不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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外伝 ~ヨツバ王国編~

ダインの奥の手 闇魔導士、覚醒の時

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「これが本当の影魔法よ……シャドウ・バインド!!」
「なっ!?」
「か、壁から鎖がっ!?」


影魔法によって構成された壁から「鎖」の形をした無数の影が出現すると、レナを身体に巻き付こうとした。咄嗟に回避を行おうとしたレナだが、キラウの意思で自由に操作できるらしく、いくら躱しても鎖は執拗に追いかけてきた。


「蒼炎……うわっ!?」
「捕まえたわっ!!」


蒼炎刀を発動して鎖を切ろうとしたレナだったが、先に鎖が右足に絡みつき、床に倒れてしまう。それを見たキラウは即座に杖を掲げて追撃を加えようとしたが、その前にダインがキラウに向けて影魔法を放つ。


「シャドウ・バイト・ケルベロス!!」
「何っ!?」


キラウに向けてダインの影から放たれた三つ首の狼の頭部が食らいつき、集中力を乱されたキラウはレナの身体を拘束していた影の鎖を解除してしまう。彼女は忌まわしそうに自分の身体に噛みついたダインの影魔法を引き剥がす。通常、影魔法は実体を持っていても物理攻撃は一切通用しないのだが、同じ闇属性の魔術師ならば影魔法にも干渉する事が出来る。

倒れたと思われたダインは苦痛の表情を浮かべながらも立ち上がり、キラウと向き合う。その姿を見てキラウは普段の彼女ならば忌々しく思うところだが、身体を焼き尽くされる苦痛を味わいながらも自分に立ち向かうダインに動揺を隠せない。


「貴方……まだ歯向かう気?」
「当然だ……僕はもう、お前に屈したりしない!!もう二度と、僕の目の前で仲間を失ってたまるかっ!!」
「ダイン殿……」


魔の草原でのキラウが襲撃した際、ダインは闇の聖痕の暴走によって倒れ、意識を失っていたからこそキラウの石化の魔眼から逃れることが出来た。しかし、もしも自分が意識を失わず、闇の聖痕の反応から何かが近づいてくる事を他の人間に教えていれば仲間達を石化させられずに済んだかもしれないと思っていた。

目の前でゴンゾウやシズネ、他にも多くの仲間を石像と化した光景を目の当たりにしたダインは絶望した。もしもコトミンやハンゾウが無事でなければ彼の心は折れていたかもしれない。だが、逆にそれがダインの覚悟を固めた。もう二度と仲間を失わないため、ダインは秘策を実行する。


「行くぞキラウ!!」
「正面から……!?舐めるな人間がっ!!」
「ダイン殿、それは無謀でござる!!」


魔法も発動させずに正面から迫りくるダインにキラウは怒りを浮かべ、彼女は迫りくるダインに向けて杖を構えた。しかし、その行動を予測していたかのようにダインは杖を手放して自分の胸元に手を押し当てると、とっておきの奥の手を発動させた。


「シャドウ・コントロール!!」
「これで終わりよ!!ダークフレ……!?」


キラウが黒炎を生み出してダインの身体を今度こそ焼き尽くそうとした時、ダインは自分の身体に影を纏わせると、信じられない速度で加速してキラウに接近した。その速度は忍者であるハンゾウさえも上回り、そのまま空中に跳躍して杖を振り上げる。


「喰らえっ!!兜割りっ!!」
「なっ!?」
「ええっ!?」
「剣士の戦技をっ!?」


まさか魔術師であるダインが剣士の戦技を、しかも空中から発動させるとは思わなかったキラウは慌てて自分の杖を構えるが、二人の杖は衝突した瞬間にどちらも折れてしまう。予想外の行動でキラウは反応が追い付かず、その間にもダインは折れた杖を握り締めて全力で叩き込む。


「技を借りるぞレナぁっ!!弾……撃ぃ!!」
「がはぁっ!?」
「そ、その技は……ダインさん、何時の間に兄貴の技をっ!?」


ダインは地面を両足で強く踏み込み、足の裏から足首、膝、股関節、腹部、胸、肩、肘、腕の順番に身体を回転及び加速させ、勢い良く拳を撃ち込む。それはレナだけが扱えるはずの戦技のはずだったが、見事にダインは使いこなしていた。

魔術師が繰り出すとは思えない痛烈な一撃にキラウはのけ反り、吸血鬼である彼女の肉体でさえも身体に響く重い一撃だった。この「弾撃」はレナが幼少時に作り出した戦技であり、元々は身体が小さくて力も弱かったレナが強力な魔物に対抗するために生み出した打撃技である。




――どうしてダインが剣士の戦技である「兜割り」そしてレナしか扱えないはずの「弾撃」を繰り出せたかというと、それはダインの影魔法に関係がある。ダインの影魔法は本来は相手の身体を拘束したり、あるいはステータスを低下させる性質を持つ。しかし、闇の聖痕を宿した頃からダインの影魔法は強化されていた。




現在のダインは影魔法の精度が向上し、更に魔力も大幅に上昇していた。そのお陰でダインはこれまで敵を拘束するだけではなく、影を全身に纏わせる事で自由自在に操作する事が出来るようになった。本来は敵を操作して戦わせる魔法として開発した「シャドウ・コントロール」だが、ダインは自分自身の肉体を影で操作して戦えるようになった。
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