を打ち込めば怯みますし、その隙に止めを刺してください。気を付けて欲しいのは角兎の突進は強力なので真面に喰らわないように気を付けてください。こちらをどうぞ」
「剣と……盾ですか?」
「はい。いざというときはこれでを身を守ってください」
ナオは訓練用ではなく、本物の長剣と円盤型の盾を取り出す。ナオは右手で長剣を握りしめ、左手に盾を身に着けると、女性兵士が木造の台車を訓練場に運び込む。
「キュイイッ!!」
「うわっ!?」
「大丈夫です。こちらが今日ルノ様に戦ってもらう角兎です」
兵士が運び込んできた台車には檻が3つの乗せられており、その中には黒色の毛皮の兎が存在した。但し、その額の部分には鋭利な角が生えており、どのような原理なのか削岩機のように回転させている個体も居た。
「あの、角が回っているんですけど……」
「ええ、角兎ですから」
「いや、どういう原理で回っているんですか?」
「……?まあ、角兎ですから」
ナオの質問にリンは不思議そうな表情を浮かべ、彼女にとっては角兎が角を回転させるのは当たり前のことらしく、そんな彼女の反応にナオは諦めがちに檻の中を覗き込む。
「キュイッ!!」
「うわっ!?」
「気を付けて!!隙間から覗き込むと突き刺しされますよ!!」
外見は可愛らしいが、人間を見ると敵意を剥き出しにして額の角を突き刺そうとする角兎にナオは冷や汗を流し、緑鼠よりも危険な相手なのは間違いない。ナオは朝食の際に用意されていた新しいグリドンをポケットに隠しており、いざというときは指弾を使用して倒す事を決める。
「では、早速始めましょう。私達が共にいるので安心してください。ですが、警戒心は緩めないように気を付けてください」
「あ、はい……」
兵士が檻の1つを運び込み、リンに顔を向けて彼女が頷くのを確認すると檻を開く。その瞬間、角兎が飛び出し、訓練場を駆け巡る。
「キュイッ!!」
「逃がすなっ!!取り囲めっ!!」
「ナオ様、準備を整えてください!!
兵士達が角兎を取り囲み、退路を塞いでナオの元に誘導させ、覚悟を決めたナオも武器を構える。渡された盾は腕に取り付けているので両手で長剣を使用する事は可能であり、ナオは冷静に角兎の動作を予測して剣を突き出す。
「ここっ!!」
「ッ……!?」
兵士に誘導されて飛び出してきた角兎に対し、ナオは剣を突き刺す。放たれた刃は角兎の顔面に的中し、鮮血が舞う。その光景に兵士達は驚いた声を上げ、リンも躊躇なく角兎を仕留めたナオに動揺する。
「ふうっ……これでいいですか?」
「え、ええっ……隙の無い見事な攻撃でした」
最小限の動作で的確に角兎を仕留めたナオにリンは動揺しながらも声を掛けるが、ナオ自身は実際に魔物と戦うのは初めてではなく、既に緑鼠を100匹以上も仕留めている。直接的に殺害するのは初めてだが、事前に戦闘を経験していたという事実が彼の緊張感を解し、角兎を見事に仕留めた。
「よいしょっと……うわ、血が……」
「あっ……だ、誰か血を拭きなさい!!」
ナオは角兎から剣を引き抜き、血液がこびり付いた刃を兵士が布で拭き取る。その間にリンは殺された死骸の様子を調べ、自分の指示通りに角兎の弱点である眉間を正確に突いて殺害した事に気付き、初めてでありながら急所を打ち抜いたナオに彼女は動揺する。
黒箱の蓋の部分を開くと、ナオは中身を覗いて表情を引きつらせる。中には言葉では表現しにくい肉の塊が存在し、圧縮された死骸とゴミの肉塊にナオは掌を構える。この状態で「清浄」の魔法を使用したらどうなるのか確かめると、発動した瞬間に黒箱の中身が消え去った。
「あれ、消えちゃった?さっきは死骸は残ったのに……ミンチになったから汚れとして認識されたのかな」
何故か黒箱の中身は清浄の魔法を使用するだけで消え去ってしまい、一応は訓練場の後始末を終えたナオは自分の部屋に戻る事にする。地面に黒渦を作り出し、その上に飛び込む形でナオは元の部屋に移動を果たす。
「さてと、迎えがくるまで休もうかな」
無事に後始末を終えたナオはベッドに横たわり、朝食の時間まで部屋の中で休む事にした――
――数時間後、ナオはいつも通りに訓練場に案内される。今日の予定では外の世界へ赴くはずだったが、リンの申し出で外に出る前に実際の魔物との戦闘に慣れてい置いた方が良いと提案され、今日は彼女が用意した魔物と戦う事になった。
「ナオ様には今日は角兎から戦ってもらいます」
「角兎?」
「名前の通りに兎型の魔獣です。危険度はそれほど高くはなく、頭に生えている角さえ気を付ければ子供でも対処できる魔獣ですので安心してください」
「はあっ……」
子供でも対応できるというリンの言葉にナオは少し引っかかったが、別に彼女に悪気はなく、彼女なりに気遣っている事は彼も理解できている。それでも子ども扱いされていうようで良い気分ではないが、ナオが密かにレベルを上げている事を知らない彼女は安全を重視して彼に説明する。
「角兎の弱点は角の下に隠されている眉間です。なので眉間を打ち込めば怯みますし、その隙に止めを刺してください。気を付けて欲しいのは角兎の突進は強力なので真面に喰らわないように気を付けてください。こちらをどうぞ」
「剣と……盾ですか?」
「はい。いざというときはこれでを身を守ってください」
ナオは訓練用ではなく、本物の長剣と円盤型の盾を取り出す。ナオは右手で長剣を握りしめ、左手に盾を身に着けると、女性兵士が木造の台車を訓練場に運び込む。
「キュイイッ!!」
「うわっ!?」
「大丈夫です。こちらが今日ルノ様に戦ってもらう角兎です」
兵士が運び込んできた台車には檻が3つの乗せられており、その中には黒色の毛皮の兎が存在した。但し、その額の部分には鋭利な角が生えており、どのような原理なのか削岩機のように回転させている個体も居た。
「あの、角が回っているんですけど……」
「ええ、角兎ですから」
「いや、どういう原理で回っているんですか?」
「……?まあ、角兎ですから」
ナオの質問にリンは不思議そうな表情を浮かべ、彼女にとっては角兎が角を回転させるのは当たり前のことらしく、そんな彼女の反応にナオは諦めがちに檻の中を覗き込む。
「キュイッ!!」
「うわっ!?」
「気を付けて!!隙間から覗き込むと突き刺しされますよ!!」
外見は可愛らしいが、人間を見ると敵意を剥き出しにして額の角を突き刺そうとする角兎にナオは冷や汗を流し、緑鼠よりも危険な相手なのは間違いない。ナオは朝食の際に用意されていた新しいグリドンをポケットに隠しており、いざというときは指弾を使用して倒す事を決める。
「では、早速始めましょう。私達が共にいるので安心してください。ですが、警戒心は緩めないように気を付けてください」
「あ、はい……」
兵士が檻の1つを運び込み、リンに顔を向けて彼女が頷くのを確認すると檻を開く。その瞬間、角兎が飛び出し、訓練場を駆け巡る。
「キュイッ!!」
「逃がすなっ!!取り囲めっ!!」
「ナオ様、準備を整えてください!!
兵士達が角兎を取り囲み、退路を塞いでナオの元に誘導させ、覚悟を決めたナオも武器を構える。渡された盾は腕に取り付けているので両手で長剣を使用する事は可能であり、ナオは冷静に角兎の動作を予測して剣を突き出す。
「ここっ!!」
「ッ……!?」
兵士に誘導されて飛び出してきた角兎に対し、ナオは剣を突き刺す。放たれた刃は角兎の顔面に的中し、鮮血が舞う。その光景に兵士達は驚いた声を上げ、リンも躊躇なく角兎を仕留めたナオに動揺する。
「ふうっ……これでいいですか?」
「え、ええっ……隙の無い見事な攻撃でした」
最小限の動作で的確に角兎を仕留めたナオにリンは動揺しながらも声を掛けるが、ナオ自身は実際に魔物と戦うのは初めてではなく、既に緑鼠を100匹以上も仕留めている。直接的に殺害するのは初めてだが、事前に戦闘を経験していたという事実が彼の緊張感を解し、角兎を見事に仕留めた。
「よいしょっと……うわ、血が……」
「あっ……だ、誰か血を拭きなさい!!」
ナオは角兎から剣を引き抜き、血液がこびり付いた刃を兵士が布で拭き取る。その間にリンは殺された死骸の様子を調べ、自分の指示通りに角兎の弱点である眉間を正確に突いて殺害した事に気付き、初めてでありながら急所を打ち抜いたナオに彼女は動揺する。
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