不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

文字の大きさ
1,206 / 2,091
ダイン 監獄都市編

人を舐めるのもたいがいにしろよ、このくそ爺がっ!!

しおりを挟む
――時は少し前に遡り、教室を出る前にダインはミイネと打ち合わせを行う。逃走の際中、もしも不慮の事態に陥った場合を想定し、事前にダインにだけは彼女はとある合図を出す事を告げる。


『ダインさん、僕が口笛を吹いた時はここに住んでいる囚人なら必ず反応します。その隙を逃さず、影魔法を使用してください』
『えっ……どういう意味だ?』
『言葉通りの意味ですよ。僕が口笛を吹けばここに暮らす囚人なら必ず怯えて隙を作ります。だから、その隙を逃さずにダインさんは影魔法で対処して下さい。合図は僕の口笛です、僕が口笛を吹くだけでどんな相手でも隙を生み出しますから、それを逃さずに行動して下さい』
『何だよそれ……まあ、分かったよ。要するに口笛を吹けば僕が影魔法を発動させる時間を稼げるんだな?』
『そういう事です。頼りにしてますよ、相棒』


ミイネとのやり取りを思い出したダインは彼女が口笛を吹いた瞬間、グシャスを筆頭にマサルを取り囲む暗殺者たちも動揺したように身体を硬直させたのを見逃さなかった。理由は不明だが、彼等はミイネの口笛を聞いた瞬間に何かを恐れるように反応した。

どうして彼等が口笛を耳にしただけで隙を生み出したのかはダインには分からないが、反撃の好機であると判断したダインは箒に偽装した杖を床に構えると、影魔法を発動させる。狙いはマサルを取り囲む囚人達であり、全員の足元に目掛けて影魔法を放つ。


「シャドウ・ウィップ!!」
『おわぁっ!?』
「うおっ!?な、何だっ!?」
「今です、早く離れてっ!!」


マサルを拘束していた囚人も足元を振り払われて体勢を崩し、彼は自由になるとミイネの言葉を聞いて囚人達の包囲網を突破する。その様子を見てグシャスは呆気にとられるが、すぐにミイネを睨みつけた。


「くっ……小娘が、その程度の事で儂を出し抜いたと思ったか!!お前達、出て来い!!」
「ぬおっ!?若いの、後ろからも来たぞ!!」


グシャスの配下は他にも隠れていたらしく、ダイン達の後方の廊下からも姿を現す。それを確認したミイネは眉をしかめ、一方でダインは自分達を取り囲む囚人の正体に気付いた。


「おい、こいつら全員「暗殺者」の職業を持ってるんだろ!?」
「そういう事ですね……ここまで完璧に気配を絶って隠れていた所、相当に高レベルなようです」
「ふん、今頃気付いても遅いわ……こ奴等は儂の配下の中でも腕利きの暗殺者、お前達に勝ち目はないぞ」


最初にここへ訪れた時にダイン達は敵の姿は見えなかったが、実際には暗殺者の技能を持つ囚人達が巧妙に隠れていただけに過ぎず、実を言えばダイン達が裏口の近くに到着した時点から見張られていた。

ガルルが血の気が多く、腕っぷしが強い囚人達を従える「武闘派集団」に対してグシャスの場合は暗殺者の職業の囚人を従え、彼等を利用してグシャスは邪魔者を排除してきた。つまりは「暗殺者集団」の派閥であり、彼等に殺された囚人の数は計り知れない。


「ミイネ、この儂を他の二人と一緒にするな。儂を出し抜けると思わん方が良いぞ」
「そんな台詞、よく吐けますね。さっきは僕の嘘に簡単に嵌まった癖に……」
「……小娘が、どうやら自分の立場をまだ分かっていないようだな」


グシャスはミイネの言葉を聞いて険しい表情を浮かべると、その態度に流石に挑発し過ぎたかとミイネは焦るが、ここでダインは彼女の前に出る。そのダインの行動にミイネは驚き、グシャスは眉をしかめた。


「ちょっと待てよ、さっきから黙って聞いてれば勝手な事ばかり言って……僕もいい加減に我慢の限界だ」
「黙れ、小僧が……お主の魔法の秘密、この儂が見抜けていないと思うか?」
「何だって?」
「お前が使っている奇妙な魔法の名前は影魔法、つまりお前の正体は闇魔導士……じゃろう?儂も見たのは初めてだが、存在ぐらいは知っておるぞ」


影魔法と闇魔導士の事を知っていると語るグシャスの言葉にミイネ達は驚き、バルトロス王国でも闇魔導士は滅多にいない存在のため、闇魔導士も影魔法の事を知る人間は少ない。しかし、グシャスは闇魔導士の職業や扱う能力を知っているという。


「儂はこう見えても昔は一流の暗殺者であった。真の暗殺者は人を殺す技術だけではなく、他の人間に化ける技術も身に付けなければならん。時には暗殺対象の親しい人間に変装し、標的が油断している隙に敵を討つ……この時に注意しなければならんのは変装する対象の趣味嗜好までも把握して演じなければならん」
「い、いきなり何の話だよ……」
「まあ、最後まで聞け……儂はこれまでに大勢の人間に変装し、その人間が身に付けている範囲の知識を得てきた。時には国に仕える人間にも演じた事がある。他人と話す際にぼろが出ないように変装する前に変装の対象を調べ上げ、その人間が身に付けていてもおかしくはない知識を頭に叩き込んだ。そのお陰で儂はこれまでに演じた人間の知識を頭に叩き込んでおる……その中には国に仕える魔導士や学者の知識もある」


グシャスは闇魔導士の存在を知っているのは彼が過去に変装した人間の知識の中には、魔導士に関わる知識を持つ人間も存在し、そのお陰で闇魔導士の詳細も知る機会があったという。
しおりを挟む
感想 5,095

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。