不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

文字の大きさ
837 / 2,090
S級冒険者編

レナへの指名依頼

しおりを挟む
「だけど、貴方が依頼を断り続けている事で実は不満の声も上がっているの。特に他のS級冒険者が貴方の昇格に反感を示しているわね」
「え?他のS級がどうして……」
「貴方がバルトロス王国の第一王子である事、そして火竜討伐の件で昇格を果たした際に冒険者以外の人間の力を借りていた事、さらに私の甥である事が問題だと言われているわ」
「バルトロス王国と氷雨と関係を持つ坊主がコネでS級に昇格したんじゃないかと疑う奴等がいるという事だ」
『疑われても仕方がない』
「愚かな……レナ様の功績を知らぬ癖に」


レナがこれまでに腐敗竜と地竜の討伐を果たし、更にはヨツバ王国でも戦果を挙げた。しかし、大半の功績は実を言うと世間では噂になっているが、あまりにも話が壮大すぎて実話なのかと疑われる事が多い。腐敗竜も地竜も、先の火竜に関してもレナは単独で倒したわけではないという事実もあるため、世界に散らばるS級冒険者達は本当にレナが自分達と同格として相応しい人物なのかを疑っているという。

S級冒険者である剣聖達がレナの事を認めてはいても、彼等が所属する氷雨の冒険者ギルドはレナの叔母であるマリアが勤めている以上、剣聖達がレナの実力を認めるように訴えても疑念が消える事はない。マリアが甥であるレナを贔屓して配下である剣聖達に言わせているだけではないかと疑われるのは間違いない。


「S級冒険者達はうちの子達も含めて我が強い人間ばかりで困るわ……でも、彼等の発言は決して無視は出来ない。S級冒険者はバルトロス王国だけではなく、各国家に信頼を築いているの」
『王国が他の国から恐れられているのは最もS級冒険者が多いからだとも言われている。実際、過去に何度か他国が責め寄せてきたとき、S級冒険者が防衛を行って多大な戦果を挙げたという話はよくある事だ』
「へえ……そうなんですか」
「そうなんですかじゃねえだろ、坊主自分の事なのに他人事のようにいってんじゃねえよ」
「あいてっ」


シュンから額にデコピンを受けてレナは事態の重さを理解する。しかし、別にレナとしてはS級の称号などに興味はなく、他の人間が不満を漏らしているのであればS級を返上しても構わないと思っていた。だが、そんなレナの考えを読み取ったようにマリアが注意する。


「レナ、言っておくけどS級の称号を返却した場合は冒険者活動はもう行えないわ」
「えっ!?どうして!?」
「過去にも貴方のようにS級の称号に興味を持たずに降格を申し出た人間が居たの。だけど、S級の実力を持つ人間は降格させたところですぐに功績を上げてしまうの。そうなった場合、他の冒険者達が不満が上がるわ。彼等も大きな功績を上げてS級を目指しているのに、S級冒険者の実力を持つ人間が目立つと彼等にとっては面白くない……だからS級冒険者に昇格した人間はS級の称号を返上する場合、1年の冒険者家業の活動停止を言い渡されるわ」
「1年も!?」
「やっと事態の大きさが飲み込めたか?坊主が冒険者を続けたかったらS級にしがみ付くしかないんだよ」


マリアの言葉を聞いてレナは動揺を隠せず、まさかS級冒険者がここまで面倒な制度だとは思わなかった。別に金銭面を考えれば1年程度なら働かずとも暮らす事は出来るが、冒険者を続けられないとなるとレナと冒険者集団を組んでいるダインたちに迷惑をかけてしまう。

こんな面倒な事態に陥るならばS級冒険者なんかになるべきではなかったかとレナは思うが、バルがどうしても黒虎の冒険者ギルドからS級冒険者を出したいとせがまれ、仕方なくレナはS級冒険者の昇格を承諾した。何だかんだで世話になったバルの言葉は断れかった自分が悪いと思い、レナはマリアの相談を行う。


「叔母様、どうしたら他のS級冒険者に認めてもらう事が出来る?」
「結論から言えば高難易度の依頼を引き受けて達成するか、あるいは不満を漏らすS級冒険者の元に赴いて力を示すか、このどちらかね」
「なるほど、どっちの方が手っ取り早い?」
「……高難易度の依頼を解決するのは難しいわね。この国には貴方も含めてS級冒険者が6人もいるし、それにゴウライとロウガとジャンヌが遠征して依頼を果たしているわ。分かりやすく言えば貴方が対応するような依頼がないということ」


バルトロス王国にはS級冒険者を多く抱えているため、どんな事態が起きようと彼らがすぐに対応できる。逆に言えば現在は国内ではレナが対応するような依頼はなく、先にマリアが告げたレナの指名依頼に関しては内容がレナとの接点を得ようとする依頼者の魂胆が見えているので受けさせることは出来ない。

現状ではS級冒険者でなければ達成できない依頼は存在せず、そうなるとレナに残された方法は世界各地に散らばるS級冒険者の元へ赴き、直に自分の実力を見せつけるしか手段はないという。





※シュンが何故か頼れるお兄さんキャラと化している……かませ犬と言われていた頃が懐かしい(´・ω・)
しおりを挟む
感想 5,092

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。