不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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真・闘技祭 本選編

ソル・バルトロス

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『では試合を開始致しますよ!!試合場の皆さん、準備は整いましたか?』
「おっと、悪いが話は後だ……この時代の猛者の実力、確かめさせてもらうぞ」
『……あくまでも自分を初代国王だと言い張るつもりか、呆れた男だ』
「王様だか、何だか知らないけど関係ねえよ。全員、ぶちのめしてやる」
「威勢がいいですね……気が強い人は嫌いじゃありませんよ」


ヨシテルはハルナに微笑みかけると、その笑顔を見てハルナは背筋が震え、逃げるように移動を行う。ハヤテも距離を取ると、ソルとヨシテルも移動を始める。この時に観客席のナオはソルに視線を向け、疑問を抱く。


「父上……」
「えっ?」
「いや、あのソルという男……父上と雰囲気が似ている気がして」
「父上……それは先々代の国王の事か?」


先代の国王の兄であり、先々代国王のバルトロス12世とソルが似ている事にナオは気づき、一方でデブリの方もソルという男を見て何処か見覚えがある相手だと考えた。だが、冷静に考えて有り得ない話であり、彼の知る人物は数百年前に姿を消してしまった。

観客席からは試合場で何が話し合われていたのかは聞こえなかったが、ソルを見てデブリはどうにも見覚えがある顔だと考え、数百年前に彼がヨツバ王国の国王の座を受け継いだ時に同時期にバルトロス王国を建国した男の事を思い出す。


(まさか、あの男は……いや、あり得ん!!あれからどれほどの時が過ぎた事か……)


デブリの脳裏にかつての盟友の姿が思い浮かぶが、頭を振って有り得ないと否定した。バルトロス王国の建国者にして初代国王である「ソル・バルトロス」が生きているはずがない。しかし、そのソルと瓜二つの容姿をした男の登場にデブリは戸惑う。

一方で試合場のソルの方はこれから戦う3人を目にして楽し気な表情を浮かべ、彼は背中に差していた大盾とランスを構える。試合場の選手全員が準備を終えた事を確認すると、実況席のラビットが試合開始の鐘の音を鳴らす。


『試合開始ぃっ!!』
「うおおおおっ!!」


真っ先に動いたのは全身に電流を帯びたハルナであり、彼女は真っ先にヨシテルの方へと向かう。それを目にしたヨシテルは腰に差した刀に手を伸ばす。


「二の太刀……」
「おっと、それはもう勘弁だ!!」


正面から近付いてきたハルナにヨシテルは予選の時のように刃を繰り出そうとしたが、寸前でハルナは立ち止まる。前回の戦闘でヨシテルの間合いを把握したハルナは迂闊には近づかず、様子を伺う。そんなハルナに対して背後からハヤテは接近すると、鞘に納めていた魔剣「青嵐」を放つ。


『居合一式・斬!!』
「うわっ!?」


ハルナの背中に目掛けてハヤテは鞘から抜いた刀を振り払うと、シュンが生み出す風の斬撃とは比べ物にならない程の大きさと威力を誇る斬撃を放つ。本能でハルナは危険を察するとその場で空中に跳躍し、回避を行う。その結果、ハヤテの放った斬撃はヨシテルの元へ向かう。

ヨシテルは迫りくる風の斬撃に対して涼し気な表情を浮かべて鞘から剣を抜き放ち、完全には引き抜かずに斬撃を刃で受けると掻き消す。その様子を見てハヤテは舌打ちし、生半可な攻撃ではヨシテルには通じない事を把握する。


「危ないだろ、ガキんちょっ!!」
『ガキ……私はお前よりも100才は年上だ!!』
「嘘っ!?」


外見でハヤテの事を自分よりも年下だと判断していたハルナは彼女の言葉に驚くが、そんなハルナに対してハヤテは再び鞘に刀を収めて攻撃に移ろうとした時、ここでランスを抱えたソルが突っ込んできた。


「刺突っ!!」
『ちっ!!』


ランスで突いてきたソルに対してハヤテは舌打ちしながらも鞘に刀を収めた状態で回避する。予想以上に鋭い突きを繰り出してきた事にハヤテは驚くが、そんなソルに対して今度はハルナが攻撃を仕掛けてきた。


「邪魔をするな、おっさんっ!!」
「むうっ!?」


ハルナは拳を繰り出すと、電流を帯びた状態でソルに対して殴りつける。巨人族であろうとハルナの打撃ならば場外まで吹き飛んでもおかしくはない一撃だが、その攻撃を正面から受け止めたソルは数歩ほど後退するが、彼女の打撃に耐え切る。


「……中々の拳だな」
「うわっ……マジかよ、今のを耐えるなんてやるな、おっさん」
「はははっ!!この程度なら軽い物よ!!」


自分の攻撃を受けても耐え凌いだソルにハルナは素直に感心するが、直後にソルの告げた言葉を聞いて眉をしかめ、拳を鳴らす。どうやら防御力には自信があるようだが、彼女は今度は全身から電流を迸らせ、最高速度の連撃を叩き込む事にした。


「なら、今度は本気で行くぞ!!」
「来いっ!!遠慮するなっ!!」


加速したハルナはソルの元へ向かうと、目にも止まらなぬ速度で両手を繰り出して無数の拳を叩き込む。大盾を構えたソルはハルナの攻撃を受け止め、一発一発が本来ならば一撃必殺の威力を誇る彼女の攻撃をソルは完全に受け切る。
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