不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

文字の大きさ
1,312 / 2,090
弱肉強食の島編

レナVS白牛将

しおりを挟む
「こいつだ!!」
「ちぃっ!!」


果物をもぎ取ったレナを見て白牛将は即座に戦斧を振りかざし、樹木に向けて叩きつける。その結果、樹木は戦斧の刃で切り裂かれ、倒れ込む。この際にレナは体勢を崩して落ちそうになったが、どうにか無事に着地を行う。

退魔刀を手放したレナに対して白牛将は戦斧を振りかざし、上段から振り下ろそうとした。それに対してレナは果物を握り潰し、その果汁を白牛将に放つ。


「ふんっ!!」
「だああっ!!」


戦斧を躱しながらレナは果物を放つと、白牛将の顔面に衝突した。白牛将は果汁によって視界と嗅覚を封じられ、悲鳴を上げる。その間にレナは退魔刀の場所まで戻る。


「がぁあああっ!?」
「目潰し!?」
「いや……嗅覚も封じた!!」


果物の果汁を浴びた白牛将は悲鳴を上げ、ほんの数秒ではあるが視界と嗅覚は封じられる。その隙にレナは攻撃を仕掛けようとするが、ここで白牛将は戦斧をむちゃくちゃに振り回す。


「うがぁあああっ!!」
「は、白牛将!?危ない!!」
「俺達も巻き込まれちまう!!」
「やばい、逃げろっ!!」


白牛将の配下は慌てて彼から離れると、レナの方も勝機を失ったように無茶苦茶に武器を振り回す白牛将を見て退魔刀を構え直し、次の攻撃で確実に仕留めるために意識を集中させる。今の状態ではあの技に頼るしかない。

剣鬼としての力を覚醒させ、レナは瞳の色を紅色に変色させると、異様な気配を感じ取った白牛将は硬直する。目は見えないが、まるで超大型の肉食獣と遭遇したような感覚に陥った彼は恐怖のあまりに身体が固まってしまう。


「鬼刃っ!!」
「ぐはぁあああっ!?」


レナは剣鬼のみが扱える「鬼刃」を放つと、白牛将の戦斧を真っ二つに切断し、そのまま白牛将の胸元に鮮血が舞う。戦斧が盾代わりになった事で肉体の切断だけは免れたが、それでも致命傷を与えた事に変わりはない。


「ば、馬鹿な……俺が、人間如きに……!?」
「人間を舐めるなよ……言っておくが、俺より強い奴は外の世界にはいっぱい居るんだぞ」
「……くそがっ……!!」


胸元から血を流しながら白牛将は腕で抑え込み、膝を着く。その様子を見下ろしたレナは退魔刀にこびり付いた白牛将の血液を振り払い、自分の手元を確認した。久々に鬼刃を発動させたが、上手く出来た。


(剣鬼の力を扱える事が出来て助かった……もしも発動できなかったら危なかったかもしれない)


魔法を封じられた状態でも剣鬼の能力は使用できたことが幸いし、思っていたよりも勝負は短い時間で終わらせる事が出来た。すぐに他の者が集まり、致命傷を負った白牛将を見下ろす。


「これまでだな、白牛将」
「その怪我、すぐに治療しないとまずいぞ」
「ぐうっ……!!」
「さあ、どうする!!お前達の大将はこんな状態だぞ、まだ戦うのか!?」
『…………』


白牛将が敗れた事で他のミノタウロス達も戦意を失ったのか、その場で武器を下ろす。その様子を見てレナは安堵し、白牛将を倒せたことで無駄な抗争は避けられた事を安心仕掛けた時、唐突に森の奥から咆哮が響く。



――ガァアアアアッ!!



鼓膜が破れかねない程の声量の鳴き声が響き渡り、その鳴き声を耳にした瞬間に全員が震え出す。本能が危険を知らせ、この鳴き声の主に絶対に遭遇してはならないと直感で判断する。

あのアンジュとサーシャでさえも恐怖のあまりに身体が震え、他の者達もあまりの恐怖に様子がおかしく、特に族長に至っては胸元を抑えてへたり込む。牛人族の長も他のミノタウロス達も急いでこの場を離れようとした。


「いかん、奴が来た!!すぐに島に戻らなければ……!!」
「奴?」
「説明する暇はない、お前達も早く乗るんだ!!」


筏船に牛人族の長は乗り込むように指示を出し、幸いにも事前にダークエルフの女子供は島に送り込んでいた。ここに残っているのは戦える者だけであり、牛人族の長はすぐに筏船に全員を乗せる。

緊急事態なので白牛将や彼等の配下の分の筏船も用意させ、急いで島へと向かう。いったい鳴き声の主が何なのか気になったレナは岸辺から十分に離れた距離で問い質す。


「この鳴き声の正体は皆は知っているの?」
「……前にも話したであろう、我々が争う原因となったのは島を荒す恐るべき怪物が現れたからだと」
「え?でもそれって、かなり昔の事なんじゃ……」
「確かに大昔の話じゃ……だが、その怪物は今尚も生きておる」
「現れたぞ……奴だ!!」


会話の際中にアンジュの震えた声が響き、レナは岸辺の方に振り返ると、そこには思いもよらない生物が存在した。
しおりを挟む
感想 5,092

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。