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最終章 前編 〈王都編〉

捕らわれたマリア

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「やはりカレハ様と王妃は繋がっていましたか……」
「でも、ヨツバ王国からバルトロス王国まで結構遠いよね?どうやって連絡を取り合っているんだろう……」
「それなら僕に心当たりがある。バルトロス王国とヨツバ王国には遠方の人間と連絡を取り合う事が出来る勇者の聖遺物を所有しているって家に居た頃に聞いたことがある。それを使って王妃はきっとカレハと連絡を取り合っていたんだ」
「……その魔道具ならば確かに実在します。通信鏡と呼ばれる鏡を通して遠方の人間と会話を行う魔道具です。ですが、どうしてそれを隔離されているはずのカレハ様が……」
「王妃が手を貸した?」
「考えられるとしたらそれしかないけど……」


通信鏡と呼ばれる魔道具で王妃はカレハと連絡を取り合い、マリアがヨツバ王国で拘束された事を知り、処刑日を早めたと考えれば不審な点はない。レナ達にとっては最悪の状況に陥り、王妃に真正面から対抗できる唯一の人物がヨツバ王国のカレハに捕らわれた事になる。

今からヨツバ王国に乗り込み、マリアを救い出したい想いはあるが、そうすれば処刑日が迫るナオ達を見殺しには出来ない。マリアが不在の状態でバルトロス王国と戦うのは危険が大きいが、それでもマリアの助力無しで3人を救い出さなければならない。


「兄者はマリア殿を救い出すため、王城に忍び込み、王妃の息子を拉致するつもりでござる」
「そんな無謀な!?」
「子供を人質に取る気ですか!?」
「他に方法がなかったのでござる!!マリア殿を救うため、兄者は決死の覚悟で王城に乗り込んだのでござるが……未だに連絡は取れないでござる」
「そんな……」
「残された拙者は前にアイラ殿が匿われていたこの男爵家の事を思い出し、マリア殿からこの屋敷の使用人がレナ殿と関わりがあると聞いていたので拙者は一か八かの賭けでここでずっと待ち伏せていたのでござる。正直、レナ殿とここで会えたのは運が良かったでござる」
「そうか……くそ、八方塞がりか」


マリアは捕らわれ、カゲマルは王妃の息子を拉致しようとして失敗したと考えるしかなく、残されたハンゾウはどうにかレナ達と合流出来たが状況は最悪だった。しかし、ここで嘆いても仕方なく、レナは使用人達に振り返る。


「皆、今更だけど俺達の事は秘密にしてほしい」
「え、ええっ……誰にも話しませんよ」
「ただ、俺達は黙っていても他の使用人の口封じが出来るかどうか……」


男爵家の屋敷にはレナが幼少の頃に世話になった使用人達だけではなく、他にも十数人の使用人が存在し、現在の宿舎にはレナの顔なじみの使用人しか存在しないがこの場所で仲間達を待機させた場合は他の使用人に気付かれる恐れがある。それに使用人達がもしも王国にレナ達を匿った事を知られたら今度こそ殺されてしまうかもしれない。

出来れば皆に迷惑を掛けたくはないと考えたレナは他に王都で潜伏出来る場所はないのかと考えていると、不意にハンゾウに視線を向けて彼女が王都へ先に潜入していた事を思い出す。彼女ならば王妃と対立している「革命団」と呼ばれる組織の存在を知っているのではないかと思い、尋ねてみた。


「そういえばハンゾウ、この王都に革命団という組織がいるらしいけど……何か知っている?」
「おおっ、レナ殿も革命団の事をご存じでござったか!!それなら話が早い、実は拙者は革命団と既に接触を果たしているでござる!!」
「本当に?じゃあ、その中にバルとも居るのか?」
「ややっ!?どうしてその事を……確かにバル殿もアイラ殿も共に今は革命団の隠れ家に居るでござるよ」
「本当か!?」
「良かった、無事だったんだね!!」
「アイラ様もこの街にいらっしゃるのですか!?」
「アイラ……?」


アイラとバルが革命団と合流し、現在は王都に存在する隠れ家で潜伏しているという情報にレナ達は喜び、リンダも驚きを隠せず、一方で聞きなれない名前にティナは首を傾げる。王都へ訪れて初めての吉報に全員が喜ぶが、更にハンゾウは革命団がこれから起こそうとしている行動を話す。


「実は先日、革命団元にシズネ殿とジャンヌ殿が訪れたのでござる。だけど、この二人はどうやら王国に寝返った革命団の団員によって捕縛されたらしく、現在は革命団はナオ姫を含めて3人の救出作戦を立てているのでござる」
「おおっ」
「やっぱりあの二人も捕まっていたのか……レナの情報通りだな」
「でも、救出作戦と言ってもどうするんだよ?そもそも革命団ていうのはどれくらいの規模なんだ?」
「正確な人数は把握していないでござるが、決して少なくはないでござる。それに手練れの冒険者も多く、中には氷雨に所属する冒険者も居たでござる。ミナ殿の冒険者集団の御二人も居たでござるよ?」
「え、ガロとモリモも!?」


自分の仲間二人が革命団に参加していた事にミナは驚くが、どうやらレナ達が想定していたよりも革命団という組織は規模も大きく、王妃と対立するだけの戦力も保持しているらしい。それならばここにいる全員を革命団の隠れ家へ案内出来ないのかをレナは尋ねる。


「ハンゾウ、俺達を革命団の代表の人達と会わせてくれない?それと……母上とバルにも」
「その言葉を待っていたでござる!!では、すぐに拙者と向かってほしい場所があるでござる」
「それならあたしも兄貴に付いて行きます。緑影の人達程じゃないけど、一応は隠密のスキルも覚えているので……」
「私も同行しましょう」
「え、リンダも行っちゃうの?」
「今のレナ様を放置は出来ません。それに格闘家の私ならば体力を回復させる「気功術」を扱えます。出発前にレナ様の体力を回復させましょう」
「え、そんなスキルもあるの?」
「格闘家だけが扱える固有スキルです。自分の体力を掌を通して相手に送り込む能力です。今から行いますので動かないでくださいね」
「分かった……痛くない?」
「多少の衝撃は走りますが、痛みはないはずです」


リンダはそういうとレナの背後に回り、後ろから首筋を両手で挟むと瞼を閉じて意識を集中させる。やがてリンダの掌に緑色の光が灯り、レナの中に魔力とは異なるエネルギーが流し込まれる感覚に陥った。


「お、おおっ……何だこれ、凄く身体が楽になる」
「気と呼ばれる魔力とは違う生命エネルギーを与えています。これだけ与えればしばらくの間は大丈夫だとは思いますが……無理はしないでください」
「ありがとう、凄く楽になった」


今まで全身に錘が吊るされていたように重かった身体が一気に軽くなったレナはリンダに感謝すると、身体を軽く動かして十分に戦える状態まで回復した事を確認すると、全員に振り返って準備を行う。


「じゃあ、皆は悪いけど屋敷に戻っててよ。それと……レイク達とはここで一旦お別れだね」
「坊ちゃん……アイラ様の元へ向かうんですか?」
「うん、全部終わったら……また会いに来るからね」


話を聞いていた使用人達は悲し気な表情を浮かべてレナの元へ集まり、一人一人が彼を抱きしめていく。折角の再会だが、今は再び会えたことを十分に喜び合う時間もなく、再会を約束して使用人達と別れを告げる。その光景に何人かは目元を覆い、ゴンゾウとミナとティナに至っては号泣していた。


「ううっ……血の繋がりがなくとも、彼等はレナ達の家族なんだな。ぐすんっ」
「レナ君可哀想だよ……」
「ぐすんっ……」
「いや、何でお前等の方が泣いてんだよ……」
「そういうダインも目元が潤んでる」
「う、うるさいな!!」


感受性豊かな仲間達の反応にレナは荷が笑いを浮かべ、すべての使用人達に別れを終えるとレナはハンゾウと共に革命団の隠れ家へ向けて移動を開始する――



※その頃のマリア

カレハ「ほ~ら、王国から取り寄せた豚骨ラーメンよ……さあ、食べなさい!!( ゚Д゚)つラーメン」
マリア「くっ……なんて非道な(´Д`)」
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