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外伝 ~ヨツバ王国編~

仲間に相談

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――その日の晩、東聖将の領地を抜けたレナ達は安全のために火を起こさずに夜を過ごす中、月明かりを頼りにレナは仲間達と向かい合い、事前にアイリスと相談した上で考えた作戦を伝える。作戦の内容を聞き終えたコトミン達は全員が呆気に取られた。


「……ここまでが俺の考えた作戦だけど、どうかな?成功すると思う?」
「レナ殿……それは流石に危険とか、無謀とか、もうそういう言葉では言い表せないでござる」
「失敗したら絶対に死ぬだろそれ……」
「……無理」
「兄貴、その作戦は流石に……」
「レナたん……」


レナの話を聞いて全員が困惑の表情を浮かべ、それほどまでに彼の話した作戦は突拍子もなく、危険が大きすぎた。ここにもしもシズネがいたら絶対に反対していただろうが、この作戦ならば確かに敵の意表を突き、西聖将の領地へ辿り着ける可能性が高まる。


「確かに無謀かと思うかもしれないけど、何の勝算もないわけじゃない。実は七影の奴等から王都へ入れる抜け道を聞いているんだ」
「えっ!?そんなのあるんですか!?」
「抜け道の存在を知っているのは緑影の面子の中でも七影とデブリ国王だけらしいから、カレハ王女も知らないと思う」
「七影が……え?あいつらそんな事を喋るような奴等なの?」
「足の裏をこちょこちょしたら素直に吐いたよ」
「なんて恐ろしい拷問……私でも口を割る」
「ぷるるんっ(怯える)」
「いや、恐ろしいのかなそれ!?」


七影が情報を吐いたというのはレナの嘘ではあるが、王都へ忍び込める抜け道という話は偽りではなく、この抜け道の存在を知っているのはヨツバ王国内でも10人もいない。六聖将の中でも抜け道の存在を知っているのはクレナイとツバサだけであり、王族であるティナでさえも知らされていない。

抜け道を利用すれば王都へ忍び込む事は意外と簡単であり、街中に入る事は難しくはない。だが、そこから先の行動に関してはあまりにも危険が大きすぎるため、レナの作戦にダインたちは賛同しかねる。


「あのなレナ、お前の作戦は悪いとは言わないよ。成功すればきっと上手く行くと思う……けどさ、いくら何でも危険過ぎるだろ!!今回ばかりは僕は賛成できないぞ!?」
「ダイン殿の意見も最もでござるが……拙者はレナ殿の作戦に乗ってもいいと思うでござる」
「ええっ!?ハンゾウの姐さん、本気っすか!?」
「奇襲に関しては忍者の専売特許でござる。レナ殿がどうしても作戦を実行するというのであれば拙者も同行するでござる」
「でも、危険過ぎるよ!!レナたん達にもしも何かあったら……!!」
「大丈夫、レナと私達ならできる」
「コトミン、お前もか!?」


レナの作戦にハンゾウは賛成し、ダインとエリナとティナは反対するが、コトミンもレナの決断に賛成を示す。スラミンや他の魔獣達はレナ達の様子を伺い、自分達は彼等の決めた事に従うとばかりに口を挟まない。


「ダイン、危険かもしれないけどこのまま進んでも西聖将の元へ辿り着けるのか分からない。けど、どうしても反対するというのなら無理強いはしないよ。このまま進もう」
「うっ……どうしてこんな時だけそういう事言うんだよ。いつもなら無理やりでも手伝わせるのに」
「それだけこの作戦が危険だって事だよ。だから全員が賛成するまでは作戦は実行しない、だけど俺はこの作戦以外に良案は思いつかないと思っている」
「確かに今のまま進んでも、東壁街に軍隊が派遣されるまでに西聖将の元へ辿り着けるのかも分からないっすね……あの、本当に兄貴はこの作戦が上手く行くと思いますか?」
「絶対に上手く行く、なんて断言はできないよ。だけど、この作戦を成功させれば全部上手く行くとは思ってる」
「ううっ……分かったよ、僕も協力するよ!!だけど、また一人で突っ走って無茶をするなよ!?戦う時は皆一緒だからな!!」
「分かってる、といっても本当に皆で行動するわけじゃないけどね」
「う~……分かりました。兄貴がそこまで言うのなら信じます!!だけど、絶対に後で追いついてきてくださいよ!!必ず先に西聖将の領地で待ってますからね!!」
「約束だよレナたん!!絶対に後で合流しようね!!もしも戻ってこなかったら、私達はずっと待ってるからね!!」
「分かってるって……なら、作戦の決行は夜明だ。それまでに全員身体を休ませておいて」


全員の賛同を得られるとレナは頷き、作戦の前に休息を取って体力を取り戻すように指示をする――




――数時間後、ウルに頬を舐められてレナは目を覚ます。他の者に視線を向けると、コトミンとティナはスラミンとヒトミンを枕代わりに使い、エリナは大樹の枝の上で見張りを行いながらも身体を休ませ、ダインの方はミノとアインの間に挟まれて苦しそうな表情を浮かべて眠っていた。


「キュロロロッ……」
「ブモォオオッ……」
「う、う~ん……って、寝られるか!!」
『ふぁっ!?』
「あ、起きた」


レナが起こす前にダインが叫び声を上げて起き上がり、その声を耳にして他の者達も目を覚ますと、時刻が夜明を迎えている事に気付く。
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