不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

文字の大きさ
889 / 2,090
S級冒険者編

閃光

しおりを挟む
(光球と付与強化を組み合わせた新しい合成魔術……喰らえっ!!)


実戦で使用するのは初めてだが、レナは掌を九尾に構えて強烈な光を放つ球体を生み出す。名前は技術スキル「閃光」であり、名前の通りに強烈な閃光を浴びた九尾は怯む。


「閃光!!」
「ギャインッ!?」
「ぬあっ!?め、目がぁっ!?」


合成魔術を発動させた際に近くに立っていたゴウライを巻き込んでしまうが、聖属性の魔法で生み出した光球が放つ光その物は人体には優しく、この閃光に奪われた視界も数秒程度で回復してしまう。それは人間以外の生物でも同じだが、その数秒の間にレナは攻撃を繰り出す。

閃光を発動させた際にレナは左手を九尾に向けたため、右腕のみの力で退魔刀で攻撃を仕掛ける。この際に加速剣撃を発動させ、九尾の頭部に目掛けて振り下ろした。


「兜割りっ!!」
「ッ……!?」


ゴウライ程ではないが、凄まじい勢いで振り下ろされた大剣の刃は九尾の頭部に衝突する寸前、九尾は自分の九つの尻尾を伸ばしてレナの一撃を受け止める。外見に似合わずに尻尾の一つ一つが非常に硬く、レナの一撃でさえも受け止めると、逆に弾き返す。


「ガアッ!!」
「うわっ!?」


まさか攻撃を尻尾に弾かれるとは思わなかったレナは体勢を崩し、その隙に九尾は視界を奪われた状態で距離を取る。しばらくの間は頭を振って視界が回復するのを待つと、九尾は怒りの形相を抱いて九つの尻尾を動かし、今度は槍のように突き刺してきた。


「キュコォンッ!!」
「わっ!?」
「きゃあっ!?」
「ぬおおっ!?」
「くっ……聖鎧!!」


九尾は九つの尻尾を伸ばす事が出来るらしく、金属の槍のように硬質化させた尻尾を利用してレナ達を狙う。その尻尾の威力を大岩を容易く貫通し、回避しようとしても軌道を変化させて執拗に迫る。その攻撃に対してレミアは全身に聖鎧を発動させて防御の視線を取り、マリアも結界魔法を発動させて身を防ぐ。


「面倒ね……プロト・アイギス!!」
「キャインッ!?」


マリアが大規模の結界魔法陣を発動させた結果、腐敗竜の突進せも受け止める魔法陣によって九尾の尻尾の槍は弾かれてしまい、痛みを覚えたのか九尾は悲鳴を上げてその場を離れた。その様子を見てレナは厄介な尻尾を先にどうにかしなければならないと判断し、退魔刀と大太刀を両手に握り締める。

ゴウライの方もやっと視界が回復したのかデュランダルを掲げてレナの元に移動し、他の二人も自然とレナの元に集まった。マリアは離れた位置で様子を伺い、援護の準備を行う。


「むうっ……おい、レナ!!あんな魔法を出すのなら事前に注意しておけ!!眩しくて何も見えなくなったぞ!!もしも吾輩がやられていたらどうする気だ!!」
「えっ……ゴウライさんは心眼を使えないんですか?」
「ぬおっ!?そういえばその手があったか!!はっはっはっ、久しく使っていなかった忘れてたぞ!!」
「ええっ……」
「ですが、もう先ほどの手は通じないでしょう。九尾も警戒していますし、それにあの厄介な九つの尻尾をどうにかしなければ……」
「何か手はありますか?」


九尾と向かい合ったレナ達は話し合い、まずは厄介な尻尾をどうにかしなければ九尾を倒す事は出来ないと判断した。しかし、九尾の尻尾は全力ではなかったとはいえ、レナの一撃を受けても傷一つ負わないどころか弾き返す硬度を誇る。しかし、ここでレナは攻撃を行った際に違和感を覚えた。


(九尾の尻尾に弾かれた時、何か光ったような……まさか、こいつ魔鎧術が使えるのか?)


退魔刀の刃が九尾の尻尾に触れる寸前、レナの視界には尻尾の周囲に光の膜のような物が発生し、それに弾き返されたように見えた。考えにくい事だが九尾はレナやホネミンが扱う「魔鎧術」のように体内の魔力を実体化させ、身を防ぐ術を持っているのかもしれない。

過去にレナは魔鎧術と酷似した「呪鎧」と呼ばれる魔力で形成した鎧を身に纏った生物と戦った事がある。その生物の正体は「腐敗竜」であり、レナが攻撃魔法を仕掛けた時に腐敗竜は全身に黒色の炎のような魔力を纏って攻撃を防いだ。九尾の場合も腐敗竜の「呪鎧」とは少々異なるが、魔力を実体化させて攻撃や防御に利用している可能性はあった。


「叔母様、こいつの攻撃に変な感じがしなかった?」
「……そうね、攻撃を行う時に魔力の気配が感じられたわ。私にそんな事を聞くという事は貴方も感じたの?」
「うん、俺も感じたよ」
「何?どういう意味だ?何か感じたのか?」
「私には分かりませんでしたが……」
「……いえ、確かに私も違和感を覚えました」


九尾の攻撃にはレナだけではなく、マリアとレミアも違和感を感じ取り、ジャンヌとゴウライは何も感じ取れなかった。レナ達が感じた違和感をジャンヌとゴウライが感じ取れなかった理由があるとすれば「魔力感知」の技能を習得しているかであり、恐らくこの二人は魔力感知を覚えておらず、他の三人は魔力感知を習得していたからだと思われた。

魔力感知の技能は生粋の戦闘職の人間は本来は覚える技能ではなく、レナやマリアのような魔法職、レミアの場合のような特殊な騎士職の人間は比較的に覚えやすい能力である。九尾が魔力を使用したとき、レナ達だけが気付くことが出来たのは魔力感知の技能を習得していたからだと思われる。
しおりを挟む
感想 5,092

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。