不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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真・闘技祭 予選編

レミアVSハルナ

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――レナが闘技場へ向けて走り去る姿を確認すると、ハルナはレミアと向かい合い、互いに構えを取った。レミアは大将軍に恥じぬように幼少の頃から徒手の稽古も行い、更に彼女は身体に纏った魔力を変化させてあらゆる武器を作り出す事が出来る。相手が武道の達人であろうと後れを取る事はないと彼女は自負しているが、彼女の予想に反してハルナの方は武芸者とは思えない一風変わった構えを取った。

ハルナは体勢を低くすると、両手を地面に押し付け、まるで「闘牛」を想像させる構えを取った。陸上選手のクラウチングスタートにも似た構えだが、どう見ても正面から突進してくるようにしか見えない構え方にレミアは違和感を抱く。


「……何をしているんですか?」
「見てわかるだろ、これが俺の構えだよ」
「そうですか……ならばこちらも遠慮はしません」


正面から突進してくる事を警戒したレミアは左腕を構えると、魔力を集中させて「大盾」のように変化させ、地面に構える。これで仮にもハルナが突っ込んできた場合、大盾で攻撃を防いで反対の腕に作り出した「聖槍」で止めを刺せるとレミアは考えた。

しかし、レミアが防御を構えたのを見てもハルナは表情を変えず、むしろ身体中から電流を迸らせ、長い髪の毛を逆立たせる。その様子を見てレミアはまるで大型の猛獣と価しているような感覚に陥り、緊張した面持ちで向き合う。


「行くぞ……うおらぁっ!!」
「っ!?」


レミアの視界に存在したはずのハルナが一瞬で消え去った瞬間、直後にレミアの大盾に強烈な衝撃が走り、彼女は踏ん張り切れずに10メートル以上も吹き飛ばされた。いったい何が起きたのか理解できず、そのままレミアは背中から地面に叩きつけられる。


「かはぁっ!?」


聖鎧を纏っていたお陰で地面への衝突は和らげられたが、それでもあまりの衝撃に彼女は悲鳴を漏らし、左腕に激痛を覚えた。魔鎧術で構成したはずの大盾は呆気なく形が崩れ、左腕は完全に折れていた。それを確認したレミアはどうにか身体を起き上げようとするが、その前に上空に跳躍していたハルナが拳を振り下ろす。


「これで終いだ!!」
「くぅっ!?」


上空から迫りくる拳を確認してレミアは咄嗟に身体を回転させると、地面にハルナの拳が叩き込まれ、轟音が鳴り響く。巨人族顔負けの破壊力を誇る彼女の拳にレミアは驚き、それでも彼女は体勢を整えた。

一方でハルナの方は地面にめり込んだ拳を引き抜くと自分の攻撃を回避したレミアに笑みを浮かべ、頭に生えている角を摩る。先ほどの攻撃の際に彼女は大盾を破壊してレミアの身体に自慢の角を刺すつもりだったのだが、予想に反して彼女の作り出した大盾が頑丈過ぎて破壊に至らず、吹き飛ばす事が限界だった。


「へえ、あんた中々強いな!!さっきの奴の方が強そうに思えたけど、中々やるじゃん」
「ば、馬鹿にしないでください……私はバルトロス王国の大将軍、負けるわけにはいかないのです」


レナの方が強そうに思えたというハルナの言葉にレミアは反感を抱き、彼女は聖剣を手にした事で現在のレナよりも自分の方が強いと考えていた。しかし、目の前の少女の力を目の当たりにした彼女は危機感を抱き、これは手加減などする余裕はない事を悟る。


(まさか、剣聖や将軍でもない相手に聖剣を抜く事になるなんて……いえ、駄目です。私はバルトロス王国の大将軍、敗北は許されません……!!)


レミアは背中に差していた聖剣エクスカリバーを引き抜くと、ハルナに向けて構える。それを見たハルナは聖剣の放つ輝きを見て口元の笑みが消え、野生の本能が危険を察知した。


「……その剣、なんか凄く嫌な感じがするな。普通の剣じゃないよな?」
「聖剣、です……事前に謝っておきますが、私はこの聖剣を完全には扱えません。つまり、手加減は出来ないという事です」
「はあっ……じゃあ、今まで手加減でもしてたのか?」


ハルナはレミアの言葉に目つきを鋭くさせ、明確な敵意を抱く。先ほどまでは楽しそうな表情を浮かべ、まるで遊び相手を見つけた子供のように振舞っていたハルナだが、自分が手加減されていたと聞かされて落ち着くはずがなかった。

彼女は聖剣を構えたレミアに対し、腰に装着していた武器を取り出す。彼女が取り出したのは岩石を無理やりに削り取って作り出したような「闘拳」を取り出すと、両腕に装着を行う。ここでハルナが武器を身に付けた事にレミアは焦りの表情を抱き、二人は互いに向かい合う。


「おい、今度はこっちも手加減はしないぞ……死にたくなければ本気で来いよ」
「言われずとも……!!」


闘拳を構えるハルナにレミアは左腕の痛みを我慢しながらも聖剣を構え、攻撃の好機を互いに探る。下手に動けば間違いなく敗れる事は両者理解しており、しばらくの間は膠着状態が続く。

聖属性の聖痕の所有者であるレミアは肉体の再生力も高く、時間が経過すればするほどに怪我も治っていく力を持つ。実際に先ほど折られた左腕の方も数十秒足らずで元の状態へと戻り、もう痛みはない。即ち、全力で攻撃を行える準備を整えるとレミアは雄たけびを上げて先に動く。
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