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エルフ王国
襲撃者
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「よし、誰もいないな……」
暗視のスキルを発動させながらナオは部屋の中に帰還し、黒箱を片手にベッドの上に降り立つ。この箱の中に拘束している鼠を城の人間に差し出せば彼を殺そうとした人物を特定できるかも知れず、時間帯は遅いがナオは部屋の前で見張り役を行っているはずの兵士に頼んでリンを呼び出して貰おうと考えた時、不意に彼は扉の外が騒がしい事に気付く。
『な、何だ貴様ら!!この部屋に誰が居ると思って……ぐああっ!?』
「えっ!?」
部屋の外から悲鳴が響き渡り、その声を聞いたナオは自分の部屋を見張っている兵士の声だと気づき、外側から扉の鍵を開こうとする音が響く。咄嗟にナオは危険を感じ取り、自分が隠れられる場所を探す。
(あそこだ!!)
ナオは急いで部屋の隅に存在するクローゼットに逃げ込み、中に入る前に振り返って窓に視線を向け、扉を開いた音を聞いた瞬間に小石を撃ち込む。
(上手く行け!!)
狙撃のスキルを利用してナオはクローゼットを締める前に小石を撃ち込み、窓を破壊する。そして自分は即座にクローゼットの中に隠れ、扉の隙間から様子を伺う。
「…………」
部屋の中に入り込んできたのは全身を黒色のフードで覆い隠した人物であり、その手には血で塗れた黒色の剣が握りしめられていた。それを目撃したナオは動揺を隠せず、扉の外で見張りを行っていた兵士の血だと直感で判断する。相手は部屋の中に入り込み、破壊された窓に視線を向け、即座に駆け付ける。
「……落ちたのか?」
「……!?」
部屋に入り込んだ人物の声を聞いた瞬間、ナオは動揺を隠せず、危うく声を上げそうになる。慌てて口を両手で塞ぎ、隠密のスキルを利用して存在感を限りなく殺すが、侵入者は訝しがるように視線を向け、やがてクローゼットに近づく。
「ここか!!」
侵入者は勢いよくクローゼットの扉を開き、中を確認する。しかし、予想に反してそこには着替えしか存在せず、人の姿はなかった。その光景に侵入者は動揺を隠せず、壁や立てかけられている衣服を調べるがおかしな点はない。
「ちっ……何処に消えた?」
部屋の主の姿が見えずに侵入者は苛立ちながらも部屋の中を荒らし、やがて冷静さを欠いたように無茶苦茶に剣を振り回す。
「くそ、何処に逃げた……!!」
やがて部屋の中を捜索するのを諦めたのか外に駆け出す足音が響き渡り、クローゼットの足場に展開された黒渦の内部からナオが姿を現す。
「ふうっ……助かったのか?」
ナオは空間魔法を利用して森の中の泉に避難し、黒渦を通して部屋の様子を伺う。部屋の中が暗闇で会った事が幸いし、侵入者はクローゼットの足場に黒渦が展開されていた事に気付かずに立ち去ったらしく、ナオは注意しながら扉の外の様子を伺う。
「ぐうっ……!!」
「良かった、まだ生きてる」
通路の外には胸元に傷を負った兵士の姿が存在し、ナオは意識を失っている兵士を部屋の中に引き寄せ、出入口の扉を黒盾の魔法で塞ぐ。扉代わりに黒色の壁が部屋と通路を塞ぎ、これならば侵入者も簡単に入り込めないだろう。
「大丈夫ですよ。すぐに治しますから……小回復!!」
「ううっ……」
傷を負った兵士にナオは掌を翳して回復魔法を施し、傷を癒す。幸いにも傷は致命傷ではなく、彼の覚えたての回復魔法でも治療できたが、問題はどうやって彼を連れて安全な場所に避難するかである。
(迂闊に通路を移動すれば見つかる可能性がある。だからといってこの人を連れて森の中に避難するのも難しいし……)
兵士は現在は気を失っているが、もしも森の中で目を覚ましたら面倒な事になるだろう。しかし、この場で放置していたら彼の命が危なく、侵入者が目撃者を排除するために兵士を殺す可能性は高い。
(どうする?他の人達に助けを求めるにも移動しないといけないし、だからといってこの人を置いていくわけには……待てよ?)
ナオは兵士の格好を確認し、そして黒盾を解除して通路側に広がる兵士の血の跡を見ると、ある作戦を思いつく。成功確率は高いとは言い切れないが、それでも自分と兵士が助かるにはこの方法しかない。
(上手く行けよ……!!)
まずは兵士を安全な場所に避難させるため、ナオは彼を担いで空間魔法を利用して森の中の泉に避難した――
――その一方、標的を逃した侵入者は焦りを抱きながら通路を移動してナオの痕跡を探していた。彼は窓が破壊されていた事からナオが部屋の中から外に飛び出したのではないかと考えていたが、貧弱なステータスの彼が標高が数百メートルも存在する場所から飛び降りるなど考えておらず、魔法も碌に扱えない人間が窓から落ちて助かるとは微塵も考えていなかった。
(何処にいる……あの勇者め!!)
侵入者の正体はこの国の王子であるイヤンであり、彼は本気でナオを殺すために訪れていた。理由は今日の昼間にリンが国王にナオの成長を誇らしげに答えていた事を聞いたからであり、彼はほんの数日でオークを仕留めたナオの成長ぶりに危機感を抱いていた。
暗視のスキルを発動させながらナオは部屋の中に帰還し、黒箱を片手にベッドの上に降り立つ。この箱の中に拘束している鼠を城の人間に差し出せば彼を殺そうとした人物を特定できるかも知れず、時間帯は遅いがナオは部屋の前で見張り役を行っているはずの兵士に頼んでリンを呼び出して貰おうと考えた時、不意に彼は扉の外が騒がしい事に気付く。
『な、何だ貴様ら!!この部屋に誰が居ると思って……ぐああっ!?』
「えっ!?」
部屋の外から悲鳴が響き渡り、その声を聞いたナオは自分の部屋を見張っている兵士の声だと気づき、外側から扉の鍵を開こうとする音が響く。咄嗟にナオは危険を感じ取り、自分が隠れられる場所を探す。
(あそこだ!!)
ナオは急いで部屋の隅に存在するクローゼットに逃げ込み、中に入る前に振り返って窓に視線を向け、扉を開いた音を聞いた瞬間に小石を撃ち込む。
(上手く行け!!)
狙撃のスキルを利用してナオはクローゼットを締める前に小石を撃ち込み、窓を破壊する。そして自分は即座にクローゼットの中に隠れ、扉の隙間から様子を伺う。
「…………」
部屋の中に入り込んできたのは全身を黒色のフードで覆い隠した人物であり、その手には血で塗れた黒色の剣が握りしめられていた。それを目撃したナオは動揺を隠せず、扉の外で見張りを行っていた兵士の血だと直感で判断する。相手は部屋の中に入り込み、破壊された窓に視線を向け、即座に駆け付ける。
「……落ちたのか?」
「……!?」
部屋に入り込んだ人物の声を聞いた瞬間、ナオは動揺を隠せず、危うく声を上げそうになる。慌てて口を両手で塞ぎ、隠密のスキルを利用して存在感を限りなく殺すが、侵入者は訝しがるように視線を向け、やがてクローゼットに近づく。
「ここか!!」
侵入者は勢いよくクローゼットの扉を開き、中を確認する。しかし、予想に反してそこには着替えしか存在せず、人の姿はなかった。その光景に侵入者は動揺を隠せず、壁や立てかけられている衣服を調べるがおかしな点はない。
「ちっ……何処に消えた?」
部屋の主の姿が見えずに侵入者は苛立ちながらも部屋の中を荒らし、やがて冷静さを欠いたように無茶苦茶に剣を振り回す。
「くそ、何処に逃げた……!!」
やがて部屋の中を捜索するのを諦めたのか外に駆け出す足音が響き渡り、クローゼットの足場に展開された黒渦の内部からナオが姿を現す。
「ふうっ……助かったのか?」
ナオは空間魔法を利用して森の中の泉に避難し、黒渦を通して部屋の様子を伺う。部屋の中が暗闇で会った事が幸いし、侵入者はクローゼットの足場に黒渦が展開されていた事に気付かずに立ち去ったらしく、ナオは注意しながら扉の外の様子を伺う。
「ぐうっ……!!」
「良かった、まだ生きてる」
通路の外には胸元に傷を負った兵士の姿が存在し、ナオは意識を失っている兵士を部屋の中に引き寄せ、出入口の扉を黒盾の魔法で塞ぐ。扉代わりに黒色の壁が部屋と通路を塞ぎ、これならば侵入者も簡単に入り込めないだろう。
「大丈夫ですよ。すぐに治しますから……小回復!!」
「ううっ……」
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(迂闊に通路を移動すれば見つかる可能性がある。だからといってこの人を連れて森の中に避難するのも難しいし……)
兵士は現在は気を失っているが、もしも森の中で目を覚ましたら面倒な事になるだろう。しかし、この場で放置していたら彼の命が危なく、侵入者が目撃者を排除するために兵士を殺す可能性は高い。
(どうする?他の人達に助けを求めるにも移動しないといけないし、だからといってこの人を置いていくわけには……待てよ?)
ナオは兵士の格好を確認し、そして黒盾を解除して通路側に広がる兵士の血の跡を見ると、ある作戦を思いつく。成功確率は高いとは言い切れないが、それでも自分と兵士が助かるにはこの方法しかない。
(上手く行けよ……!!)
まずは兵士を安全な場所に避難させるため、ナオは彼を担いで空間魔法を利用して森の中の泉に避難した――
――その一方、標的を逃した侵入者は焦りを抱きながら通路を移動してナオの痕跡を探していた。彼は窓が破壊されていた事からナオが部屋の中から外に飛び出したのではないかと考えていたが、貧弱なステータスの彼が標高が数百メートルも存在する場所から飛び降りるなど考えておらず、魔法も碌に扱えない人間が窓から落ちて助かるとは微塵も考えていなかった。
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