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S級冒険者編
武芸小会
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「んっ……あそこの人だかりは何だろう?」
「ああ、恐らく武芸小会でもやっているのでござろう」
「武芸……小会?」
「この国の名物の一つよ。気になるのなら少し見てみましょう」
聞き慣れない単語にレナは疑問を抱くと、マリアが人だかり近付く。レナ達もそれに続くと、人が集まっている場所の中心には「侍」と思われる男性と、獣人族の男性が相対していた。どちらも年齢は20代後半だと思われ、互いに武器を激しく打ち合う。
「こ、この野郎!!」
「ぬるいっ!!」
レナは決闘でも行っているのかと思ったが、二人が身に着けているのは木刀だと気付き、二人から少し離れた場所に壺を抱える男がいた。やがて侍の方が有利に立ち、獣人族の剣士の頭部に木刀を叩き込む。
「ふんっ!!」
「あいてぇっ!?」
「それまで!!勝者は和国の剣士ノブナガ!!これで3人抜きだ!!」
ノブナガと呼ばれた侍が獣人族の剣士に勝つと周囲の人間は半分は歓声を上げ、残りの半分は落胆したような表情を浮かべる。頭を打たれた獣人族の剣士は悔しそうに木刀を地面に投げ捨てると、そのまま足早に立ち去った。
「くっそぉっ!!またあいつが勝ちやがった……」
「いいぞ!!このまま10勝しちまえっ!!」
「さあさあ、次なる挑戦者はいないのか!?挑戦料は銅貨1枚!!10回勝ち続ければこの壺の金が全て貰えるぞ!!」
壺を抱えた男は中身を見せつけると、そこには大量の銅貨が入っており、それを見たレナは彼等が行っているのは決闘ではなく「賭け試合」の類だと知る。レナの考えを読み取ったようにカゲマルが説明を行う。
「奴等がやっているのは「武芸小会」と呼ばれるこの国で公認されている賭け試合だ。最も得をするのは賭けの元締めではなく、賭けに勝利した人間だけだがな」
「どういう意味?」
「見ての通り、賭け試合といっても戦い続けるのはあくまでも勝ち続けた人間だけでござる。武芸小会は誰かが10勝するまでは終わる事は出来ず、挑戦者が勝ったとしても賭け試合の主役が交代するだけで10勝するまでは誰もお金を貰う事ができないでござる」
「規模が小さい事から「大会」ではなくて「小会」と呼ばれているそうよ」
「へえっ……」
賭け試合といっても少々特殊な規則があるらしく、試合に10勝すればそれまでの挑戦者の挑戦料が独り占めできるが、誰かが10勝するまでの間は試合は続行されるという。余程の腕自慢でも連続で10人の挑戦者と戦い続ければ不覚を取る事も珍しくはない。
どうしてこのような賭け試合が和国の名物かというと、和国には武芸者が非常に多く、同時に観光客も非常に多い。この武芸小会が誕生したのは和国が建国された頃かららしく、今の時代でも行われる伝統文化という。
「戦っている人たちは木刀を使っているけど、規則なの?」
「武芸小会はあくまでも試合でござるからな、死人が出ないように考慮して木刀で戦う規則でござる」
「また、戦技の使用も禁じられている。あくまでも使用するのは剣の技術だけだ」
「じゃあ、俺の場合はめちゃくちゃ不利だな」
レナの戦闘は基本的に戦技を発動させる事を前提としているため、武芸小会に参加するとなると素の身体能力と剣の技術だけで戦わねばならない。武道の達人を相手に純粋な剣技のみで勝ち続けるのは難しいとレナは判断したが、マリアが面白そうな表情を浮かべてレナの肩に手を置く。
「あら、そう言わずに貴方もやってみたらどう?挑戦料は私が払うから、試しに戦ってみなさい」
「ええっ!?でも、3人目のS級冒険者と会うんじゃ……」
「大丈夫、時間は余裕があるから参加してみなさい。和国の剣士と戦うなんて滅多にない機会よ。姉さんも昔、ここで武芸小会を勝ち抜いた事もあるわ」
「母上が……」
自分の母親のアイラも武芸小会を出たと知ったレナは少しだけ興味を抱き、確かにこの和国の剣士である「侍」がどのような剣技を扱うのかも気にかかるため、参加を希望した。
「次の相手はこの子にしてもらえるかしら?」
「おおっと!?こ、これは凄い美人な森人族さんだ!!えっと、戦うのはその坊ちゃんでよろしいですか?」
「ええ、銅貨1枚だったわね」
マリアが声を掛けると男は森人族の中でも一際美しい彼女に驚き、すぐにデレデレとしながらもマリアから挑戦料を受け取る。レナは先ほどの獣人族の剣士が捨てた木刀を拾い上げ、これで戦うのかと眺めていると、既に挑戦者を3人倒しているノブナガという対戦相手の男は鼻を鳴らす。
「ふんっ……成人はしているようだが、随分と可愛らしい顔立ちだな。本当に男か?」
「むっ……失礼な」
「まあいい、さあ何処からでもかかってこい!!」
レナの姿を見てもノブナガは小馬鹿にした態度を貫き、その様子を見てカゲマルとハンゾウは呆れた表情を浮かべた。
「あの男……レナ殿を実力を全く見抜けていないでござるな」
「小物だな」
現在のレナはレベル80を超え、一流の武芸者ならば彼の姿を見ただけで本能が危険を感じ取り、警戒心を抱くだろう。しかし、ノブナガという男はレナの姿を見ても何も感じ取っていない様子を見てハンゾウとカゲマルはいち早くノブナガという男の実力の底を見抜く。
※あ、まさかの予約投稿ミス……二話連続投稿になりました(;´・ω・)
「ああ、恐らく武芸小会でもやっているのでござろう」
「武芸……小会?」
「この国の名物の一つよ。気になるのなら少し見てみましょう」
聞き慣れない単語にレナは疑問を抱くと、マリアが人だかり近付く。レナ達もそれに続くと、人が集まっている場所の中心には「侍」と思われる男性と、獣人族の男性が相対していた。どちらも年齢は20代後半だと思われ、互いに武器を激しく打ち合う。
「こ、この野郎!!」
「ぬるいっ!!」
レナは決闘でも行っているのかと思ったが、二人が身に着けているのは木刀だと気付き、二人から少し離れた場所に壺を抱える男がいた。やがて侍の方が有利に立ち、獣人族の剣士の頭部に木刀を叩き込む。
「ふんっ!!」
「あいてぇっ!?」
「それまで!!勝者は和国の剣士ノブナガ!!これで3人抜きだ!!」
ノブナガと呼ばれた侍が獣人族の剣士に勝つと周囲の人間は半分は歓声を上げ、残りの半分は落胆したような表情を浮かべる。頭を打たれた獣人族の剣士は悔しそうに木刀を地面に投げ捨てると、そのまま足早に立ち去った。
「くっそぉっ!!またあいつが勝ちやがった……」
「いいぞ!!このまま10勝しちまえっ!!」
「さあさあ、次なる挑戦者はいないのか!?挑戦料は銅貨1枚!!10回勝ち続ければこの壺の金が全て貰えるぞ!!」
壺を抱えた男は中身を見せつけると、そこには大量の銅貨が入っており、それを見たレナは彼等が行っているのは決闘ではなく「賭け試合」の類だと知る。レナの考えを読み取ったようにカゲマルが説明を行う。
「奴等がやっているのは「武芸小会」と呼ばれるこの国で公認されている賭け試合だ。最も得をするのは賭けの元締めではなく、賭けに勝利した人間だけだがな」
「どういう意味?」
「見ての通り、賭け試合といっても戦い続けるのはあくまでも勝ち続けた人間だけでござる。武芸小会は誰かが10勝するまでは終わる事は出来ず、挑戦者が勝ったとしても賭け試合の主役が交代するだけで10勝するまでは誰もお金を貰う事ができないでござる」
「規模が小さい事から「大会」ではなくて「小会」と呼ばれているそうよ」
「へえっ……」
賭け試合といっても少々特殊な規則があるらしく、試合に10勝すればそれまでの挑戦者の挑戦料が独り占めできるが、誰かが10勝するまでの間は試合は続行されるという。余程の腕自慢でも連続で10人の挑戦者と戦い続ければ不覚を取る事も珍しくはない。
どうしてこのような賭け試合が和国の名物かというと、和国には武芸者が非常に多く、同時に観光客も非常に多い。この武芸小会が誕生したのは和国が建国された頃かららしく、今の時代でも行われる伝統文化という。
「戦っている人たちは木刀を使っているけど、規則なの?」
「武芸小会はあくまでも試合でござるからな、死人が出ないように考慮して木刀で戦う規則でござる」
「また、戦技の使用も禁じられている。あくまでも使用するのは剣の技術だけだ」
「じゃあ、俺の場合はめちゃくちゃ不利だな」
レナの戦闘は基本的に戦技を発動させる事を前提としているため、武芸小会に参加するとなると素の身体能力と剣の技術だけで戦わねばならない。武道の達人を相手に純粋な剣技のみで勝ち続けるのは難しいとレナは判断したが、マリアが面白そうな表情を浮かべてレナの肩に手を置く。
「あら、そう言わずに貴方もやってみたらどう?挑戦料は私が払うから、試しに戦ってみなさい」
「ええっ!?でも、3人目のS級冒険者と会うんじゃ……」
「大丈夫、時間は余裕があるから参加してみなさい。和国の剣士と戦うなんて滅多にない機会よ。姉さんも昔、ここで武芸小会を勝ち抜いた事もあるわ」
「母上が……」
自分の母親のアイラも武芸小会を出たと知ったレナは少しだけ興味を抱き、確かにこの和国の剣士である「侍」がどのような剣技を扱うのかも気にかかるため、参加を希望した。
「次の相手はこの子にしてもらえるかしら?」
「おおっと!?こ、これは凄い美人な森人族さんだ!!えっと、戦うのはその坊ちゃんでよろしいですか?」
「ええ、銅貨1枚だったわね」
マリアが声を掛けると男は森人族の中でも一際美しい彼女に驚き、すぐにデレデレとしながらもマリアから挑戦料を受け取る。レナは先ほどの獣人族の剣士が捨てた木刀を拾い上げ、これで戦うのかと眺めていると、既に挑戦者を3人倒しているノブナガという対戦相手の男は鼻を鳴らす。
「ふんっ……成人はしているようだが、随分と可愛らしい顔立ちだな。本当に男か?」
「むっ……失礼な」
「まあいい、さあ何処からでもかかってこい!!」
レナの姿を見てもノブナガは小馬鹿にした態度を貫き、その様子を見てカゲマルとハンゾウは呆れた表情を浮かべた。
「あの男……レナ殿を実力を全く見抜けていないでござるな」
「小物だな」
現在のレナはレベル80を超え、一流の武芸者ならば彼の姿を見ただけで本能が危険を感じ取り、警戒心を抱くだろう。しかし、ノブナガという男はレナの姿を見ても何も感じ取っていない様子を見てハンゾウとカゲマルはいち早くノブナガという男の実力の底を見抜く。
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