不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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真・闘技祭編

ダインの誤算

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――翌日、修行を経て一段とたくましく成長したダインは冒険都市へと帰還すると、まずは氷雨のギルドに乗り込んでマリアに文句を告げに来た。マリアの方もダインが訪れたら自分の部屋に通すように話を付けていたお陰でダインはすんなりと彼女の部屋まで通れたが、そこで予想外の人物と出会う。


「おい、こらぁっ!!よくも僕をこんな目に遭わせたな、この……って、バル!?どうしたんだその怪我、それにその恰好?」
「だ、ダイン!?どうしてここに?」
「ほら、動かないで頂戴。全く……勘を取り戻すためとはいえ、無茶をし過ぎよ」


部屋の中にダインが乗り込むと、そこにはマリアに背中を向けて彼女に薬を塗ってもらうバルの姿が存在した。バルはダインが戻ってきた事に驚くが、一方でマリアの方は特にダインを見ても大きな反応は示さず、バルの身体に特製の薬草から作り出した塗り薬で治療を行う。

どうしてバルが氷雨のギルドに存在するのか、そしてマリアに直々に治療を受けているのかと疑問は尽きないが、とりあえずはダインはバルが身に付けている変な仮面に付いて問い質す。


「ぷぷっ……な、何だよ。その変な仮面、何処から持ってきたんだ?」
「仮面?あっ、しまった……マリア、あんたどうして私が仮面を付けたままの事を黙ってたんだい!?」
「別に隠していたつもりはないけど……仮面を付けたまま来たのは貴女でしょう?」
「くそっ……道理でギルドの奴等が変な目で見てくると思ったよ!!ていうか、ダイン……よくあたしだと分かったね?まあ、あんたとは付き合いが長いから気づかれてもおかしくはないか……」
「えっ……それ、マジで言ってるの?」


バルが仮面を身に付けた自分をダインが見破ったのは付き合いの長い彼だから見抜いたと勝手に勘違いしたが、付き合いの問題ではなく、誰であろうとバルの事を知っている人間なら一目で彼女だと見抜くだろう。その事実をダインが指摘するべきか悩んだが、マリアが口元を抑えて笑い堪えているのに気づく。


「ふふっ……そ、そうね。付き合いの長い人間には流石に気づかれると思うわ。でも、別に特に問題はないでしょう」
「やっぱりそうかい、もうちょっと目立つ仮面を身に付ければよかったのかね……というか、ダイン!?あんた帰ってきてたのかい!!」
「うわ、その恰好で起き上がるなよ!?見えてる、見えてるから!!」
「きゃっ……恥ずかしい」
「意外と可愛らしい悲鳴だな、おい!?」


ダインに指摘されてバルは珍しく恥ずかしそうに身体を伏せると、改めてマリアはダインに視線を向ける。彼女は「鑑定眼」という固有スキルを生まれながらに持っているため、現在のダインのステータスを調べると一か月前と比べても成長している事が判明した。

以前に別れた時と比べてもダインの肉体は筋肉が付き、更に魔力に関しても以前の倍近くは溢れていた。この一か月の間に激しい修行に取り組み、幾度も視線を乗り越えた事で大きく成長したらしく、その姿を見てバルもマリアも素直に感心した。


「へえ、ダイン……あんた、随分とたくましくなったじゃないか、見直したよ」
「そうね、確かに立派に成長したようね」
「な、何だよ……へへへ、そんなに褒めても嬉しくないぞ」


言葉とは裏腹に師匠である二人に褒められた事にダインは照れくさそうな表情を浮かべるが、ここでマリアの方は腕を組み、そして壁に張り付けてある日程表を確認する。日付を確認すると彼女は訝し気な表情を浮かべ、ダインに話しかける。


「でも、貴方……随分と帰ってくるのが遅かったわね。本来の予定よりも10日は遅れてるわよ」
「えっ……ちょ、ちょっと待てよ?どういう意味だそれ?」
「どういう意味も何も、私はギンタロウに10日前に貴方をここに送り届けるように頼んでいたはずよ。それなのにこんなに遅くに帰ってくるなんて……このままだと闘技祭の挑戦権の申し込み受付日が過ぎてしまうわよ?」
「えっ……えぇええええっ!?」
「うわ、どうしたんだい急に!?」


マリアの発言にダインは驚愕の表情を浮かべ、まさかのマリアの言葉に動揺を隠せない。一方でマリアの方も闘技場の日程表を確認し、10日後には挑戦権を得るための試合の受付が締め切られてしまう事を知らせる。



――実を言えばマリアが修行を任せていたギンタロウは期日までにダインを送り込む事をすっかり忘れ、予定の期日よりも大幅に遅れてダインを送り出していた事が発覚する。ギンタロウとしては中途半端に修行で送り込むのではなく、自分が納得するまでダインの面倒を見たつもりだが、そのせいでダインは闘技場の挑戦権を得るための試合の申し込み受付の期日ぎりぎりに帰還していた事が発覚した。



「ちょ、ちょっと待てよ!?そこは氷雨のギルドマスターの権限でどうにかならないの?」
「無理よ……今回の闘技祭の主催者はあくまでもバルトロス王国側よ。いくら私でもどうしようも出来ないし、そもそも今の私はヨツバ王国のハヅキ家の当主よ。流石に手を貸すのはまずいわ」
「確か、試合を申し込めるのは1日に1回だけだったね。しかも今の時期なら試合に出場するために大勢の人間が参加してるだろうからね……今から行っても間に合うのかい?」
「ちくしょおおおおっ!!やっぱりこういう展開かぁああっ!!」


ダインは涙目で氷雨のギルドを後にすると、この一か月の努力を無駄にしないため、闘技場へと駆け込んで試合を申し込むために全力で走った――
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