不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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真・最終章 七魔将編

降り注ぐ邪気

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「何だ、あれは……」
「雲、なのか?」
「いや、煙みたいだが……」
「違う、あれは……いかん!!全員、近くの建物の中に逃げ込め!!」


市街地で戦闘を行っていた者達は冒険都市の上空に広がる闇属性の魔力を確認し、勘の鋭い物は危険を察して近くの建物の中に逃げ込むように促す。戦闘中だった人間達も上空に広がる禍々しい魔力を肌で感じ取り、敵味方関係なく避難を開始した。

だが、闇属性の魔力で構成された黒雲は冒険都市の全域を覆い込むまで広がり、やがて雲から雨の様な物が降り注ぐ。しかし、その正体は雨水ではなく、闇属性の魔力が凝縮された塊であった。


「うわぁっ!?」
「お、おい!!大丈夫か……な、何だ!?」
「お前、その肌はどうしたんだ!?」


建物に逃げ遅れた冒険者の一人が黒雲から降り注いだ「漆黒の雨」が皮膚に触れた瞬間、触れた箇所が黒色化した。その直後に冒険者は苦しみ出し、その場で悶え苦しむ。


「がぁあああっ……!?」
「お、おい!!やばいぞ、早く連れ出すんだ……うわっ!?」
「ま、まずい!!何だか知らないが、降り始めたぞ!?」
「今度は何だってんだよ!?」


慌てて漆黒の雨に打たれた冒険者を救い出そうと他の人間が動き出すが、雨はどんどんと降り始めて助けに行こうとした人間は建物の中に踏み止まる。その間にも逃げ遅れた者達は雨に打たれて悲鳴を上げる。


「うぎゃああっ……!?」
「ち、力が……抜けて……!?」
「ひいいっ!?た、助けて……」
「うわっ!?さ、触るんじゃねえっ!?」


雨に打たれた直に肌に受けた者達は皮膚が黒色化し、更に黒色化した人間が他の者に助けを求めようと身体に触れた途端、黒色化した箇所に触れた者は雨に打たれなくても触れられた箇所が黒色化していく。

黒色化した人間達は力が急速的に失われ、更に全身に黒色化が広がった人間はまるでミイラのように身体が痩せ細っていく。その光景は正に地獄絵図であり、建物に避難していた者達は顔色を青ざめて恐怖のあまりに身体が震えて動けない。


「た、助けてぇっ……死にたくない、死にたくねえよぉっ……」
「がはぁっ……」
「嫌だ、誰か……誰かぁっ……」
『…………』


雨に打たれながら必死に助けを求める者達に対して建物に避難した人間達は何もすることができず、下手に助けようとすれば彼等も犠牲になる。しかも雨は冒険都市全域に降り注ぎ、被害者は続々と増えていく――





――同時刻、漆黒の雨が降りしきる中でオウガはアルドラを押し倒す形になっていた。オウガは魔鎧術を発動させて全身に魔力を纏い、その魔力の鎧によって漆黒の雨を防ぐ事はできた。しかし、アルドラにはそのような真似はできず、彼女は自分を守るために雨に打たれるオウガを見て動揺を隠せない。


「オ、オウガ……貴方、どうして私を……!?」
「黙っていろ……」
「ふんっ……やはりそういう事だったか、鬼人将ともあろう人間が何という姿だ」
「…………」


漆黒の雨が降り注ぐ中、ブラクはアルドラを守るように雨に打たれるオウガを見て余裕の笑みを浮かべていた。そして彼の傍には牙人将のガオウが立っており、この二人の周囲には何故か雨が降り注がず、ブラクとガオウはオウガとアルドラの様子を伺う。

オウガは歯を食いしばりながらアルドラを守るために全身に魔力を覆い込み、地属性の魔力で作り上げた鎧は外部に重力を放出し続ける。だからこそ漆黒の雨であろうと重力の力で弾き返す事はできるが、アルドラを庇うためには彼は動く事はできない。


「情けない姿だな、かつては魔人将に次いで恐れられた男がまさか紅血将の色香に惑わされていたとは……いや、ここはお前を褒めるべきかアルドラ?何時の間にオウガに血を飲ませていた?」
「えっ……?」
「抜かせ……この俺が女なんぞに操られるか!!」
「何?では貴方は自分の意思でアルドラを守っていると?」


アルドラを庇う行為を見てブラクとガオウは既にオウガが彼女の能力で操り人形と化していると判断したが、オウガがアルドラを庇うのは彼自身の意思であり、決して自分はアルドラに屈服したわけではない事を伝える。この発言にはブラクもガオウも意外だったが、それならばどうしてオウガがアルドラを庇うのかと疑問を抱く。


「オウガ……貴様、まさか本当にアルドラに懸想していたのか?」
「笑わせるな……この女は俺の目的のために必要だ。だからこそここで死なせるわけにはいかない、それだけの話だ!!」
「オウガ……」
「そうか……だが、これはが都合がいい。今ならばここで邪魔者二人を始末できるという事か」


ブラクは笑みを浮かべて魔剣「羅刹」改め聖剣「クリムゾン」を引き抜く。聖剣でありながら禍々しい闇属性の魔力を生み出し、遥か昔に「炎龍」を打ち倒すために利用された聖剣をブラクは手にしていた。
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