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外伝 ~ヨツバ王国編~
職業の「転職」
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「馬鹿なっ、有り得ん!!職業を変える方法など……」
「有り得ないというのが有り得ないのですよ父上……しかし、この世には職業を変化させる能力を持つ存在が居る事をお忘れですか?」
「まさか……転職士か!?」
「転職士……!?」
マリアの姿でカレハの言葉にデブリは動揺を露わにするが、初めて聞く単語に誰もが戸惑い、どうやらデブリとカレハしか「転職士」と呼ばれる存在を知るらしい。カレハはマリアと化した自分の肉体に見つめ、惚れ惚れするような表情を浮かべながら両手を頬に添える。
「ああ、素晴らしいですね健康な肉体というのは……しかも、それが世界最高の魔術師の肉体であれば尚更嬉しさが増します」
「カレハよ!!本当にお主はカレハなのか!?」
「ええ、その通りですよ父上……私は数年前、とある御方に自分の職業を変更し、そして呪術師へとなったのです」
「呪術師……!!」
ダインはカレハの言葉を聞いて歯を食いしばり、彼にとっては因縁深い職業の名前である。そんなダインを見てカレハはマリアの姿で笑みを浮かべ、ある真実を告げる。
「バルトロス王国の呪術師の存在は知っています。ダインさん、貴方の事も話を聞いていますよ」
「ぼ、僕の事を知っているのか!?」
「ええ、貴方の祖父とも会ったことがあります。出来損ないではあるが、器としては悪くなかったと言ってましたね」
「何だと……!!」
「嘘を吐くなカレハよ!!どうしてお主がバルトロス王国の呪術師と関係を持っている!?」
ダインの家系はバルトロス王国の貴族の中でも特異な存在のため、外部の人間と接触する事は滅多にない。しかも相手がヨツバ王国の王女であればどちらの国も警戒して接触を妨げるだろう。実際にデブリはカレハを追放した後も同行を観察していた。
しかし、彼女はデブリに視線を向けてまずは自分がどのような経緯で「精霊魔導士」から「呪術師」へとなり果てた理由を語る。事の発端はレナ達も知る人物が彼女と接触を果たしたときからだった。
「私は王族の身分を剥奪される前、バルトロス王国の王妃であるイレアビトと繋がっていたのですよ」
「あの王妃と!?」
「まさか……!?」
「ええ、彼女の伝手で私は内密に国内に「転職士」の人間を呼び寄せたのです。時間は掛かりましたが、そこはイレアビトが上手くやってくれました」
カレハは当時はバルトロス王国を影で支配していたイレアビトと繋がり、彼女の協力を得て世界に「数人」しか存在しないと言われている「転職士」と呼ばれる職業の人間を呼び出す。そして彼女は転職士によって職業を変化させたという。
「父上はご存じでしょう、追放した後に私が倒れたという話を……優しい父上は何度も医療魔導士や薬師を送り込んでくれましたね。まあ、結局は会う事はありませんでしたが」
「確かにお主が倒れたという話は聞いていたが……その、例の病でお主は倒れたのではないのか?」
「ええ、確かに当時の私は既に病に侵されていました。しかし、症状はそれほど悪くはなかったのですよ……ですが、転職士によって私の肉体はどうしても変化する必要があった。そのためには長い時間をベッドで横たわる生活を送らなければならなかったのです」
「それはどういう意味だカレハ!?」
「……生まれ持った職業を変更するというのは非常に難しいのですよ」
――転職士と呼ばれる存在は確かに他の人間の職業を変更させる力を持つ。しかし、その力は決して万能とは言えず、まず職業を変更する人間には過酷な条件を与えられる。その内容は大きく分けて二つ存在し、まず最初の条件は自由に職業を変更させるわけではない。
例えば魔術師の家系の人間の場合、基本的に魔術師系統の職業以外の選択肢はない。魔術師として生まれた人間は他の系統の魔術師のみ、逆に言えば戦闘職として生まれた人間は異なる系統の戦闘職しか変更する事が出来なかった。
ヨツバ王国の王族は魔術師の家系であり、その一族であるカレハも当然ながら魔術師だった。だからこそ彼女が覚えられるのは魔術師系統の職業に絞られ、迷った末に彼女が選んだのは「呪術師」だった。
しかし、二つ目の条件として職業を変更させた者は強制的にレベルがリセットされ、それまでに覚えた技能も戦技も魔法さえも全て失ってしまう。カレハは呪術師になった時点で精霊魔導士として覚えていた全ての能力を失ってしまう。しかも能力を失うだけではなく、レベルが急激に低下した事で肉体は衰え、身動きすらできない状態で1年以上の時を過ごす。
元々病に侵されていたカレハは転職した事で身体の免疫力さえも落ちてしまい、やっと自由に身体が動かせるようになるころには病の症状は取り返しのつかない状態に追い込まれていた。それでも彼女が「呪術師」という職業を選んだのは王位に返り咲くための最後の手段だった。
「有り得ないというのが有り得ないのですよ父上……しかし、この世には職業を変化させる能力を持つ存在が居る事をお忘れですか?」
「まさか……転職士か!?」
「転職士……!?」
マリアの姿でカレハの言葉にデブリは動揺を露わにするが、初めて聞く単語に誰もが戸惑い、どうやらデブリとカレハしか「転職士」と呼ばれる存在を知るらしい。カレハはマリアと化した自分の肉体に見つめ、惚れ惚れするような表情を浮かべながら両手を頬に添える。
「ああ、素晴らしいですね健康な肉体というのは……しかも、それが世界最高の魔術師の肉体であれば尚更嬉しさが増します」
「カレハよ!!本当にお主はカレハなのか!?」
「ええ、その通りですよ父上……私は数年前、とある御方に自分の職業を変更し、そして呪術師へとなったのです」
「呪術師……!!」
ダインはカレハの言葉を聞いて歯を食いしばり、彼にとっては因縁深い職業の名前である。そんなダインを見てカレハはマリアの姿で笑みを浮かべ、ある真実を告げる。
「バルトロス王国の呪術師の存在は知っています。ダインさん、貴方の事も話を聞いていますよ」
「ぼ、僕の事を知っているのか!?」
「ええ、貴方の祖父とも会ったことがあります。出来損ないではあるが、器としては悪くなかったと言ってましたね」
「何だと……!!」
「嘘を吐くなカレハよ!!どうしてお主がバルトロス王国の呪術師と関係を持っている!?」
ダインの家系はバルトロス王国の貴族の中でも特異な存在のため、外部の人間と接触する事は滅多にない。しかも相手がヨツバ王国の王女であればどちらの国も警戒して接触を妨げるだろう。実際にデブリはカレハを追放した後も同行を観察していた。
しかし、彼女はデブリに視線を向けてまずは自分がどのような経緯で「精霊魔導士」から「呪術師」へとなり果てた理由を語る。事の発端はレナ達も知る人物が彼女と接触を果たしたときからだった。
「私は王族の身分を剥奪される前、バルトロス王国の王妃であるイレアビトと繋がっていたのですよ」
「あの王妃と!?」
「まさか……!?」
「ええ、彼女の伝手で私は内密に国内に「転職士」の人間を呼び寄せたのです。時間は掛かりましたが、そこはイレアビトが上手くやってくれました」
カレハは当時はバルトロス王国を影で支配していたイレアビトと繋がり、彼女の協力を得て世界に「数人」しか存在しないと言われている「転職士」と呼ばれる職業の人間を呼び出す。そして彼女は転職士によって職業を変化させたという。
「父上はご存じでしょう、追放した後に私が倒れたという話を……優しい父上は何度も医療魔導士や薬師を送り込んでくれましたね。まあ、結局は会う事はありませんでしたが」
「確かにお主が倒れたという話は聞いていたが……その、例の病でお主は倒れたのではないのか?」
「ええ、確かに当時の私は既に病に侵されていました。しかし、症状はそれほど悪くはなかったのですよ……ですが、転職士によって私の肉体はどうしても変化する必要があった。そのためには長い時間をベッドで横たわる生活を送らなければならなかったのです」
「それはどういう意味だカレハ!?」
「……生まれ持った職業を変更するというのは非常に難しいのですよ」
――転職士と呼ばれる存在は確かに他の人間の職業を変更させる力を持つ。しかし、その力は決して万能とは言えず、まず職業を変更する人間には過酷な条件を与えられる。その内容は大きく分けて二つ存在し、まず最初の条件は自由に職業を変更させるわけではない。
例えば魔術師の家系の人間の場合、基本的に魔術師系統の職業以外の選択肢はない。魔術師として生まれた人間は他の系統の魔術師のみ、逆に言えば戦闘職として生まれた人間は異なる系統の戦闘職しか変更する事が出来なかった。
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しかし、二つ目の条件として職業を変更させた者は強制的にレベルがリセットされ、それまでに覚えた技能も戦技も魔法さえも全て失ってしまう。カレハは呪術師になった時点で精霊魔導士として覚えていた全ての能力を失ってしまう。しかも能力を失うだけではなく、レベルが急激に低下した事で肉体は衰え、身動きすらできない状態で1年以上の時を過ごす。
元々病に侵されていたカレハは転職した事で身体の免疫力さえも落ちてしまい、やっと自由に身体が動かせるようになるころには病の症状は取り返しのつかない状態に追い込まれていた。それでも彼女が「呪術師」という職業を選んだのは王位に返り咲くための最後の手段だった。
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