不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

文字の大きさ
971 / 2,090
真・闘技祭編

カノン改めシェル

しおりを挟む
「なるほど……カノンという人間は死んだことにさせたいのね」
「え?そ、それはどういう意味ですか?」
「……大将軍と言えど、カノンが犯した罪は大きい。本来であれば死罪であってもおかしくはないが、そもそも彼女は正式な手順で大将軍になった人間ではない。元々は傭兵だった」
「ええ、その話は聞いていますが……」


カノンが大将軍に昇格したのはイレアビトの推挙があったからであり、当時はバルトロス王国の実権を握っていた彼女の決めた人事に誰も逆らう事は出来ない。カノンは大将軍となっても部下は作らず、あくまでもイレアビトの命令を受けた時にしか動かなかった。

逆に言えばカノンのこれまでの行為は全てイレアビトの命令に従っただけに過ぎず、彼女自身は別に命令を降す相手が誰であろうと仕事であれば遂行するのが彼女の役目だった。なので命令を降す大将がイレアビトからナオに代わろうと彼女に不満はない。

しかし、現実問題としてカノンを復帰させるのは難しく、世間では彼女は反乱に参加した大将軍という位置づけである。なのでナオはカノンという将軍を処刑した事にして改めて「シェル」という名前のワルキューレ騎士団に所属する女性隊員という立場を与えた。


「カノンという人間は先日、私の判断で処刑を降した。だからもうこの世にはいない……つまり、ここにいるのはカノンではない、シェルという名前のワルキューレ騎士団の見習い隊員だ」
「見習い隊員……」
「大将軍から一気に降格したわね」
「ううっ……正体が気づかれないようにするためとはいえ、私の髪の毛を切ってしかもこんな髪色に染めるなんて……」


現在のカノンは容姿で正体を気づかれないように髪を短髪に切りまとめられ、更に髪の毛の方も染めていた。それに制服に着替えた事で一見するだけではカノンと気づく事はないだろう。レナ達が気づけたのは彼女と死闘を繰り広げた仲なのでカノンの顔が印象強く残っていたが、他の人間はカノンの正体を見抜く事はないだろう。

元々、カノンは大将軍という立場でありながらあまり世間では目立ってはいない。彼女の役割は裏から敵を暗殺する存在としてイレアビトが雇い入れただけに過ぎず、カノンの存在を知る人間は意外と少ない。イレアビトが信用する配下(子供)たちは年齢が幼く、未熟な部分があるため、彼等に任せられない仕事をカノンに任せていた。


「それではここにいるカノン……いえ、シェルが5人目の代表選手という事でよろしいのですか?」
「いや、各国の代表選手は4名までしか出せない事が決定している。だからシェルの場合は予選から参戦してもらい、優勝を目指して貰いたい」
「ちょっと、待ちなさいよ!?私はこんな格好にまでされたのに予選から頑張れというの!?」
「カノン!!いえ、今はシェルでしたね……女王様に向かってなんて口の利き方を!!」
「うるさいわね!!私は約束したのよ、この闘技祭で活躍すれば罪は帳消し、そして莫大な報酬を用意するとね!!私は国に仕える気なんてないわよ!1」


カノン改めシェル曰く、彼女がナオに協力するのはあくまでも闘技祭の開催期間に過ぎず、それ以降は国を離れるつもりらしい。元々、イレアビトとの関係も彼女は服従を誓っていたわけではなく、あくまでもビジネスパートナーのように接していたらしい。

シェルは誰にも従わず、仕事は選ばない事を信条としているらしく、どんな人間だろうとシェルが納得する金額の報酬を約束してくれるならば彼女は従う。それが傭兵のシェルの信条だという。


「私が今回の仕事を引き受けた条件は自分のためよ、でも仕事である以上は全力を尽くす。それでいいでしょ?」
「全く、何の反省の色も見せませんね……本当にこの方を釈放してもよろしいのですか?」
「ううむ……確かに不安はあるが、だが残念な事に彼女程の腕前の実力者は国内にはいないだろう。悪いが、闘技祭の間までは頼んだ」
「ふん、素直にそう言えば良いのよ!!」
「という事はこれで役者は全員揃ったという事ね」


シズネは周囲を見渡し、剣星であるジャンヌ、大将軍のレミア、元大将軍のシェル、そしてレナを見て確かに現時点でバルトロス王国の出身の武芸者の中でも腕の立つ人間が揃った事を認める。だが、相手をするのは各国から集まった猛者だけではなく、世界中から集まった武芸者も警戒しなければならない。


「やはり、戦力不足は否めないわね……出来ればもう少し人員を集めたい所だわ」
「え?でも代表枠は4人まででしょ?」
「代表は4人でも予選に参加して勝ち残る人材はいくらいてもいいでしょう?その点では一番有利なのはヨツバ王国ね、確実にあの国が最大の難関だわ」
「六聖将に王国四騎士、それに剣聖のシュン、ハヤテ、ゴウライ……確かにヨツバ王国が闘技祭の最大の強敵となるでしょう」


他の人間もナオの言葉に頷き、確かにバルトロス王国と比べてヨツバ王国出身の武芸者は数多く、闘技祭で戦う事になれば最も苦戦が予想された。
しおりを挟む
感想 5,092

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。