不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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真・闘技祭 本選編

ゴウライの過去

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「まさか、ゴウライは剣鬼なのか……!?」
「ええっ!?け、剣鬼って……じゃあ、あの人もレナと同じ……!?」
「それは違います」


レナの呟きにダインは驚き、信じられない表情を浮かべるが、そんな二人に対して背後から誰かが話しかけてきた。レナとダインは振り返ると、そこにはいつの間にか立っていたのかツバサの姿が存在した。


「ツバサ、さん?」
「えっ!?ど、どうしてここに?」
「観客席よりもこちらの方が近くで見れると思い、係員の人に頼んでここへ来ました。どうやら試合に敗北した選手でも当日に限り、この部屋の使用を許可されるそうです」


ツバサはレナとダインの元に歩み寄り、試合場のゴウライの様子を伺う。彼女はゴウライに視線を向け、先ほどのレナの予想が間違っている事を話す。


「彼女とは知らぬ仲ではありません。だからこそはっきりと言えます、ゴウライは剣鬼ではありませんよ」
「……どうして言い切れるんですか?」
「まず、第一に彼女のあの力は剣聖に陥る前から使えました」
「えっ!?」


思いもよらぬツバサの言葉にレナもダインも驚くが、彼女はゴウライと出会ったばかりの事を思い出し、事の経緯を話す――





――ゴウライは元々は西聖将が管理する地で生まれたダークエルフではあるが、彼女は実の姉と共に故郷を離れた。理由としては外の世界に行きたいという理由の元、ゴウライと彼女の姉は西聖将の領地から旅立つ。

西聖将の地を離れたばかりの姉妹はヨツバ王国の王都へ赴き、少しの間だが王都にて武芸を磨く。この時にツバサはゴウライの姉と面識があり、実はゴウライも一時期ではあるがツバサの指導を受けていた。そして二人は数年程王都で過ごした後、バルトロス王国の地へ赴く。

後にゴウライの姉はバルトロス王国のバルトロス12代世に迎え入れられ、妻となる。レナの義姉のナオは二人の間から生まれた子供である。つまりナオからすればゴウライは叔母に当たり、この真実を知った時は非常に驚いた。姉と別れたゴウライは冒険者として行動し、この時にマリアと出会って彼女のギルドに入った。

ちなみにゴウライが身に付けている甲冑は西聖将の土地に存在するカンナギ神殿の守護者と酷似しているのも理由があり、彼女は子供の頃から神殿に赴いて守護者を相手に戦っていたからである。何度も殺されそうになりながらもゴウライは守護者へと挑み、腕を磨く。この際に彼女は守護者の姿を見て格好いいと思い、後々に自分も守護者のような甲冑を作り出して装備するようになったという。



「ゴウライとは短い間でしたが、私が面倒を見ていました。昔から問題児でよく訓練がてらに当時の六聖将に対戦を申し込み、その後始末を彼女の姉と私で対処していました……あれほど世話のかかる子供は今までいませんでしたね」
「ゴウライさん、そんな過去があったのか……」
「ですが、幼少期の時からゴウライは不思議な子でした。彼女は確かに普通のダークエルフではない力を持っていました。あの不思議な力は子供の時からゴウライは身に付けていたのです。決して剣鬼ではありません」
「……という事は、やっぱりあの力は聖痕か」


レナは自分の風の聖痕を抑えると、ツバサはレナの言葉を聞いて一瞬だけ目を見開き、すぐに納得したように頷く。彼女が幼少期の頃からゴウライの不思議な力の正体は薄々勘付いてはいたが、レナの言葉を聞いて確信に至る。


「なるほど、そういう事でしたか。恐らく、彼女にも貴方達のように聖痕の力が宿っていたのですね」
「えっ!?貴方達って……ぼ、僕が聖痕を持っている事を知ってるんですか?」
「ええ、一目で分かりましたよ。聖痕の所有者の魔力は独特ですからね……最も余程勘の鋭い者でもなければ見抜けないでしょうけど」


ダインはツバサに自分が聖痕を所有している事を知っている事に驚くが、ツバサによれば常人では聖痕の所有者を見抜く事は出来ない事を付け足す。一方でレナはゴウライの過去の一端を知り、前にもゴウライから少しだけ過去の話を聞いた事はあったが、まさかツバサに師事していた時代があったとは思わなかった。


「ゴウライがツバサさんの弟子だったなんて驚いたな」
「いえ、あの子は正直に言って私から剣を学ぼうとしませんでした。どれだけ指導をしようと、結局は自分の好きなように戦います。しかも質の悪い事に彼女は実際に自分の力のみで強くなり続けました。正直、小さいころから私の手に余る存在でしたね」
「ええっ!?じゃあ、ゴウライさんは……自分一人の力で強くなったんですか?」
「そういう事ですね、私の教えは一切聞かず、強者との闘いの中で彼女は成長し、そして今に至ります。天才などという言葉では生ぬるい、鬼才の持ち主でした」
「鬼才、か……」


ツバサの説明にレナとダインは不思議と納得すると、話し込んでいる間に次の試合が行われようとしていた。
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